リリー・フランキーが語る「ザンジバルナイトと音楽カルチャー」(第2回)
初期ビートルズ、藤圭子、パンク……リリー・フランキー流の“音楽の楽しみ方”とは?
――音楽を聴く環境も、昔とはずいぶん変わりました。
リリー:今は家がだんだん本屋っぽくなってきたよね。本屋でウロウロして「この本いいんじゃないか」って本を買うのと似た感覚で、音楽との偶然の出会いが増えたというか。ネットを彷徨いながら新しい音楽と出会っている。すごく便利になったし、面白いよ。ただ、iTunesで音楽を買うようになったばかりの頃は、音質がストレスになっていたよね。それで、オーディオにいろんな外付けの機器を付けたんだけど、やっぱり満足のいく音にならなかった。でも、こないだ買ったパワードスピーカーがすごく良くて、やっと聴ける感じになったよ。俺みたいに昔の人間は、オーディオにこだわりがあるんだよね。良い音質で音楽を聴きたい。
――CDやレコードはもう買わなくなりましたか?
リリー:CDは買うよ。CD屋に行って、なんとなくブラブラしながら買う。CDが売れなくなったって言うけど、今後のCD屋も、今のレコ屋みたいに細々と残っていくんじゃないかな。俺たちは今、新しいハードに移行する過渡期にいるから、みんな新しいモノに対してヤンヤいうけど、それはいつの時代もいっしょだよね。そういえば昔、レコードからCDに移行していた時期、CDの音が悪いって言ってた人は、縁側カットって言って、CDの端っこをカッターで少し切ったりしていたよ。
――それはどういう効果があるんですか?
リリー:音に温かみが出るらしいんだよ(笑)。新しいものが出てくると、そういうわけのわからないことをする人が出てくるものなんだよ。儀式的なことをしなきゃ気が済まないんだろうね。
――今は儀式的なことって起こっていますか?
リリー:それぞれが聴いている音楽環境がまるで違うから、なんとも言えないな。例えば普段からiPhoneで音楽聴いている人は、俺みたいにオーディオを弄ったりしないのかもしれない。ただ、ハードが進歩しないと新しい音楽も出てこないから、音楽を聴く環境が進化していくのは良いことだと思う。シンセサイザーの進歩によってダンスミュージックが進化したように、楽器や機械といった文明の利器の進歩が、ここ何十年かの音楽を変えてきているからね。もし自力で新しい音楽ジャンルを発明しようとする人がいたら、それは無駄だと思う。
――もし機材がすごく進歩して、コンピューターが自動で新しい音楽を作るようになったら、ミュージシャンは必要なくなるってことは?
リリー:音楽は人がやる事だから、そういうことにはならないよ。だって、フェスに最高のシンセだけが並んでいて、最高のオートプレイをしていたとしても、それで人は集まらないでしょ。俺はザンジバルナイトで空間自体をプロデュースしたいって言ってるんだけど、それはネット上では決してできないことだからっていう側面もあるんだよね。
今はCDが売れない分、ライブを活発にやる時代だっていうけど、捉えようによっては、昔に戻っただけなのかもしれない。最近までミュージシャンは、CDを売るためにライブをやっていたけれど、もっと昔、ドーナツ盤とかが出ていた時代は、興業をするためにレコードを出していた。今、CDの売り上げがどういう風になっているのかは分かんないけど、ライブにお客さんが来ること、人が足を運ぶ場所があるっていうことは、けっこう健全な状況なんじゃないかな。ザンジバルナイトも、その空間に遊びに行くこと自体が楽しみになるようなイベントにしたいと思っているよ。
第3回:リリー・フランキーが振り返る、アイドル歌謡曲が市民権を得るまでの20年史に続く
2013年9月21日(土)
東京都 新木場STUDIO COAST
OPEN 14:00 / START 15:00
出演者
アリーナ・ステージ(ライブ)
小室哲哉 / スチャダラパー / OKAMOTO’S / でんぱ組.inc / and more
テント・ステージ(トーク&ライブ)
みうらじゅん&リリー・フランキー / 吉田豪&杉作J太郎 / どぶろっく / マキタスポーツ / 渡辺大知(黒猫チェルシー) / 星屑スキャット(ミッツ・マングローブ、ギャランティーク和恵、メイリー・ムー)
プール・ステージ(ライブ&DJ)
Negicco / ウクレレえいじ / Charisma.com / 掟ポルシェ / ピエール中野(凛として時雨) / and more
テレビ・ステージ(トーク)
大根仁 / and more
フードコート
Coming Soon