小野島大が"鬼才音楽家”を直撃インタビュー
CMJKが明かす、J-POPのサウンド制作最前線「アイドルの仕事こそやりたいことができる」
「まず自分で笑えるものを思いついてから機材に向かう」
ーーたとえば?
CMJK:いつも言うことなんですが、最新作が一番自信があるんです。だから、それこそ、もうすぐ出る(取材は4月7日)Juice=Juiceの『Ça va ? Ça va ?(サヴァサヴァ)』ってことになりますね。あとは来月に出るチームしゃちほこの『天才バカボン』。日本人なら誰でも知ってるあの曲のカバーなんです。カバーとかリミックスって編曲家の腕とセンスが試されるものなんで、気合いが入りましたね。赤塚先生自体ぶっとんでますから、さらっと今風にした程度じゃダメで。どうしたら笑ってもらえるようなインパクトのあるものになるか。やる気が出ましたねえ。
ーーどういう発想からの作業になったんですか。
CMJK:僕は新しいものも聞きますけど、同じぐらい、古いものも聞くんですよ。たとえば80年代にリアルタイムで聞いてなかった、売れてたから毛嫌いしてたようなものとか。60年代の、ビートルズやストーンズになれなかったC級ガレージサイケとか。そういうのをよく聴くんですけど、「バカボン」のオリジナルはガレージサイケだなと。年代的にもね。ファズギターが入ってて、ベースがすごく動いて。それをそのままやってもダメだから、ひら歌はガレージサイケのままで、サビになったらガバとかアタリ・ティーンエイジ・ライオットになればいいかなと(笑)。プラス、エイフェックス(・ツイン)で。
ーーなんですかそれ(笑)。
CMJK:いや、本気で(笑)。最初からディレクターにそうしますって言ったんで(笑)。笑ってましたけどね。いいんだこの人たちって。どうせカップリング曲だし、めちゃくちゃやってやれと(笑)。それをまさかA面にするとは、このチームイカれてるなと(笑)。
ーー確かに好きにやってるようですね(笑)。
CMJK:Juice=Juice『Ça va ? Ça va ?(サヴァサヴァ)』は、フレンチ・ポップというコンセプトだったんですけど、クライアントから、バンドネオンかアコーディオンを入れてくれというオーダーがあったんです。でもフレンチ・ポップでバンドネオンやアコーディオンが全面的にフィーチャーされてる曲って意外にないんですよ。なので言われてはいなかったけど、バート・バカラック的なアプローチも入れてみようかな、とか。そういうのは自分で判断して。
ーーどういう新しいアイディアを入れ、面白い発想をするか、それをどうやって繋げていくか。それは自分の中にどれだけいろんな引き出しがあるか、ですね。
CMJK:そうですね。僕、機材をいじりながら作っていくタイプじゃないんで。ギリギリまでサボるので(笑)。頭の中で全部できあがってから機材に向かうので。どうしても〆切り前にやる気が出ない場合は、まずリズムから組むか、みたいなことはありますけど。
ーーどんな曲でも、まず完成形が頭に浮かんで、そこに近づけていく作業。
CMJK:そうです。脳内の設計図に近づけていく。まず自分で「なんだそりゃワハハハ!」と笑えるものを思いついてから機材に向かうんです。
ーーそういう作業で、たとえば初音ミクを使うことはあるんですか。
CMJK:ソフトをいただいたんですけど、作業してるとちょっとストレスがたまるんですね。プロ・ユースとしては、もう少しサクサク動いてくれないかと。広く一般の人がいじれるようなソフトなんで、時間がかかるんですよ。走らせている間にほかのことをエディットしたりできないんですよね。やってて嫌いじゃないですけど。
ーーなるほど。あくまでもアマチュア向けで、プロユースには使えないと。
CMJK:そうそう。Singer Song Writer(初心者向けDAWソフト)よりは面白いかな、みたいな。
ーーあれによっていろんな人たちが音楽のクリエイティヴに参加して、それが大きな動きになって日本の音楽シーンを変えている、という意見もあります。そうして作られた作品などはお聞きになりますか。
CMJK:動画サイトでチェックはしたことあります。ああ、すごく情報量が多いなと。あと、あまり洋楽の動きとか関係ないんだろうなと。こういうものの中で純粋培養されて出てきた新しい人たちなんだなと。
ーー初音ミクに限らず、最近の若い人の作る音楽はそういう傾向がありますね。洋楽の影響があまりない。
CMJK:だから打ち込みやってても、この人たちはケンイシイも石野卓球も知らないんだろうなっていう。
ーーその時点で興味が薄れてしまう。
CMJK:いや、なかにはよくできてるのもあるんですよ。勘がいいんでしょうね。音楽的な運動能力が高いんだろうなと。
ーーその情報量の多さゆえに、クラムボンのミトさんなどは衝撃を受けて、音楽シーンが大きく変わったと言っているわけですが、そういう変化を感じることはありますか。
CMJK:…変化は感じますけど…外国の人が歌舞伎町にきて、ネオンがごちゃごちゃしてる光景にびっくりしたとか、そういう一種の猥雑さにポップを感じるのは理解できますけど、でもだからって”スゲえかなわねえ参りました!”とは全然思わないですけどね(笑)。ボーカロイドとかニコニコ系に対して。
ーーそこで学ぶべきことは何もない?
CMJK:うーん、難しいなあ…うーん…やっぱり子供の頃からアニソンとか聴いて育った人たちが、ある程度大人になってやってる音楽だと思うんです。そこですごく完結した世界じゃないですか。僕がやりたいのは、「なんじゃそりゃ!」みたいなものを「こういうのがあるよ」ともってくるのが役割だと思うので。
ーー完結した世界からはみ出す、あるいはぶち壊すような。
CMJK:面白いのもあるなとは思いますけど、刺激にはならないし、意識もしないです、正直言って(笑)。
ーーなるほど。よくわかりました(笑)。それはオタクっぽいのがあまり好きじゃないってことですか?
CMJK:(笑)そうですねえ…。
ーーアニメとかボカロものから一歩引いてるのはそれが理由なのかなと。
CMJK:うん、それはありますね正直。正直若いころはリア充じゃなくて不良少年に近かったですから。パンクでしたし。
ーーヤンキー?
CMJK:ヤンキーっていうよりは…パンク?(笑)。言い訳がましいな(笑)。
ーーアナーキーがヤンキーかパンクかっていう問題みたいな(笑)。
CMJK:そうそう。世代的にわかっていただけますよね?(笑) バンドで東京に出てきたんですけど、すぐにクラブにハマっちゃって。あんまりオタク・カルチャー的なものは縁がなかったんですよ。そういう知り合いは一杯いましたけど。クラブとライヴハウスだけで育ってきたんで。