年末企画:杉本穂高の「2017年 年間ベストアニメTOP10」 他作品では見られない“光るモノ”

杉本穂高の「2017年ベストアニメTOP10」

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2017年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに加え、今年輝いた俳優たちも紹介。アニメの場合は2017年に日本で劇場公開された映画、放送されたTVアニメの作品から、執筆者が独自の観点で10本をセレクト。第8回の選者は、神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人であり、現映画ライターの杉本穂高。(編集部)

1.『夜明け告げるルーのうた』
2.『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』
3.『亜人ちゃんは語りたい』
4.『我は神なり』
5.『けものフレンズ』
6.『ノーゲーム・ノーライフ ゼロ』
7.『昭和元禄落語心中 -助六再び篇-』
8.『サクラクエスト』
9.『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』
10.『Re:CREATORS』

 個人の選ぶアニメベスト10など、どういう基準で選んでもどこからか槍が飛んでくる案件だが、せっかくお話をいただいたので、的になる覚悟をして書いてみることにする。

 まず選考基準について記しておく。原稿執筆時点で完結していないものは除外した。やはり全ての評価は完結したものに対してなされたほうが良いだろう。なので現在放送中の諸作品や劇場版のシリーズもの、たとえば『ガールズ&パンツァー 最終章』や『劇場版Fate/stay night [Heaven's Feel]』などは、今回は除外している。

 そして単に面白い、優れているものではなく、主題や内容に1点でも他作品では容易に見られない“光るモノ”を持った作品を優先してチョイスした。以下、10位から一言ずつコメントする。

『Re:CREATORS』

フィクションの影響力とは何かについての示唆に富んだ作品だった。架空のキャラが現実に降り立つには現実の人間の承認力(評判)が必要。フィクションが実社会に影響を与えるとすれば、フィクションにその力を与えているのは他でもない我々である。

『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』

今年最も“動き”で感動させられた映画だった。動く折り紙の可愛さはストップモーションならではと感心した。

『サクラクエスト』

地方に本社を置き、多くの地方舞台のアニメを作ってきたP.A.WORKSだからできる作品だった。土地の文化とは人が生きた証であり、簡単になくしていいものではないのだ。

『昭和元禄落語心中 -助六再び篇-』

海外での仕事経験が豊富なポリゴン・ピクチャアズの瀬下(寛之)監督は、日本の声優はすごく上手いとよく語っておられるが、そんな声優のすごい芝居がこれでもかと堪能できる。

『ノーゲーム・ノーライフ ゼロ』

人類の歴史は戦争の歴史でもあるが、人が他の動物と違うのは知性によってである。人の力は武力ではなく知性。その知性をどこまでも信じる希望の物語。TVアニメを観ていなくとも独立した作品として鑑賞可能と判断したので、取り上げた。

『けものフレンズ』

たとえばミッキーマウスを好きになっても、ネズミそのものを好きになる人は少ないだろう。あれはネズミに人間を演じさせているようなもので、動物への愛着を呼ぶものでもないし、『ズートピア』しかりだが人間中心主義の枠から出ない。本作は人間中心主義的な視点を相対化してみせ、動物から世界はどう見えるかにも注目する。人の目には何もない空間でしかない砂漠を見た時、サーバルが言う「砂がたくさんあるね」(4話「さばくちほー」)の台詞の見事さよ。

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