BiSが地下アイドルに与えた衝撃(前編) 姫乃たまがオーディション体験を振り返る

 BiSが解散しました。解散ライブで初めて彼女たちが歌い踊る姿をきちんと見て、BiSのオーディションを受けた日のことを思い出しました。恥ずかしいので公にするまいと思っているうちに、本当にすっかり忘れてしまっていたのです。

 あれは二年前ほど前の夏のことで、BiSがavexからメジャーデビューして話題になっていた頃でした。思いがけず三次面接まで進んだ私は、つばさレコーズの本社で、BiSのマネージャー兼仕掛け人の渡辺淳之介さんと、avexの社員の方の前で歌いました。

 私はBiSについて、ほとんど何も知りません。彼女たちがメジャーなアイドルの中でどういった立ち位置なのか、いつどのメンバーが抜けて誰が加入したのか、CDは何枚出していて、それぞれどのくらい売れて特典に何が付いていたのか、何ひとつです。熱心なファンの方が私の文章を読んだら、何も知らないくせにと腹が立つかもしれません。

 ただ、そんな不勉強な私ですら、思い返せばBiSとの接点がいくつもあります。彼女たちの影響は、地下アイドルとして活動する私のような小さな存在にまで確実に及んでいたのです。

 私は高校二年生になったばかりの16歳の頃からフリーでソロの地下アイドルとして活動しています。友人に誘われて遊び半分で出演してみたのがきっかけでした。アイドルには憧れたことも志したこともなければ、歌も踊りもロクに勉強したことがありませんでした。いくら地下とはいえ、こんな自分にアイドルなんて肩書きが許されるのは18歳までだろうと思っていました。自分で自分に期限を設定している節もあったかもしれません。

 BiSのオーディションが開催されたのは、そんな私が19歳をちょっと過ぎて、そろそろ活動を辞めようか悩んでいた頃でした。こんな私がここまで活動を続けられたのは、ファンの人たちのおかげです。特に私のような人気のないアイドルにとって、ファンの発言は、ひとつひとつに重みがあります。BiSのオーディションを受けたのも大事なファンの人に勧められたからでした。

 向上心も協調性もない地下アイドルの私が、急にメジャーアイドルユニットのオーディションに行くのは個人的にとても恥ずかしいことでした。でも、どうせ受からないだろうし、ファンの人に誠意だけでも見せとくかと、そういう理由で応募したのです。

 ただ、ひとつ引っかかることがありました。当時メンバーだったテラシマユフちゃん(現・寺嶋由芙)と、BiS加入以前から知り合いだったのです。いや、引っかかっているのは私ばかりでユフちゃんからしたら心底どうでもいいことだと思うのですが、それでも恥ずかしかった私は、本名で、地下アイドルであることも隠してオーディションを受けたのです。

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