『パンツァードラグーン』発売30周年 ――いと貴き翼持つ者たちの系譜

『パンツァードラグーン』音楽の軌跡

『パンツァードラグーン:リメイク』

Panzer Dragoon Remake The Definitive Soundtrack
Panzer Dragoon Remake The Definitive Soundtrack

 2018年12月、『進化のひみつ』(Sparkle)シリーズなどで知られるポーランドのForever Entertainmentが、セガよりライセンスを受けて『パンツァードラグーン』シリーズのリメイク版のパブリッシングを手がけることを発表。MegaPixel Studioが開発を手がけた『パンツァードラグーン:リメイク』が2020年4月にNintendo Switch用ソフトとして配信された(PC版は同年9月に配信)。リメイク版ではゲームのオプション設定で東祥高のオリジナルヴァージョンと小林早織によるアレンジバージョンのどちらかを選択してゲームプレイが可能となっており、四半世紀を経て新旧のシリーズコンポーザーの音楽的共演が実現。小林の楽曲を収録した『Panzer Dragoon: Remake The Definitive Soundtrack』は2021年1月29日にはBrave Wave Productionsから配信リリースされた。

 小林がアレンジにあたり、まず考えたのは「東が創りあげたオリジナルサウンドをどのような方向に持っていくか」ということであった。原曲と向き合い、考え抜いたすえ、小林は東のフレーズを十全に活かしつつも『パンツァードラグーン ツヴァイ』『AZEL -パンツァードラグーン RPG-』の空気感に近づけるという、シリーズ三部作を俯瞰する方向性を選択。シリーズ音楽の先駆者であり、先駆的なシンセサイザー・アーティストであった東に最大限の敬意をこめ、現代の機材を駆使したシンフォニックサウンドのもとに「新訳」した。『AZEL』のコンポーザーとして三部作を見届け、『オルタ』の音楽を紡いだ小林のシリーズに対する想いと、たゆまぬ挑戦の姿勢も受け止めたい。オリジナル版では野趣あふれるデジタルサウンドとストレートなイメージで貫かれていたボステーマ「急変」「対決」「再起動」「旗艦」が、リメイク版で重厚なオーケストレーションや流麗なシンセサイザーソロを伴ってダイナミックな起伏に富んだ楽曲に形態変化を遂げたことは特筆すべきポイントだ。「もっといろんなバージョンがあってもいい」「解釈の違うものが出てくることが面白い」と語り、自ら精力的にいくつものアレンジバージョンを生み出していった東の言葉が改めて思い返される。志ある限り、《いと貴き翼持つ者》たちは大空を飛び続ける。

《参照文献・動画》

■クリエイターズインタビュー 023:澤田朋伯
【ソニックチャンネル】
http://sonic.sega.jp/SonicChannelOld/creators/023/003.html

■A Conversation with Saori Kobayashi
【Brave Wave Productions|2014年4月20日】
https://bravewave.net/blog/2014/a-conversation-with-saori-kobayashi

■Saori Kobayashi Interview: Cultivating an Ethtronic Sound
http://www.vgmonline.net/saorikobayashiinterview/
【VGMO -Video Game Music Online-|2015年9月7日】

■Saori Kobayashi and Yumiko Takahashi Interview: AKANE and MAGfest
【VGMO -Video Game Music Online-|2017年2月13日】
http://www.vgmonline.net/kobayashitakahashiinterview/

■After 20 years, Panzer Dragoon Saga’s composer finally made the soundtrack she always wanted
【THE VERGE|2018年1月24日】
https://www.theverge.com/2018/1/24/16925534/panzer-dragoon-saga-soundtrack-composer-interview

■ドラマティックシューティング 『パンツァードラグーン』 シリーズ4作品のサウンドトラックが配信販売開始!
【PR TIMES|2018年2月14日】
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002081.000005397.html

■『AZEL』アレンジアルバムは生で一発録りの曲も! 『Resurrection: AZEL-パンツァードラグーンRPG- 20th Anniversary Arrangement』インタビュー
https://www.famitsu.com/news/201803/09153247.html
【ファミ通.com|2018年3月9日】

■Panzer Dragoon Saga: An oral history
【Polygon|2018年4月30日】
https://www.polygon.com/2018/4/30/17286042/panzer-dragoon-saga-sega-saturn-oral-history

■[GDC 2019]「パンツァードラグーン」シリーズを二木氏と吉田氏が振り返る。むちゃな挑戦がシリーズを支えた
【4Gamer.net|2019年3月21日】
https://www.4gamer.net/games/999/G999905/20190321024/

■【GDC 2019】苦難を乗り越え、新しいことに挑戦し続ける「若い力」が「パンツァードラグーン」を生んだ! 二木氏&吉田氏が「パンツァードラグーン」シリーズの開発を振り返る
https://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1175862.html
【GAME Watch|2019年3月21日】

■「無謀な挑戦がゲームという文化を成長させてきたんだと思っています」――『パンツァードラグーン』シリーズの開発秘話が語られた、二木幸生氏&吉田謙太郎氏セッションリポート【GDC 2019】
https://www.famitsu.com/news/201903/22173596.html
【ファミ通.com|2019年3月22日】

■Classic Game Postmortem: Panzer Dragoon, Panzer Dragoon Zwei, and Panzer Dragoon Saga
【GDC|2019年4月16日】
https://www.youtube.com/watch?v=gMOMsEmde-w

■Panzer Dragoon Saga with Saori Kobayashi – PA122
【Pixelated Audio|2020年2月4日】
https://www.youtube.com/watch?v=TzxUTmQ0ME4

■セガ岩出 敬氏・特別追悼企画~故人の足跡を辿りながら日本のゲームグラフィックスをふり返る(1)
【CGWORLD.JP|2020年4月3日】
https://cgworld.jp/feature/202004-iwade01.html

■セガ岩出 敬氏・特別追悼企画~故人の足跡を辿りながら日本のゲームグラフィックスをふり返る(2)
【CGWORLD.JP|2020年4月9日】
https://cgworld.jp/feature/202004-iwade02.html

■セガ岩出 敬氏・特別追悼企画~故人の足跡を辿りながら日本のゲームグラフィックスをふり返る(3)
【CGWORLD.jp|2020年4月13日】
https://cgworld.jp/feature/202004-iwade03.html

■セガ、「パンツァードラグーン」シリーズ4作のサントラをSpotify等の音楽ストリーミングで配信開始
【GAME Watch|2020年4月17日】
https://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1247833.html

■[Exclusive] Interview of Saori Kobayashi, composer of Panzer Dragoon: Remake rearranged soundtrack
【PANZER DRAGOON WORLD|2020年5月3日】
https://youtu.be/-T3cZPys7L0

 

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