「宗像明将の現場批評〜Particular Sight Seeing」第15回『ギュウ農フェス vol.2』
BiSHの現場が動物化!? 熱狂と波乱のギュウゾウ主催フェスを徹底レポート
4番目に登場したのは、BiSの最初期の制作チームが「BiSをもう一度始める」と宣言してスタートさせた4人組、BiSH。1曲目の「MONSTERS」から激しいリフトやジャンプ、クラウドサーフが起き、現場は動物化。「スパーク」を聴きながら、「パフォーマンスの方向性がまだ明確になっていないし、かといってジャンクな方向にも振りきれておらず、楽曲の良さに依存している面は否めない」などと真面目に考えていたところ、靴を投げる清掃員(BiSHファンの総称)を目撃。靴を投げるなよ、ジャンプでもう禁止事項を破ってんだから! しかし、そうした清掃員ばかりではなく、消臭剤を噴出させまくって、結果的にスモーク効果のような演出を生み出している清掃員には妙に感心させられた。パフォーマンスという点では、「ぴらぴろ」の振りきれた路線が今のBiSHに一番ふさわしいだろう。
また、このあたりからは清掃員がジャンプしなくても、暴動のような盛りあがりで床が揺れ続け、「下の階からの苦情待ったなし」の状況となった。「サラバかな」ではリフトの嵐となったが、とにかくサイリウムを投げるな! 「TOUMIN SHOJO」では、ヲタをステージ上に引っ張り上げて踊らせるという恒例の行事が行われた。
転換中に登場したギュウゾウは「苦情来てまーす!」とMC。「このイベントは最後まで続行できるのだろうか」と不安さえ抱く状況になった。
5番目はおやすみホログラム。サウンドにUSインディーやオルタナの影響が濃い2人組だ。また、元研究員が多数流入したグループとしても知られている。
おやすみホログラムの現場については、自嘲を込めて羊(おやすみホログラムファンの総称)も「きったねぇ現場」と呼ぶが、実際のおやすみホログラムのステージとフロアはむしろ美しい。ギターの一音が鳴りだした瞬間に、あらゆるものが崩れだす。脈絡なくリフトやクラウドサーフが続き、ときにメンバーがフロアにダイブしていく。そこには何の予定調和もなく、混沌の美だけがある。
1曲目の「machine song」では、望月かなみに余裕すら感じた。そう、この日は元研究員つながりでBiSHとおやすみホログラムの対決が注目されていたが、当のおやすみホログラムの八月ちゃんと望月かなみは、そんなことをまったく意識していないかのように飄々とステージを展開していた。
おやすみホログラムは、Have a Nice Day!とのコラボレーションによる「エメラルド」という楽曲をリリースしており、それは東京のアンダーグランドの傑作にして金字塔だ。そのHave a Nice Day!のカバー「forever young」では、完全に会場がダンスフロアと化し、おやすみホログラムのふたりがハモりはじめると、その熱はさらに増していった。「drifter」で男性ヲタ同士が抱き合い、キスをしていたのは何だったのだろうか。最後の名曲「note」では、メロディーの美しさに比例するかのようにフロアは荒れ狂っていく。おやすみホログラムは、アコースティック編成やバンド編成でのライブも行っているが、この日は通常の編成で肩肘張るところもなく演者としての実力で爪跡を残していった。
BiSHとおやすみホログラムによって、もはやぺんぺん草も生えない焼け野原となったTIAT SKY HALL。そこに、セルジオ越後やSKE48の福士奈央などからの応援ビデオメッセージが上映される光景はシュールでもあった。
6番目はT!P。栃木県の4人組グループだ。突然正統派というか普通のアイドルが健気なステージを見せる光景には、それまでとの落差が大きすぎて内心でやや戸惑った。