氷川きよしと吉井和哉、最新チャートで競うスターシンガーの意外な共通点とは?

 かつて、チャートの世界には「ポップスに比べて演歌は弱い」という定説があった。「演歌」の部分は「クラシック」や「ロック」や「洋楽」に換言してもよいが、ポップスを聴く絶対数に対して他のジャンルのファンは明らかにマイノリティだったのだ。イエローモンキー時代の吉井は超えられない「ミリオンの壁」に苦しんだし、1位にはなれないものの毎回アルバムがトップ10入りする氷川は、それ自体が「演歌の世界では彼だけが持っている記録」として大々的に語られてきたのである。

 吉井和哉は今回昭和歌謡に的を絞ったカバー集なので、サウンドにロック云々はあまり関係がない。自分の原風景を切々と語るように弘田三枝子やあがた森魚、ピンクレディーや森進一を歌い上げた珠玉のジャパニーズ・ポップス名曲集だ。僅差とはいえ、そのセールスを上回るのが『演歌名曲』。ううん、と唸ってしまう。吉井と氷川がどうというよりも、この二人が「絶対に勝てない」はずだったマジョリティのポップスは一体どこに行ってしまったのだろう、と。

 なお、今回のアルバムにも入っている氷川のシングル「ちょいときまぐれ渡り鳥」は、今年9月のデイリーランキングで初の1位を記録している。デビュー当時からのスタンスを変えないまま、氷川きよしが1位になる時代が来た。次のアルバムが初登場1位でも驚かない。

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

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