King Gnuは未来に行く! 4人自ら再定義した「King Gnuとは何者なのか?」――本能と解放の楽園『CEN+RAL Tour』

7月14日、15日と2日間にわたり横浜アリーナで開催された追加公演をもって、今年2月から始まり、アジア圏を含む全16都市をまわった『King Gnu CEN+RAL Tour 2026』は幕を下ろした。
私は7月15日、最終日の横アリ公演を観ることができた。360度オーディエンスに取り囲まれるようにアリーナ中心にセットされたステージ。ステージのLED部分にはデッカい顔のオブジェが4つくっついていて、その目は光っていた。

そのステージでKing Gnuは全27曲を披露した。時に井口理(Vo/Key)や常田大希(Gt/Vo)、新井和輝(Ba)はステージから降りていき、アリーナを練り歩きながらオーディエンスと触れ合えるくらいの距離で、直接ぶつかり合うようなパフォーマンスをした。「ここライブハウスじゃないよ。横アリだよ?」というツッコミが心のなかに沸いてきたが、会場の大きさはKing Gnuを縛り付けるものではなく、むしろ、「その場所でどう生きるか?」ということが彼らにとって重要なことなのだろう。ステージの屋根にはモニターも設置されていて、汗を滴らせながら演奏する4人の姿が映し出されていた。井口が手持ちカメラを持ってステージを降りると、その映像がそのままモニターに映し出された。超至近距離のコミュニケーション。彼はパンクバンドのシンガーのように、オーディエンスに顔をくっつけるくらいの距離で歌っていた。
King Gnuというバンドの“本能”がざぶざぶと溢れている、そんなライブだった。「SO BAD」や「AIZO」といった直近の新曲たちからも感じとることができた衝動、ダイナミックな喜び、コミュニケーションの希求、親密な友愛、解放感。そういうものが会場を満たしていた。

ライブは、1曲目いきなり「AIZO」から始まり、早くも〈LUV ME〉〈KILL ME〉の大合唱が巻き起こった。続く「Flash!!!」では激しく疾走する演奏に合わせ、その曲名のように盛大な照明演出が空間を照らし出す。「どろん」では新井が、「Teenage Forever」では井口が、ステージから降りてアリーナを練り歩く。「Teenage Forever」で井口は「歌え! もっと!」と、オーディエンスの合唱を煽った。
80'sシンセポップを彷彿とさせる「TWILIGHT!!!」、常田の美しいピアノが映えた「ねっこ」など、グラデーションのように景色を変えていく音楽性の豊かさは、King Gnuだからこそ体験できる音楽の素晴らしさだ。オーディエンスの大合唱から始まった「Prayer X、さらに「Tokyo Rendez-Vous」「Slumberland」といった初期楽曲たちの浸透力の高さも会場が一体となるような高揚感を生み出す。「Slumberland」の終わりには、勢喜遊(Dr/Sampler)のまわりに常田、新井、井口の3人が集まってきて、4人揃った画がモニターに大写しになる。King GnuがKing Gnuであること――。その奇跡的な事実が爽やかに祝福されているような瞬間。
ライブ中盤、深い青色の照明に照らされながら披露された「NIGHT POOL」からは、メロウな楽曲が続けて披露された。「NIGHT POOL」は井口の歌声が本当に素晴らしく、続く「白日」も、井口がスッと息を吸う最初の瞬間から惹き込まれた。「破裂」はまるで人肌のようなぬくもりに満ちていたし、「The hole」を締め括った常田のピアノは震えるほどに美しかった。そんな静謐な時間を経て、「一途」から再び横アリは巨大かつ熱狂的なロックの渦に巻き込まれていく。立て続けに「):阿修羅:(」の曲名がデカデカとモニターに映し出されると、大歓声が会場を包む。常田の一筆書きのようなリリカルかつリズミカルなギターが素晴らしい「BOY」では会場全体からハンドクラップが巻き起こり、個人的にライブで聴くのを楽しみにしていた「SO BAD」では、もちろん〈最悪で最高<3〉の大合唱。ステージからは盛大に火柱も上がる。クソったれな現実を直視しながら、忍び寄る不安を蹴り上げるように歌う〈最悪で最高<3〉のフレーズ。本当に痛快だった。思えば、King Gnuはずっとそういうバンドだ。この現実がどれだけクソったれでも、そんな現実で誰よりも自分たちは爆笑してやるという気迫。それがKing Gnuだ。


MCで勢喜がポツリと「……昨日、娘が初めて“トット”って言ってくれた」と照れ臭そうに話すと、会場から大きな拍手が。すると井口が「勢喜遊の娘に捧げます」と告げて始まったのは「Don't Stop the Clocks」。曲の終盤では、勢喜がハスキーな素晴らしい歌声を披露して、会場を幸福な空気に包み込んだ。そしてライブはラストスパートへ。ファンキーな「MASCARA」、ハイスピードでまるで上昇していくような快感を生み出す「Sorrows」、ラスト前の「雨燦々」ではオーディエンスが次々に灯し始めたスマホライトが会場をロマンチックに照らし出す。

最後のMCで井口は、King Gnuが来年結成10周年を迎えることを告げる。「自分たちはリリースも少ないし、マイペースに活動していますが……」と前置きしたうえで、「きっと来年は楽しい景色をたくさん見せられると思います。まだまだKing Gnuのことをよろしくお願いします」と語った井口。そして、ライブの最後には、威風堂々たるバンドの壮大なグルーヴが鳴り響く「飛行艇」が披露された。

ライブ終了後には、盛大な10周年イヤーを予告するようなムービーがモニターに映し出され、2027年2月から3月にかけて東京ドームと京セラドーム大阪の2会場で10周年の幕開けを飾る『King Gnu 10th Anniversary Opening Live “KICKOFF”』が開催されることが発表された。今回の『CEN+RAL Tour』は来たる10周年を目の前にして、King Gnuというバンドの本質をもう1度見つめるためのツアーだったのだろう。オーディエンスに囲まれながら4人が向き合うようにして演奏したステージ。装飾のない剥き出しの4人のアンサンブル。ステージを降りてオーディエンスに超密度のコミュニケーションを求めるパフォーマンス。希望と哀しみと優しさが混ざり合う世界。「King Gnuとは何者か?」ということを、彼らは自分たちの手で紡ぎ出す美と混沌によって、あらためて私たちの目の前に示して見せた。それが『CEN+RAL Tour』だったのだ。
そして、King Gnuは未来に行く。10周年に何が起こるのか、引き続き注視していたい。














































