なぜ今、ラジオが面白い? P・バラカン「番組後、僕より音楽に詳しい人からメールがくる」

 いま、最も刺激的な文化・情報発信の場である“ラジオ”の魅力を読み解いたムック本『21世紀ラジオ読本』が、6月25日に洋泉社より発売された。

 同書には、宮藤官九郎、バカリズム、宇多丸、大竹まこと、荻上チキ、久保ミツロウ、能町みね子、ムロツヨシ、小林克也、浜村淳、つボイノリオ、町山智浩、大槻ケンヂ、みうらじゅんといった、錚々たる文化人・タレントが登場。ラジオならではの面白さや魅力を存分に語っている。

 リアルサウンドでは今回、同書よりInterFMの執行役員であり、人気DJとしても活躍するピーター・バラカン氏のインタビューと、ラジオ日本にてアイドル番組のプロデューサーを務める福田良平氏のインタビューの一部を抜粋して紹介する。

 なぜ今、ラジオが面白いのか。番組制作の裏側まで知り尽くした二人の話は、音楽ファンにとっても興味深いものに違いない。(リアルサウンド編集部)

ピーター・バラカン「思っている以上に番組が音楽の好きな人に届いてる」

―― 13年4月に『Barakan Morning』が復活して、最近ではInterFMの平日朝の顔として、すっかり定着したように思います。

バラカン:それはどうでしょう(笑)。ただ、1年以上経って、手応えはすごく感じています。でも番組というのはいつまで続くかわからないし、「確実に続く」と自信を持つような感覚になると、ろくなことがないんです。以前InterFMでやっていた『BARAKAN BEAT』(96~06年)は、「10年続いているから大丈夫かな」と思った瞬間、終わっちゃったんですよね。それが教訓になって、一出演者としては、いつでも一生懸命やるだけ。つねにある一定の危機感を持っています。

――では、その「手応え」は、いつごろから感じていらっしゃいますか?

バラカン:番組が復活してから、ここ数カ月、とくに感じられるかな。リスナーの数が多いか少ないかというのは、ラジオ局としてはもちろん大事ですが、僕としては、聴いてくれているリスナーが満足しているかどうかのほうが大事。そういう意味では、毎日メールやツイッターを見ていると、少なくとも聴いてくれる人たちとのコミュニケーションは成立しているという実感があります。

 毎日いろんなメールが届くんですが、果たして僕ぐらいの力で応えられるか自信がないくらい、僕よりも音楽に詳しい人からのメールがきます。でも、朝聴いている人にはいろんな人がいて、「最初はたまたま聴いた」という人が多いんですよね。普通に音楽は好きだけど、ぜんぜん詳しくないという人もたくさんいて、「これまでポップスしか聴いてこなかったから、この番組でかかるほとんどの曲を知らない」というようなメールも届く。だから、みんなを満足させることはすごくむずかしいです。リスナー100%を満足させようと思ったら、たぶんノイローゼになっちゃうと思う。いろんな曲を楽しくかけながら、音楽に詳しい人たちを裏切ったと思われない程度で(笑)、音楽を知らない人たちにも魅力を感じてもらえる内容に、と思っているんですが……これは意識してできることではなく、最終的には番組の雰囲気。いろんな音楽をかけていても、音楽に対する愛情が伝われば、なんとかなると思っています。これは昔も今も変わらないことですけど。

 最近、僕が思っている以上に、この番組が音楽の好きな人に届いてるな、と感じられたことが立て続けにあって。たとえば……毎週「SONG OF THE WEEK」を決めて、1曲取り上げているんですけど、もう亡くなっているニック・ドレイクというイギリスのシンガーソングライターのお母さん、モリー・ドレイクが50年代に家のなかで録音したという曲(「アイ・リメンバー」)を取り上げたとき。商品としてではなく自分が作った曲を弾いているだけのものなんですけど、月曜に初めてかけてから、その週の木曜にはAmazonのLPチャート1位になったんですよ。日本の若いブルーズバンド、MONSTER大陸を取り上げたときは、すぐにiTunesのブルーズチャートで1位になったり。まぁ、iTunesのブルーズチャートだと、10人ダウンロードすれば1位になるかもしれないんだけど(笑)。そういう反応があると、びっくりしちゃうんですよね。リスナーの数は実際にどのぐらいかはわからないけれど、ラジオも捨てたもんじゃないな、と思いました。

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