渡辺俊美×GOODWARPが語り合う、世代を超えた音楽観「心地よいダンスミュージックは“抜き”の世界」

渡辺俊美×GOODWARPの世代超えた音楽観

 GOODWARPが、初の全国流通盤となるミニアルバム『FOCUS』を3月16日にリリースする。今回リアルサウンドでは同作の発売を記念し、CD帯にコメントを寄せている渡辺 俊美(TOKYO No.1 SOUL SET/猪苗代湖ズ)とGOODWARPメンバーの音楽対談を企画。90年代の音楽に影響を受けてきたという彼らが、大先輩・渡辺 俊美とダンスミュージックの生み出し方や音楽との関わり方について、じっくりと語り合った。(編集部)

GOODWARP『FOCUS』収録曲「僕とどうぞ」

「可能性を含めてすごくパワフル」(渡辺)

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渡辺 俊美(TOKYO No.1 SOUL SET/猪苗代湖ズ)

――俊美さんはGOODWARPさんの音源をどう聴きましたか?

渡辺 俊美(以下、渡辺):上手くミックスされてるなと感じました。「上手く」っていうのは、J-POPと、ダンスミュージックと、アンダーグラウンド的なもの、各自のルーツは分からなかったけれど、それぞれが聴いてきた音楽をちゃんと料理しているな、と。そこからまだ次に何かストックがあるんじゃないかって、可能性を含めてすごくパワフルだと思いました。

萩原“チャー”尚史(以下、チャー):ありがとうございます。僕らもいろいろな音楽を吸収できたらいいなって思ってまして。みんなそれぞれ違った音楽を聴いて育ってきたので、その要素を今のGOODWARPの音楽に取り入れられたらと常に考えています。

――GOODWARPのみなさんは俊美さんの音楽、特にTOKYO No.1 SOUL SETを聴いていたと。

吉崎拓也(以下、吉崎):TOKYO No.1 SOUL SETさんはDOARAT(渡辺俊美が設立・ディレクションするファッションブランド)をきっかけに知りました。ちゃんと音源を聴く前、学生の頃は勝手に「イケてる悪い人たちが聴く音楽」と印象を持っていて。

渡辺:うん、それで売っていたからね(笑)。

吉崎:だからまだちゃんと聴く前に、周りに居た音楽好きな友達たちからソウルセットの話が出ると、カッコつけて知ってることにしてた時期もあって(笑)。後々友達から『Grinding Sound』というアルバムを勧められて、「春は、今、、」を聴いた瞬間「こんなに優しい歌があるんだ」ってびっくりしました。持っていたイメージとのギャップがすごくて感動しました。

――今回、ゆっくりお話をされるのは初めてということで、みなさんがどのように音楽を生みだしているのか、その現場について話し合っていただきたいと思います。まず俊美さんはどうでしょう。例えば20代の頃、ソウルセット初期の頃の音楽の作り方と、ここ数年のモチベーションで変わった部分はありますか?

渡辺:変わってきましたね。20代の頃はずっとDJをしていたこともあって、クラブミュージックーー常に踊りやすいビート、サンプリングの要素を意識してました。ソウルセットはラップなので、ラップに合うビートというか。でも、絶対に合わないと思うものにもBIKKE(TOKYO No.1 SOUL SET/ラップ、作詞担当)はずっとチャレンジしてきて。その流れで、サンプリング要素からギターを使った曲作りに変わっていったりもしましたね。ただ、ワールドワイドな世界を意識するということは変わっていないです。アメリカ、イギリス、ドイツ、スペイン……それぞれの国でこういう曲がある、という情報は仕入れていないと、日本の枠内でやるのは面白くないと思っていて。あとは、自分で歌詞を書くようになったら、楽しい時よりも辛い時とか悲しい時のほうが良いフレーズが出るようになりましたね。

――なるほど。GOODWARPのみなさんはどうですか。

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吉崎拓也(Vo/Gt)

