特別企画1:柴那典の『#globe20th -SPECIAL COVER BEST-』徹底レビュー
globeカバーベストに見る色褪せないポップ性——HYDE、浜崎あゆみ、木村カエラらが歌う名曲から読み解く
90年代を過ごしてきた人なら誰だって、彼らのメロディが身体に染み込んでいるはずだ。フレーズを耳にした瞬間に何かしらの情景を思い出す。そんな人も沢山いるに違いない。
音楽シーンに最も勢いがあった、ミリオンヒットが毎週のように生まれていたあの時代。シーンの中心にいたのは間違いなく小室哲哉だった。そして、すでにプロデューサーとして数々のヒットを手掛け時代の寵児となっていた彼が、自らメンバーの一員となり95年8月にデビューしたユニットがglobeだった。
12月16日、デビュー20週年を迎えたglobeによる初のカバーアルバム『# globe20th -SPECIAL COVER BEST-』がリリースされた。
HYDE、木村カエラ、浜崎あゆみ、梅田彩佳(NMB48)、GReeeeN、坂本美雨など、15組の多彩なメンツがglobeの楽曲をカバーしたこのアルバム。
これらの曲を聴くと、改めてglobeの楽曲が持つ普遍性、色褪せないポップ性が感じられる。そして、様々なボーカリストが楽曲を歌うことによって、小室哲哉のメロディが持つ強力な記名性を改めて痛感するような一枚になっている。
果たしてそれはどういうものなのだろうか? カバーアルバムに収録された楽曲をいくつかピックアップし、アーティストのコメントと共に分析していきたい。
「DEPARTURES」HYDE
代表曲「DEPARTURES」はHYDEがカバー。ピアノ主体の落ち着いたバンドサウンドに乗せ、彼らしい色気のある歌を聴かせてくれている。HYDEは「色褪せない名曲です。心を込めて歌わせて頂きました」とコメントしているが、彼の言うとおり、この曲は今もJ-POP屈指の冬の名曲だと言えるだろう。サビで「♪どこまでも〜」とかけ上げるメロディが、寒い季節の情景描写とあいまって独特の切なさを感じさせる。サウンドプロデュースは小室哲哉。曲の終わりにクリスマスベルが鳴っているのも小憎い演出だ。
「FACES PLACES」木村カエラ
このラインナップの中でも最もロック色の強いカバーが、木村カエラの「FACES PLACES」。彼女は2013年にカバーアルバム『ROCK』をリリースし洋楽ロックの名曲の数々を豪華メンツとのコラボでカバーしているのだが、今回の「FACES PLACES」は小室哲哉がサウンドプロデュース。ストレートなバンドサウンドで歌い上げている。激しいギターソロも聴き所だ。
木村カエラは今回のカバーにあたって「歌手になることが夢だった小学生の私は、毎日家の狭い洗面所の中にこもって、globeのアルバムを爆音でかけ、KEIKOさんの歌と共に歌を歌ってきました。ギザギザした刺激的な音、綺麗なピアノの音、低音も高音も歌いこなすKEIKOさんの綺麗で力強く、時には心が叫んでいるような切ない歌声は、私にとてつもない影響を受けさせてくれました」とコメントしている。
また、小室哲哉は最近のインタビューで、初期のKEIKOにパンク・バンド、ノー・ダウトのヴォーカリストだったグウェン・ステファニーのイメージを重ね合わせていたことを明かしている。一方、木村カエラはグウェン・ステファニーから強く影響を受けたことをこれまで各所で語っている。globeとそういう接点で繋がる木村カエラがロックなカバーを見せたのも、とても納得だ。
「Sa Yo Na Ra」梅田彩佳(NMB48)
一方、原曲ではギターリフを大々的にフィーチャーしロック色の強い「Sa Yo Na Ra」は、小室哲哉自身の手により切ないピアノバラードにリアレンジされている。6/8拍子のスローなバンドサウンドから、より歌をフィーチャーする曲調に生まれ変わった形だ。そしてこの曲でヴォーカルを担ったのが、NMB48の梅田彩佳。もともとAKB48の派生ユニット「DIVA」の一員として小室哲哉が手掛けた「DISCOVERY」を歌っており、その時に見せた歌唱力からの抜擢と言えるだろう。本人はレコーディングを振り返って「こんなに緊張したのは初めてです」とコメント。彼女自身にとっても、それだけ大きな意気込みを見せていたことが伺える。