再始動するキング・クリムゾン 驚異の初期サウンドは、日本の歌謡界も虜にした

 今回はさきごろ第8期ラインナップでの再始動(なんとメル・コリンズが復帰)を発表したプログレッシブ・ロックの王者キング・クリムゾンをご紹介しましょう。

 クリムゾンの中心人物は1946年英国生まれのロバート・フリップ(g)。彼がピーター(b)とマイケル(ds)のジャイルズ兄弟と共に1967年に結成したのがジャイルズ、ジャイルズ&フリップです。ビートルズ的なノヴェルティ・ソングと室内楽的チェンバー・ポップが合体したような音楽性で、アルバム1枚を発表しましたが、大きな反響は得られず。

Giles, Giles & Fripp "Thursday Morning"(1968)

  ここにフリップの幼なじみのグレッグ・レイク(vo,b)と、イアン・マクドナルド(sax,kbd)、ピート・シンフィールド(作詞、照明)などが加わってクリムゾンの母体ができあがります。1968年末にはフリップ、レイク、マクドナルド、シンフィールド、マイケルという第一期メンバーが揃い、翌年初頭からロンドンの喫茶店の地下でリハーサルと曲作りを開始。バンド名はマクドナルドとシンフィールドが作った曲名から「キング・クリムゾン」と名付けられました。リハーサルは公開でおこなわれ、やがて彼らの驚異的なサウンドは噂に噂を呼び、同年7月にはローリング・ストーンズのハイド・パーク・フリー・コンサートに出演。この時のプレイが決定的な評判となって、10月にリリースされたファースト・アルバム『クリムゾン・キングの宮殿』は、まったく無名の新人ながらチャート5位という大ヒットとなって、ロック界に革命を起こします。今から45年も前の作品とは思えない驚異的な完成度ですね。同時代のロック/ポップを聴けば、これがいかに革新的で先鋭的な作品だったか理解できるはずです。

King Crimson - 21st Century Schizoid Man (1969)

 また、この曲などは後のポスト・ロックやエレクトロニカなどに通じるものがあります。

King Crimson - Moonchild (1969)

 そして前出のバンド名のもととなった名曲がこれ。未だにこれを超えるものは現れていない、と言い切ってもいい、プログレッシブ・ロックの金字塔です。初期クリムゾンの構築美が理想的に結実しています。

King Crimson / In The Court Of The Crimson King (1969)

 ところが作曲面や演奏面などでフリップ以上にバンドのリーダーシップをとっていたといってもいいイアン・マクドナルドがツアーの連続に嫌気が差して、アルバム1枚きりでバンドを脱退。ついでマイケル・ジャイルズやグレッグ・レイクも相次いで脱退。これ以降クリムゾンは頻繁なメンバー・チェンジを繰り返し、次第にフリップのワンマン・グループと化していきます。無名時代のエルトン・ジョンやブライアン・フェリー(後にロクシー・ミュージック)が、この時期のクリムゾンのオーディションを受けて落ちたのは有名な話です。

 クリムゾンを脱退したマクドナルドとジャイルズはマクドナルド&ジャイルズを、レイクは、エマーソン・レイク&パーマーを結成、それぞれ高い評価を得ます。

McDonald and Giles "Birdman" (Part 1)(1971)

McDonald and Giles『Mcdonald & Giles』(EMI Europe Generic)収録

EMERSON LAKE AND PALMER / Knife Edge(Live)1970

EMERSON LAKE AND PALMER『Essential Emerson Lake & Palmer』(Shout Factory)収録

 一方クリムゾンはなかなかファースト・アルバムを超える作品を作れず苦しみますが、ボズ・バレル(vo,b)、メル・コリンズ(sax)等を迎えた1971年リリースの4枚目『アイランズ』で、ジャズ~クラシック色濃い静謐で美しい新境地を開拓。

King Crimson - Prelude: Song of the Gulls ~ Islands (1971)

King Crimson『アイランズ~40周年記念エディション』(WHDエンタテインメント)収録

 しかし本作を最後にシンフィールドが脱退、フリップと他メンバーの対立も激化してバンドはついに解散してしまいます。

 1972年になってイエスのビル・ブラフォード(ds)と、ファミリーのジョン・ウエットン(vo,b)、さらにデヴィッド・クロス(vln)、鬼才ジェイミー・ミューア(perc)を加えてクリムゾンは再結成。1973年リリースの4作目『太陽と戦慄』では、ジャズ・ロック的なハードなインプロヴィゼーションとトライバルなリズム・アレンジが融合したまったく新しいサウンドを作り出し、第二の黄金期に突入していきます。

King Crimson / Lark's Tongues in Aspic (Live) (1973)

King Crimson『太陽と戦慄~40周年記念エディション』(WHDエンタテインメント)収録

 ミューアが脱退し4人編成になった『暗黒の世界』(1974)では、ハードなインプロヴィゼーション中心の緊張感あふれる内容になりましたが、こんな美しい曲も。

King Crimson - The Night Watch - (Live) (1974)

King Crimson『暗黒の世界~40周年記念エディション』(WHDエンタテインメント)収録

 そして1974年11月リリースの7作目『レッド』を最後にフリップは突如バンド解散を宣言。

 フリップ=ウエットン=ブラフォードのパワー・トリオ演奏によるこの曲はヘヴィ・メタルの先駆けと言われるストイックな演奏が衝撃的です。

King Crimson - Red (1974)

King Crimson『レッド~40周年記念エディション』(WHDエンタテインメント)収録

 そしてアルバム最後に収められた「星もない聖なる暗黒」と歌われるこの曲は、クリムゾンの終了であり、プログレッシブ・ロックの終わりであり、同時にロックの終焉をも宣した黙示録的名曲として、いまなお聴き継がれる大傑作です。

King Crimson - Starless (Live - Melody French TV )- (1974)

King Crimson『レッド~40周年記念エディション』(WHDエンタテインメント)収録

 クリムゾンは7年のブランクののち1981年に再結成、以降たびたび活動休止と再結成を繰り返すことになりますが、80年代以降の彼らについては稿を改めましょう。

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