Awesome City Clubが考える“良い音楽”の定義とは? 「追求するなら、もっと真ん中に行かなければ」

ACCが考える“良い音楽”の定義

 Awesome City Club(以下、ACC)が、9月16日に2ndアルバム『Awesome City Tracks 2』をリリースする。同作はagagiをメインボーカルに据えながら“うた”に焦点を当てており、バンドの音楽的進化を感じ取れる一枚に仕上がっている。今回リアルサウンドでは、今回のリリースに伴い、インタビュー&対談企画を実施。第一弾では、メンバーのatagi&PORINと『CAMPFIRE』を運営する株式会社ハイパーインターネッツの代表取締役・石田光平氏による対談を行ったが、今回はatagiとPORINのフロントメンバー2人にインタビュー。アルバムの楽曲に凝らした工夫や、1st発売以降に起こった変化のほか、atagiが同作の制作にあたって「言葉を強くする」ことを意識した真意にも迫った。

「バンド自体が音楽的なものをさらに求めだした」(atagi)

――まずはアルバムタイトルについて伺います。『Awesome City Tracks 2』という題名にしたのは、前回と地続きにしているという意味合いが強いのでしょうか。

atagi:そうですね。インディーズ時代に自分たちだけで完結していた楽曲と、1stアルバムリリース以降で色々なことを経験したうえで作る曲を1枚に収めたものにしたいな、と思っていました。

――インディーズ時代の曲は「WAHAHA」と「愛ゆえに深度深い」ですね。その2曲と他を比べた時に、歌詞の力というか、言葉の強さが変わったように感じました。今までは発語感を重視していたように思えるのですが、ここに来て何が変化をもたらしたのでしょう?

atagi:やっていくうちに、自分たちの中で「言葉が先に来る」ようなものが作れるようになったのが大きいのかもしれません。それは、メジャーのステージに上がって、プロフェッショナルな方と多く接することにより、バンド自体が音楽的なものをさらに求めだしたことも要因だと思います。

PORIN:「音楽的にならないと」という考えは、私の中にもあります。ほんと未熟だなと思わされてばかりなので。

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PORIN。

――PORINさんの中で「音楽的になる」とは、具体的にはどんなイメージですか?

PORIN:ステージ上でのパフォーマンスや普段からの考え方、気構えなど、説得力のある立ち振る舞いができるアーティストになる…ということですかね。

atagi:彼女も含め、バンドメンバー全員がどこかで「もっと素を出していきたい」と思っていたのが作品に現れたところもあります。

――それは以前の対談でも語っていましたね。肩肘を張らなくなったというか。

atagi:メンバー同士で気を遣っていた部分もありますからね。曲を作る時にも「このニュアンスは誰々っぽいからこういう風な曲にしよう」と思ったりすることもあったんですが、最近はあまりそういう伺い方をしなくなり、自然と書けるようになりました。

――もう一つ全体的に感じたこととして、リズムの揺らぎが有機的になり、それぞれの楽器の音が立っている印象があります。アレンジではどのような変化を加えたのでしょうか。

atagi:生っぽいアプローチが増えて、ドラムやベースのアタックがどんどん聴こえるようになったから、揺らぎが目立つようになったのだと思います。

――今回も1stアルバムから引き続き、mabanuaさんがプロデュースを手掛けていますが、よりコミュニケーションを取った結果、どういう関係性へと変わりましたか?

PORIN:もう、全然気を使わなくなって(笑)。

atagi:そうそう、僕もそれを言おうとした。いい意味で、ですよ(笑)。今回のアルバムでは、前作よりも本質的な話を多くしたと思います。「この曲の質感を出すには、楽器でこういった感じのアプローチが必要だよね」みたいなロジカルな話が、以前に比べて多くなったと思います。

