Perfume×テクノロジーによる“Reframe”が教えてくれた、アートが与える真の感動

Perfumeによる“Reframe”公演を体験して

 「アート」という言葉は、この国では「何かよくわからない高尚なもの」「オシャレなもの」というニュアンスで使われがちで、三大欲求にも衣食住にも直接関わりのない、贅沢なものとして扱われているように思います。

 しかし、私自身にとってのアートは、自分の知覚・感覚が開かれるもの、この世界を生きてゆくために必要なもの。

 ちっぽけな自分一人の力ではとてもこの辛い世界を生き抜くことはできないけれど、凝り固まった物の見方・考え方をアートが変えてくれることで、前を向くエネルギーを得られます。

 アートは暗闇で行き詰った時に一瞬差す光、崖から落ちそうな時に差し伸べられる手、喉がからからに乾いた時に口にする一杯の澄んだ水、それらと同等のものなのです。

 2018年3月20日、NHKホールにて『This is NIPPON プレミアムシアター『Perfume × TECHNOLOGY』presents “Reframe”』を体験しました。「観た」ではなく「体験した」と言いたくなる公演でした。

 まず、この公演は「着席」での観覧を指示されていました。いつもは踊りまくって興奮しながら見るPerfumeですが、この日は拍手も振りコピもコールもなく、ひたすら眼の前で起きている事象に集中する特殊なものでした。

 これまでのPerfume楽曲とMV映像が解体されて巨大スクリーンに散りばめられ、テーマが「再構築」であることを強く印象付けるオープニング。ライブ全体を通して、映像作品・楽曲だけでなく、Perfumeという存在そのものの解体と再構築がなされていました。

 一番印象的な「解体」は、三人それぞれの眼だけのアップがスクリーンに映る演出で、クローズアップされた「眼」というパーツだけを見ても、それぞれが誰のものかすぐにわかったのは衝撃的でした。Perfumeがいかにアイコンとして強力であるかが、そこにハッキリと現れていたからです。

 「シークレットシークレット」では完璧なマネキンと化し、その人間離れした冷たい表情に背筋が凍りつきます。「マネキンを演じたらPerfumeに並ぶものはない」、極度の集中力を客席側にも要求される着席指定公演だからこそ伝わるものがありました。

 生の歌声で始まった「Butterfly」。「Perfumeといえばオートチューン」という固定観念を覆し、その場の全ての人の心をまっすぐに射抜いた声。着席のまま微動だにせず息を潜めて歌声に耳を澄ます、神聖な瞬間でした。

 密やかな生歌での導入から、動き出すと途端に妖艶なダンスと、三人と共に舞うドローン。竜宮城の乙姫様と鯛やヒラメのように三人の周りをふわふわと舞う、ドローン一機一機があんなにも可愛らしく見えることがあるのかと驚きました。

 NTTドコモの5G×Advanced MMTで3都市を同期させたパフォーマンスが記憶に新しい「FUSION」、ここではNHKホールの高い天井に届かんばかりの超巨大な壁が突然ステージ上に現れ、壁の前で踊る三人の影は、ありえないほど巨大化したり奇妙に変形して映し出されます。それは影のようで影ではない、三人のダンスとリアルタイムに同期し、さらにいくつにも分割されて動き続ける背後の巨大な壁に描かれる、ダイナミックな舞台装置と化したインスタレーション。「その人が確かにそこに居る」という証拠であるはずの影が歪む、さらにそのあまりに巨大な歪みは視界いっぱいに広がり、自分の空間認識までもが歪み始め、自分の居る場所すらも非現実的になり、異空間に放り出されたかのよう。

“FUSION“,“Negai” and “Mugenmirai” from “Reframe”

 変わらない髪型、ずっと同じ三人、加工された声。これまでのPerfumeが築き上げてきたアイコン化されたイメージが突き詰められ、高みに達し、生身の人間は限りなく人工物に近づいて、逆に機械は温もりを感じさせる。人間と機械の境目が曖昧になっていく感覚に、「極まっている……Perfumeの世界、ここに極まれり……」の言葉しか出てきません。

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