AKB48Gと乃木坂46&欅坂46の力関係はどう変化した? 『FNSうたの夏まつり』の反響を読む

 7月18日に放送された『2016 FNSうたの夏まつり』にて一夜限りのグループ「48&46ドリームチーム」が、欅坂46の楽曲「サイレントマジョリティー」を披露し、大きな話題を呼んだ。

 「48&46ドリームチーム」は、48グループと坂道シリーズの混合選抜チーム。AKB48から渡辺麻友、柏木由紀、SKE48は松井珠理奈、NMB48は山本彩、HKT48は指原莉乃、乃木坂46からは生駒里奈、欅坂46は菅井友香など全16名が、同番組だけのために選出された。ドリームチームがパフォーマンスする楽曲は、候補楽曲であるAKB48「365日の紙飛行機」、乃木坂46「君の名は希望」、欅坂46「サイレントマジョリティー」、AKB48「恋するフォーチュンクッキー」の4曲から視聴者による投票で選出され、「サイレントマジョリティー」が106万268票で1位を獲得。乃木坂46の生駒里奈をセンターにして同曲がパフォーマンスされた。放送後、iTunesランキングで同曲が64位から6位まで急上昇するなどの盛り上がりを見せている。

 ドリームチームによるパフォーマンスは、なぜこれほどまでに反響を呼んだのか。リアルサウンドで乃木坂46系の記事を多数執筆し、『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』の著者であるライターの香月孝史氏は、楽曲「サイレントマジョリティー」の持つ力と、現場の緊張感についてこう推察する。

「『サイレントマジョリティー』は2016年アイドルシーンの最重要曲と言っていい、社会の風を読みつつも演者による虚構の世界観づくりが肝になる楽曲。2位につけた『恋するフォーチュンクッキー』(100万3352票)は、お祭り的な場において、みんなで盛り上がる空間を作り上げることのできる楽曲です。後者はこれまで何度もこのような特別な場で披露されてきましたが、今回の『サイレントマジョリティー』のパフォーマンスによって、『恋するフォーチュンクッキー』とはまた対照的な性質の、新たなマスターピースと呼べる楽曲が、坂道シリーズから生まれたといえるのではないでしょうか。また、48グループや乃木坂46のメンバーもこれまで、『サイレントマジョリティーをライブでやってみたい』と口々に羨望のまなざしを向けていましたが、改めて彼女たちが再解釈するにあたり、楽曲自体が持つパワーが鮮明になった。もちろん各グループで活躍するトップメンバーが集まっていたこともあり、この曲をより良くパフォーマンスすることへの自信もあったでしょうし、単なる特番の企画ではない、緊張感と盛り上がりがあの場には生まれていました」

 また、48グループと坂道シリーズが混ざりあった今回のパフォーマンスは、坂道シリーズの勢いを肯定するものであったかのように思えるが、香月氏は「グループとしては坂道シリーズが優勢、しかし個々では48グループに強いタレント性を感じる」と分析した。

「欅坂46版のオリジナルはメンバーが何度も練習して仕上げたものなので、それに比べれば統一感としては劣るのかもしれませんが、48グループの各センター級が見せる個々の表情や動きには、キャリアを重ねたパフォーマーの強さを感じました。2015年以降、乃木坂46の人気がますます上昇し、2016年に入って欅坂46がブレイクを果たすなど、現在は坂道シリーズ側にグループとしての強い勢いを感じる人が多いでしょう。この日のパフォーマンスでも、その象徴としてのセンター生駒里奈さんが背負い、体現するものはとても大きかった。一方、AKB48は世代交代を含めたターニングポイントに来ていると言われることも多い。しかし、だからといって10年間組織を拡大しながら継続してきた48グループの勢いが減速するわけではありません。この日の渡辺麻友さんや山本彩さん、柏木由紀さん、指原莉乃さんといった48グループ側のメンバーが個々で発揮したタレント性を見ると、『そう簡単に48グループは食われるものじゃない』というすごみが伝わってきました」

 ついにその勢いを48グループと拮抗するまでになった、乃木坂46と欅坂46による坂道シリーズ。個々の力ではいまだ48グループ優勢とされているが、今回のパフォーマンスを機に、両グループが互いをより意識しあうようになったことは間違いないだろう。2016年後半では、このパワーバランスがどのように変動するのか、楽しみに見守りたい。

(取材=中村拓海/文=渡辺彰浩)

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