PORIN:すごいアドバイスが的確でとても頼りになりますね。そして優しいです(笑)

atagi:mabanuaさん、女子に弱いよね(笑)。

PORIN:そこがまた可愛いんです。

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モリシー。

――アルバムは、1曲目「GOLD」からスタートしますが、この曲は5人バンドとは思えないスケール感があって、USインディーと親和性があるように思えました。作曲はatagiさんとモリシーさんの共作ですね。

atagi:この曲に関しては、まず最初に、モリシーが2014年の『FUJI ROCK FESTIVAL』に行ったことが始まりで。

PORIN:私も一緒に行ったんですけど、そこでアーケイド・ファイアを観たんだよね。

――まさにその感じが出ています(笑)。

atagi:その後モリシーから、メロも乗っていない状態で、ストリングスとバッキングだけが入ったトラックを「こういうの作ってみたんだよね」と渡されて。それが恰好よかったので、僕がメロディーや他の構成を相談しながら足していったら出来上がりました。なんとなくではありますが、曲を作りながら歌詞もできていて。壮大でイメージが広がるようなもの、という感覚を共有していたので、それをベースにメロディーへと落とし込みました。

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atagi。

――ボーカルはメインをatagiさんがしっかり張りつつ、サビ前ではPORINさんが良い具合で楽曲を盛り上げています。

atagi:この曲を通して、改めて「女の子のボーカルがいて良かった!」と思いました。いろいろ試行錯誤しながら制作したのですが、その段階から「混声がいいな」と考えていたものなので。僕だけが歌っていたら、気持ち悪いものになっていたかもしれません。

――前作は「4月のマーチ」や「P」など、PORINさんがメインを張る曲も多かったですが、今回はatagiさんが全ての楽曲でメインボーカルを務めています。このバランス感は意図してそうなったのでしょうか?

atagi:そうですね。PORINに歌ってほしい曲もいくつか出来ていましたが、結局今回は収録を見送ることになりました。また、このアルバムにおいては、あまりスイッチしすぎて対比が強くなりすぎないようにと考えていたこともあって、僕がでしゃばる形になりました(笑)。

――そういった意味でもコンセプチュアルなアルバムともいえますよね。2曲目の「What You Want」は、1970年台後半~80年代の質感がある一曲です。

atagi:まさに。僕の趣味であるソウル・AOR・ダンスクラシックスの要素がふんだんに盛り込まれています。この曲は収録楽曲を決めるギリギリのタイミングで完成して、持っていったらすぐに「これいいんじゃない?」と言っていただけたので、収録が決定しました。

――ひとつ聞きたいのですが、atagiさんはメロディーを作るとき、英語を歌いながら作るタイプですか? 特にこの曲に関しては、そう解釈できるものが多かったので。

atagi:そうですね。ただ、英語だけというよりは、日本語と英語、あとハナモゲラ語を入れたりするのですが、そのまま歌詞に採用されることも多くて。最初から日本語で考えると本当にハマらないし、どうしようかいまだに悩むことはありますね。

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ユキエ。

――なるほど。そして3曲目の「WAHAHA」は、今作の中では異色のチャラさというか。

atagi&PORIN:(笑)。

PORIN:曲ができたのは去年の夏終わりなので、ちょうど1年前くらいですね。

atagi:僕らは「夏っぽいことをやりたい!」と毎年言いながら、気づいたら夏が終わっているタイプのできないような人たちなので(笑)。そこに全力の恨みを込めて作った曲です。

PORIN:深夜のスタジオで籠りながら作ったもんね。曲と真反対ですよ。

atagi:メロディーのイメージとしては、「チャラいけどちょっと泣ける」という感じです。夏ってそういう甘酸っぱさがよく似合う季節だし、この雰囲気を曲にしたいなと思ったのも理由の一つですね。

――曲においては“チャラさ”をギターが、“甘酸っぱさ”を鍵盤が担っていて、それぞれがバランスを上手く取っているという印象を受けました。

PORIN:それはmabanuaマジックですね。atagiも「このアレンジがお気に入りだ!」ってずっと言っています。

atagi:僕らのSound Cloudを見ていただければ、過去に自分たちでアレンジしたヴァージョンがアップされているのですが、それと聴き比べるとmabanuaさんのアレンジがどこまで素晴らしいかわかります。

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