吉崎:GOODWARPの曲と歌詞は僕が作らせてもらっているんですけど、自分が知っている身近な人の顔を思い浮かべながら書く曲の方が圧倒的に書きやすくて。バンドを始めた時くらいに「大衆へ向けた楽曲はこうあるべきだ」というテクニックのようなものを人から教えてもらったりしたんですけど、「大衆向けの歌詞ってなんだろう」と考え始めた瞬間に、本質が分からなくなってしまったんですよ。例えば「愛は素晴らしい」だとか言ってみようとしても、どうもしっくりこなくて。自分にしかわからないような葛藤とか、夕日が差し掛かった橋をみてグッと来るとか……そういう方が聴く人に届くんじゃないかなと。考えた結果、そっちを信じるようになりました。この曲はあいつに届くといいな、っていうスタンスで書くことが多いです。例えばメンバーの顔を想像しながら、この曲のイントロはきっとドラムのありちゃんが好きだろうな、とか。ありちゃんがいいねって言ってくれれば俺の勝ち、みたいな。でもかえってその方が他の人も気に入ってくれることが多いんじゃないかなと思います。

渡辺:そう思いますね。小さな物語のような、そのくらいの出来事の方が「分かるー!」って感じありますもんね。小説でもそう。大したことない情景の方がいいというか。だから、作る側も意味はあえてないって言った方がいいこともあって。絵と一緒かもしれない。語れば語るほど価値が薄れるわけではないけれど、説明なんていらないでしょうって。その人がそう思ってくれたら正解、みたいな。そういうのが音楽であったり、芸術なのかもしれないね。

――サウンド面で心がけていることは。

吉崎:今回のアルバム、特にサウンドはみんなで話しこんで作っていきました。僕らなりのダンス・ポップといったら、縦ノリよりも横ノリだよなとか、8分より16分だよな、とか。あとはテンポですね。ちょうどこのアルバムを作ることになった時、SNSで「みんな4つ打ちやりすぎ」という話題が出ていた時期で。でもそこであえて全曲4つ打ちのアルバム作ってみたらどうだろうという気持ちになったんです。僕らの中では、相当面白い作品ができたんじゃないかなって思ってます。

藤田朋生(以下、藤田):踊れるサウンドということは意識しましたね。

渡辺:ポップミュージックが入ってきたばかりの時代って、みんな“コスプレ”から入ってたんですよ。それがどうも気持ち悪くて。「早くニューヨークに行けばいいのに!」って思ってました(笑)。「リアル」とか歌ってても、みんな全然リアルじゃない。そういうのばっかりだったんです。だから僕らはあえてそっちに行かず、なるべくキックもヒップホップにせずにサンプリングした要素そのままにして、軽く入れるように。歌い方もR&Bそのままにならないようにしてました。そこに、小さい時から好きだったフォークも入れて。形態的にはレゲエのパトワとのコンビネーションが当時新しく思えたので、歌とラップの融合なら面白いかなと。そんなことを考えながら始めた3人がソウルセットだったんですよね。意外と難しいことをやっていたわけではなくて、引き算していったらこうなった感じです。今もソウルセットの曲を作っているけど、結構音数は少なくなってきているかなぁ。ダンスミュージックって、抜きの世界。どこまで抜けるかっていう。バンドでいくときは、サビでバーンといくとかあるけど、ダンスミュージックでやっているバンドってそうじゃないからね。

有安祐二(以下、有安):最近、ちょうどそういう話をしていたところでした。

吉崎:めちゃくちゃタイムリーな話題です。僕たちも今まではいかに隙間を埋めるかということを考えていたんですけど。俊美さんが仰ったみたいに、そこから発見があると思うので。僕らの曲はシンセの打ち込みを入れているものもあるんですけど、ライブ中は生楽器を中心にしてみたり、バンドでやれるサイズでやるという意識になりました。

渡辺:埋めなくていい。埋めなくていいのよ。

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