「表現は持ちネタがなくなってからが勝負」TOKYO No.1 SOUL SETが“紆余曲折の23年”を語る

20131130-tokyo-01.jpg
年末のライブが恒例になっているTOKYO No.1 SOUL SET。(写真=埼玉泰史)

 TOKYO No.1 SOUL SETが新作 『try∴angle』を語るインタビュー後編。前編では新作のレコーディング話を通して、彼らの音楽観やルーツを探った。後編では、音楽シーンの寵児として登場した90年代当時を振り返りつつ、再び旺盛な活動を展開している現在の創作スタンスを語ってもらった。

――BIKKEさんは音を聴いて言葉を考えるとおっしゃいましたが、仕上がった音に対して何かアプローチすることはありますか。

BIKKE:まずないですね。ただ、僕が入れる段階で、僕以外が完パケしている、ということもないので、僕が入って他が変わるところもあります。トラックのデモが出た時点で大正解なわけもないので、特別ここをどうこう、というやり取りはしません。それに僕がどう反応するか次第です。

川辺:まとめ方を相談したりはしますけどね。

――今作はBIKKEさんの声に非常に緊迫感がありましたが、川辺さんとしてはどんな方針で音を仕上げたのでしょうか。

川辺:最終的に心にどう響くか、ということでチョイスしていった結果、そうなったということだと思います。BIKKEが優しく歌っているテイクもあるんですけれど、結局こうなりましたね。

――透明感のあるサウンドは、前作のパワフルで混沌としたサウンドとは少し趣が違いますね。

川辺:ちょっとした反動もあって、前のアルバムと違う方向にいったんじゃないでしょうか。すっきりさせようと思ってやっていたわけではないんですけれど、最終的にそうなったんでしょうね。

――元々プロになろうと思ってやっていたわけではなかった、というお話がありましたが、デビューして間もない頃と今とでは、音楽に向かうモチベーションや姿勢は変わりましたか?

渡辺:僕はより真面目になりました。周りと喋っていると「意外とみんな真面目にやってるんだなぁ」と思います。4、5年くらい前から、それを「すげえなぁ」と思うようになって(笑)。後は、ソロでやるようになってから、「歌詞書くの大変だなぁ」と気がついたし。だから前はちゃんとやってなかったのかもしれない(笑)。そういった意味では、方向性も含めて、より自分と向き合ってやっているような気がします。トラックの雰囲気や詩の世界を邪魔しないことがSOUL SETでの自分の立ち位置で、力が抜けているくらいがちょうどいいのかな、と思います。

――BIKKEさんは?

BIKKE:今は前より酷いです(笑)。僕の役割は書いて声を録ることで、それ以外のことは二人に投げちゃっているので。音楽的な知識はまったくなくて、ただ歌詞書いてボソボソ言ってるだけなんで、特に音楽に向き合うこともないです。締め切りを守る、とかそういうことは考えてますけど(笑)。

川辺:締め切りは確かに守るようになった(笑)。

渡辺:BIKKEは意識しすぎると逆によくないような気がしますから、これでいいんだと思います。

BIKKE:昔は見え方、見られ方を僕なりに意識していたのかもしれないです。今はそういうものがないから、どう見られてもいい。これがやりたい、というよりは、これしかできない。わかんないですもん。頼まれて誰かのために作詞するなら話は違うかもしれないけど。そういう話ないから(笑)。

渡辺:ある意味で僕らも歌詞に関しては丸投げだしね。

BIKKE:自分の感情も生きているものだから、時としてひとつじゃないけれど、「いい歌」と言われるものにあんまり反応しなくなってきました。「心に染みる」とかがよくわからない。いっとき「好き」とか言っていたものも、自分に嘘ついていたかもしれない。よくわからない、はちゃめちゃなことを言っているけど、何だか響きがいい、というものの方が僕はいいと思います。それは内容がどう、とかではなく、その方が面白いし楽しい。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる