氣志團とドラマ『LOVE理論』の共通性とは? 「感じるな、考えろ!!」という批評的メッセージを読む

20150623-kishidan2.jpg氣志團『Don’t Feel,Think!!』(影別苦須 虎津苦須)

 また、『モテキ』以降だなぁ。と、感じるのは、劇中でかかる挿入歌の数々。

 「LOVER SOUL」(JUDY AND MARY)、「LOVE LOVE LOVE」(DREAMS COME TRUE)、「Hello,my,friend」(松任谷由実)など、なぜか90年代のJ-POPが多く、しかも「Hello,my,friend」なら歌い手がユーミンではなく槇原敬之のカバー曲だったりと、原曲よりもカバー曲の方が多かったりする。

 だが、主人公の今田の年齢は20歳で、90年代J-POPにそこまで思い入れがあるとは思えない。classの「夏の日の1993」を歌っていたらclassの元メンバーの日浦孝則が登場していっしょにデュエットするというシーンがあるのだが、今田にとって93年は生まれる前だ。

 おそらく、この90年代カバー曲は、今田を見守る水野の視点を現しているのではないか・

 今ではキャバクラのオーナーとして圧倒的なカリスマ性を誇る水野愛也だが、実は彼もかつては田舎から上京してきたダサい大学生で、モテなかったためにLOVE理論を自分で生みだしたことが、劇中では語られる。

 店長の年齢は不明だが、片岡愛之助が72年生まれなので、おそらく90年代前半を大学生として過ごしたのだろう。同時に、今田の行動自体が、店長のLOVE理論をそのまま借りているというカバー曲を歌っている状態に近いため、LOVE理論と90年代カバー曲を重ねているのだ。

 最後に、『LOVE理論』のテーマをもっとも体現しているのが、エンディングテーマとなっている氣志團の「Don’t Feel,Think!!」だろう。

 CDジャケットからわかるとおり、ブルース・リーの名言「Don’t Think,Feel!!」(考えるな、感じろ!)をひっくり返したタイトルだが、「戦略を立てて行動しよう」と指南する本作のテーマを、もっとも明確に表している。

 同時に思うのは、この「感じるな、考えろ!!」という言葉自体が、2015年現在の日本において批評的な鋭いメッセージになっているということだ。

 CDセールスからライブやフェスの動員に、ミュージシャンの主戦場が以降していく中、「いかにその場を楽しく盛り上げるか」が第一というライブのスポーツ化が音楽シーンで起きている。

 そのため、歌詞について分析したり、深読みしたりといった内省的な試みは「愛」、「熱量」、「感動」といった言葉に押しやられ、「考えるな、感じろ!!」という世界観がマジョリティとなりつつある。

 そんな状況下で「感じるな、考えろ!!」と歌う氣志團のメッセージは痛烈だ。しかし、彼らのコミカルなビジュアルもあってか、表現自体は実にコミカルで笑えるものとなっている。

 氣志團はヤンキー、水野敬也は自己啓発書という、「考えるな、感じろ!!」の世界に属している。しかし、そのメッセージは「感じるな、考えろ!!」だというのは、根底にあるのが状況を俯瞰してかき回す「笑い」にあるからだろう。どちらも尻尾がつかみにくい作風だが、その煙に巻くようなスタンス自体が、受け手に対し「考えろ!!」と挑発しているかのようだ。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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