『いつ恋』も『ダメ恋』もハッピーエンドに 冬ドラマ最終回の“傾向”を読み解く

 3月も残りわずかとなり、年明け1月スタートの主要ドラマが終了した。今期を振り返る上で挙げておきたいのが、ハッピーエンドの多さ。

 たとえば、恋愛ドラマでは『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)、『ダメな私に恋してください』(TBS系)、『お義父さんと呼ばせて』(フジテレビ系)、『スミカスミレ』(テレビ朝日系)、『家族ノカタチ』(TBS系)の恋が成就。刑事ドラマでも、『ヒガンバナ』(日本テレビ系)、『スペシャリスト』(テレビ朝日系)、『警視庁ゼロ係』(テレビ東京系)の事件や謎が解決した。

 さらに、製薬会社の悪事を暴き、メンバーが元に戻った『フラジャイル』(フジテレビ系)。結果的に誰も死なず、名作を書き上げた『ちかえもん』。(NHK)、誘拐事件解決に加え、主人公が夢への一歩を踏み出した『悪党たちは千里を走る』(TBS系)など、最終回に大団円を迎える作品が目立った。

 特筆すべきは、「後味の悪い結末にしかならないだろう」と思われていた『ナオミとカナコ』(フジテレビ系)と『わたしを離さないで』(TBS系)も、「主人公に救いを、視聴者に希望を感じさせる」結末だったこと。特に『ナオミとカナコ』は、「殺人の罪を犯したWヒロインが捕まったのか? それとも逃げ切ったのか?」、どちらとも取れる曖昧なラストカットが物議を醸した。これは制作サイドが、「3か月間楽しく見てきたドラマを暗い気持ちで締めくくりたくない」という視聴者心理を汲み取ったからだろう。

 “どちらとも取れる曖昧なラストカット”という点では、『怪盗 山猫』(日本テレビ系)と『火村英生の推理』(日本テレビ系)も同じ。「主人公は死んだのか? それとも死んでないのか?」、視聴者を戸惑わせるようなラストカットだった。

 終了後、当然のように賛否両論の声がネット上にあふれたが、「視聴者の想像に任せる」という終わり方は、もともと連ドラの定番。「無理に作り手の思いを押しつける」わけでも、「視聴者の願望に迎合する」わけでもないバランスの取れた方法なのだが、この結末も「バッドエンドを避けよう」という発想から選ばれたのではないか。

 思えばちょうど一年前の春、相棒・甲斐享(成宮寛貴)が犯罪者だった『相棒』(テレビ朝日系)、ヒロイン・ひかり(柴咲コウ)が不良に絡まれて事故死する『〇〇妻』(日本テレビ系)、悲運の主演2人が相次いで死んだ『ウロボロス』(TBS系)など、後味の悪いバッドエンドが続出。とりわけ『相棒』『〇〇妻』には「ありえない」「時間を返せ!」などの批判的な声が相次ぐ騒動になった。

 以降、連ドラの結末は視聴者心理に配慮したハッピーエンドが増えていたが、今期はその傾向がますます加速。しかし、制作サイドとしては、「ただのハッピーエンドではつまらない」ため、ラストカットに含みを持たせるなどの思いや工夫を施したのだろう。

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