『フリースタイルダンジョン』はなぜ人気? “スポ根的エンターテインメント”でシーン底上げとなるか
このように同氏は『フリースタイルダンジョン』に対して厳しい意見も述べるが、今後、強烈なキャラクターの挑戦者が登場することにより、番組がさらに盛り上がる可能性を指摘する。
「『高校生RAP選手権』や『フリースタイルダンジョン』を見てラップを始めた中高生もいると思うので、今後、日本ではMCバトルを第一義に考えるラッパーが増加することが予想されます。ただ、フリースタイルは“即興芸”という性格が強いこともあり、その場をワッと盛り上げることができても、観客は基本的にそれをその場で消費してしまう。だから、MCバトルの大会でいくら勝ったりしても、シーンを開拓するような“作品”を出せないラッパーは、いずれ忘れ去られる可能性もあります。しかし、オーガナイザーのZeebraや、モンスターの般若、漢、サ上らはまさにそうした作品を残していますし、彼らはそれぞれキャラクターが濃い。般若を除くモンスターはしばしば挑戦者に敗れてきたものの、そういった意味ではモンスターを本当に凌駕する若い挑戦者はまだ一人も現れていないのではないでしょうか。これまでの放送では、挑戦者はみなモンスター全員を倒して賞金50万円をゲットすると意気込んでいるわけですが、例えば、最初に戦いたいモンスターとだけバトルして、勝ったら賞金10万円をもらってさっさと帰り、遊ぶ金に使うーーという挑戦者がいてもいいと思うんですよ。誤解を恐れずに言えば、フリースタイルが得意なラッパーは全般的に華に欠ける傾向がありますが、ラップ・ミュージックは「カブいてナンボ」の世界のはずですからね」
『フリースタイルダンジョン』から見えてくるのは、ヒップホップの面白さの中のごく一部にすぎないのかもしれない。番組を入り口として、多くの人々がヒップホップに興味を持ち、シーン全体を深く知りたいと思うところまで人気は拡大していくだろうか。
(文=編集部)