見事なまでに〈100%筋少〉ーー市川哲史が筋肉少女帯『おまけのいちにち(闘いの日々)』を聴く

 筋少の新作『おまけのいちにち(闘いの日々)』の様子がおかしい。

 通常盤・初回限定盤共通のランダム封入特典・《筋少トレーディングカード(怪人カード仕立て)》はhideとおもいきり被ってるが、まあいい。全10種集める奇特な奴などさすがにいないだろうし。問題は初回限定盤だ。

 なんと3CD+DVDのディスク4枚組で税抜5040円。アルバム《本編CD》は当然として、全10曲収録《ライヴDVD》は優秀な特典だ。アルバム全13曲のインストゥメンタル・ヴァージョン収録って、要は《カラオケCD》か……誰が唄っても大槻ケンヂより上手い気がする。百歩譲って、大昔から実は定評のある卓越したバンドアンサンブル力を、変な唄に邪魔されず堪能できる素敵なオマケと思おう。

 で、あと1枚が《他メンバー歌唱ヴァージョンCD》。橘高文彦(g)・内田雄一郎(b)・本城聡章(g)の各ヴォーカル・ヴァージョン計3曲から1曲だけを収録したCD1枚が、ランダム封入されちゃってるらしいのだ。ぎゃはは。本城が唄う〈おっさんの思春期暴走ソング〉「LIVE HOUSE」は♪ギターケースが今夜は二人の部屋さ、などと大槻でさえ唄うのをためらったこっ恥ずかしい詞だが、自分で書いたのだから自業自得か。可哀相なのは橘高だろう。タイトルフレーズを唄いたいがためだけの大槻の嫌な愛の告白、「おわかりいただけただろうか」を唄わされている。いつもいつも自作の超恰好いい楽曲を変な詞と唄で蹂躙されているのに、遂にそれを唄わざるをえない日が来ようとは。

 イントロも内容もほとんど“木綿のハンカチーフ・その後”的な「別の星の物語り」は、内田の唄の方が大槻より似合っててめでたしめでたし。なんだそりゃ。にしても現存する筋少ファンの人々の愛情は海よりも深いから、まんまと複数購入してしまう散財者率は明らかに高そうな気がする。

 がしかし、これがEXILEやAKBやミュウモ絡みだったらその極悪非道ぶりを断罪して暴れるところだが、筋少だと実はちーっとも腹が立たない。ばははは。そう。この小悪党感こそが、実は大槻ケンヂ最大の武器なのを想い出した。

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