『Music Factory Tokyo』スペシャルインタビュー
ヒャダインが明かす、人気音楽作家となるまでの日々「動画サイトで自分は間違っていないと確認できた」
――ヒャダインさんはかなり多作なことで知られています。曲をテンポよく、たくさん作っていくコツのようなものはありますか?
ヒャダイン:鍵盤を弾けることと、完璧ではありませんが絶対音感があることが、スピードアップにつながる強みではないかと考えています。また、メロディや展開を頭の中に思い描いてからパソコンの前に座るので、迷いなくどんどん作っていけます。ここも人それぞれで、完璧主義だったりOKラインが高い人は、推敲する作業がより必要になるでしょうから、多作な人を羨んだり、逆に深く追い込む人を羨んだりすることは、不毛な憧れなのかな、とも思いますね。また、あまり細かくやるタイプではないので、基本的に1日、分けたとしても2~3日で一気に終わらせます。
――ヒャダインさんは多岐に渡って仕事をしているので、日によって異なると思いますが、おおよそどのようなスケジュールで一日を過ごしているか、教えてください。
ヒャダイン:作曲に一日使える場合は、朝8時くらいに起きて、朝ご飯を食べてからすぐにパソコンの電源を入れて作業します。13時くらいまでやると、その日の終わりが見えてくるので、昼ご飯を食べた後、夕方にかけて微調整や仕上げをして、後はのんびりと完成させます。テレビ収録が入っていたりする場合は、13時くらいまでは同じように過ごして、その後テレビ局に行く、といった流れですね。
――作家の方からはよく、締め切りまでの期限が短い依頼が多いという話を聞きます。その点について、これから作家を志す人達にアドバイスできることはありますか?
ヒャダイン:言い訳しないことでしょうか。ひとつひとつがオーディションのようなものなので、手を抜いたものを出す癖はつけない方がいいと思います。とても大変なことで労力もお金も掛かりますが、ひとつひとつ、悔いのないベストを作ることが大切です。これは経験則から言えることですが、そういう曲は、そのとき採用されなくても後々、他のアーティストに採用してもらえますから。やっていくなかで、「こんなに頑張ってもどうせ決まらないんだろう」とか、「結果を見ればいつものメンバーで、結局出来レースじゃないか」と思うことはたくさんあるかもしれません。しかし、腐らずにそのときのベストを作れば、その楽曲は自分のストックになります。そのときのベストはそのときにしか出せないですし、2015年には2015年にしか作れない自分の人生の味があります。それはテクニック的なものではなく、メロディのラインや曲への入り方、作詞家ならば今しか紡げない言葉なのだと思います。それを残すために、腐らず制作し続けることが大事です。
インタビュー「ヒャダイン」ひとつひとつ、悔いのないベストをつくることが大切(後編)