金爆『ローラの傷だらけ』が起こした波紋 “特典なし商法”がシーンに与えた影響を分析

 ゴールデンボンバー(以下「金爆」)が8月20日にリリースした”特典なし”シングル『ローラの傷だらけ』はオリコンウィークリーチャートによると約4.3万枚を売上げ初登場2位を記録するものの、前作『101回目の呪い』の約15.8万枚とその差は約11.5万枚という結果になり、鬼龍院自身もブログで「誤解を恐れず言うと、僕たちのCDの売り上げ枚数でいうと音楽は特典に勝てない」「何を売ったかわからないまま獲得した1位より、はっきり自分の意見を無理矢理通し、自分で作った自分の作品を売ってみんなが買ってくれたことの方がはるかに嬉しいです。」とコメント。楽曲やその試みについては、柴氏の記事(参考:金爆が“特典ゼロ”シングルでやろうとした本当の狙いとは? 歌謡ロック的サウンドから読み解く)に任せるが、今回はこの結果が起こした「波紋」について検証したい。

 『ローラの傷だらけ』は発売日(正確には発売日前日=フラゲ日)から、店頭では売り切れが続出。今回のシングルはデジタル配信を行っていないこともあり、楽曲を手に入れるにはCD現物を入手しなければならず、Amazonやオークションサイトでも2倍以上の値段で今も取引されており、図らずとも音楽業界の流通の問題も浮き彫りにした。ちなみに普段の金爆は、iTunesや着うたサイトはもちろんのこと、「SKIYAKI WERK」ではwav形式での高音質配信も行っていることは付け加えておく。

 鬼龍院は「日経エンタテイメント!(2014年9月号)」のインタビューやブログ記事でも、しきりに「はっきり自分の意見を通すこと」について言及しており、事実今回のリリースではユーザーに「不便」を強いる結果になったのだが。vo-karuの鬼龍院はヴィジュアル系らしからぬ低姿勢さが特徴であり、近年の大規模会場でのライブにおいて大抵「後ろの人、席が遠くてごめんね」という趣旨のMCをするタイプのボーカリストである。そんな彼が「自分の意見を通す」ことを全面に押し出したのを公にすること自体が珍しく、本作『ローラの傷だらけ』は「鬼龍院、初めてのワガママ」と呼んでもいいと思う。

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事務所加入初期に販売されていた500円CD。何種類かリリースしているが写真は「抱きしめてシュヴァルツ」のもの。ちなみに歌詞カードはトレカ形式で別売りされていた。

 思い返してみれば、金爆は初期からコロッケ袋にバンド名を印字した簡素なパッケージの500円CDを物販で売っており、昨年のツアーで販売された「ゴールデンボンバー 5周年記念本」でも名物マネージャーの所氏も「金爆は、”顔”(写真の入ったグッズ)よりも”音楽”が売れた」とコメントしている。エアバンドというコンセプトとトリッキーなパフォーマンスありきだとしても「楽曲」の良さが無いとCDが売れるはずはない。もちろんライブ会場での物販販売なので「特典」も無い。それを今、同じように簡素なパッケージで特典無しというCDを売っただけで、ある種の「社会実験」になってしまうし、発売前や発売週(先週)よりも「特典に勝てなかった」という結果が出た今週の方が話題になっているというこの状況は本当に興味深い。

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