姫乃たま「地下からのアイドル観察記」
テンテンコに姫乃たまが訊く(前編) 北海道生まれの音楽好き少女がBiSに加入するまで
「いつか東京で暮らすんだろうなって勝手に思ってました」
——店員さんも熱心な女の子が来て、嬉しかったでしょうね。当時は自分自身で音楽をやろうと思わなかったんですか。
テンテンコ:本当にただの遊びなんですけど、高校の友達と作ったカセットテープを、お店に置いてもらっていました。ラジカセを二台使って、鍵盤ハーモニカとかの音を録って流して、もう一台にその音と歌を録音して……。
——いまその音源が出てきたら、ファン同士で戦争が起こりそうですね。東京で暮らし始めたのはいつ頃ですか。
テンテンコ:大学進学をきっかけに上京して一人暮らしを始めました。東京へは以前から夏休みとかに遊びに来てて、憧れというよりは、いつかここで暮らすんだろうなって勝手に思ってました。田舎にいても何もないんですよ。バンドだってツアーで来るか来ないかで。でも東京ならしょっちゅうやってるし、このままじゃいけないと思って東京に来ました。
——では、東京での大学生活は華やかに遊び倒して……。
テンテンコ:いや、東京に来てからはぐうたらしてました。根がぐうたらなんです。大学でも友達全くできなかったですし。相変わらずライブには行ってましたけど、いま思い返してもひどい生活でした(笑)。大学の人とは趣味が合わないっていうか、みんな同じように見えちゃって。ライブも結局ひとりか、一年遅れで上京してきた中高の同級生と行ってました。
——BiSに加入するまでは活動されていないんですか?
テンテンコ:ちょっとだけバンドのボーカルをやってました。大学四年生になっても何もやってなくて、当時よく通ってた桜台にあるpoolって変なライブハウスにいつも通りライブを見に行ったんです。そこでドラムを叩いてた人から、「バンドのボーカルが辞めちゃうんだけど次のライブ決まっちゃってるから、君、歌わない?」って誘われて。私も暇だったし、まあいっかって、向こうも私の歌とか一切聞かないまま加入しました。
——えっ!それでデビュー?
テンテンコ:はい。一ヶ月後くらいにみんなで車に乗って、名古屋まで遠征してデビューしました。バンドはポップにちょっとノイズを足した感じで、ごちゃごちゃした演奏に私の声を乗せたギャップのある感じでしたよ。
——バンドはBiSに加入するために辞めたんでしょうか。
テンテンコ:特に理由はなく、私が大学を卒業する頃くらいに休止することになったんです。就職とかなんも決めてなかったので、やばいと思ってバイトでもすることにしました。どうせなら人目につくところにしようと思って、秋葉原のディアステージで働き始めたんです。二月から働き始めて、三月にツイッターでBiSのオーディションの話を見て、面白そうだから受けたら受かりました。だから私、ディアステージも二ヶ月しか働いてないんですよね。ぐうたら……。
——受けたら受かったBiSで“テンテンコ”になるんですね。テンテンコさんってもしかして、転校続きだったからテンテンコなんですか?
テンテンコ:えっ、違います。キョンシーの映画(『幽玄道士』)に出てくるヒロインのテンテンが可愛くて憧れてたからです。
テンテンに憧れていたぐうたら女子大生がみんなの憧れになるのは、このすぐあとの話です。
(続きはこちら:テンテンコに姫乃たまが訊く(後編) BiS卒業後、フリーランスの道を選択した理由とは?)
■姫乃たま
1993年2月12日下北沢生まれの地下アイドル。2009年より都内でのライブ活動を中心に地下アイドル活動を開始、2011年よりライターとしても活動している。他に司会やDJ、イベンターなど活動は多岐にわたる。
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(写真=金子山)