好発進も賛否両論の『The First Descendant』 成功のカギは“アメとムチ”のバランス改善に?

『The First Descendant』 成功のカギは?

 7月2日、『The First Descendant』がリリースとなった。

 現状では、プレイヤー数、売上ともに大きな数字を獲得し、好スタートを切ったと考えられる同タイトル。この勢いを持続し、ジャンルの歴史に名を刻むことができるか。長所/短所を踏まえ、長期的な成功への分岐点を考察する。

NEXONが放つ新作ルートシューター『The First Descendant』

The First Descendant - Official Trailer

 『The First Descendant』は、『テイルズウィーバー』や『メイプルストーリー』、『アラド戦記』などのタイトルで知られるゲーム企業・NEXONが開発/発売を手掛ける三人称視点型のルートシューターだ。舞台となるのは、計り知れない力を持つ資源・アイアンハートに恵まれた人類の暮らす地・イングリス。プレイヤーは、略奪のために同大陸へとやってきたエイリアン・バルガスに対抗するべく、特別な能力を持つ選ばれた存在「継承者(DESCENDANT)」となり、人類と侵略者の最後の戦いへと身を投じていく。

 ゲーム性の中心となっているのは、貴重なアイテムの獲得を目指してクエストなどを周回する「トレジャーハンティング」の要素。特に日本国内では「ハックアンドスラッシュ」の一部分として広く認知されている同要素が、『The First Descendant』のプレイに中毒性をもたらしている。個性豊かなキャラクターたちのなかからお気に入りの1人を選び、彼らを自由なコンセプトで成長させていける点も大きな特徴。最大4人によるマルチプレイ、さらにはプラットフォーム間をまたぐクロスプレイにも対応している。

 基本プレイ無料・アイテム課金型の料金モデルとなっており、PlayStation 5、PlayStation 4、Xbox Series X|S、Xbox One、PC(Steam、NVIDIA GeForce NOW)に対応する。リリース翌日の7月3日には、Steamプラットフォームにおける売上ランキングにおいて、日本国内/グローバルともに首位を獲得した。

欠点は“アメとムチ”のバランスの悪さに

 このように商業的には上々のスタートを切った『The First Descendant』だが、その一方で、プレイヤーの反応はさまざまとなっている。Steam版に集まった3万5,000件のユーザーレビュー(7月7日時点)のうち、好評に分類されるのは1万8,000件ほど。残りの約1万7,000件は同タイトルに低評価を下している。内容で目立つのは「(特にクエストや素材集めが)おなじ作業の繰り返しで飽きる」「過去にリリースされたルートシューターの人気作品と似た部分が多く、このタイトルでないといけない理由が見当たらない」といった意見。総括すると、「マンネリ感」が評価をわける重要なキーワードとなっている現状がある。

 先にも述べたとおり、『The First Descendant』は、貴重なアイテムの獲得を目指してクエストの周回を重ねていくゲーム性を特徴としている。低評価の理由として紹介したひとつ目の意見は、こうした同タイトルの性質を指してのものだろう。これはルートシューター、さらにはハックアンドスラッシュの根幹を支える要素でもあるため、『Warframe』や『Destiny 2』『The Division 2』『Diablo IV』といった人気作にも当てはまるものだ。つまり、『The First Descendant』は、“ジャンルの基本”に忠実につくられたタイトルと考えることもできる。

 その前提を踏まえたうえで、上述の理由で評価が下がっている背景には、“アメとムチ”のバランスの悪さがあるのではないか。作業的なプレイを強いられる度合いの割に得られる報酬が見合っていない(と考えられている)ことが、独自のマンネリ感へとつながってしまっている可能性がある。実際、1%の確率でドロップするアイテムを目当てに10分前後かかるクエストを何度も周回しなければならないケースが珍しくない。くわえて、運良く目当てのアイテムを手に入れられたとしても、明確に強くなっている実感が得にくいという実情もある。開始直後からこうした状況はたびたび発生する。

 ゲーム自体はよくできているだけに、あとわずかでも相応の対価を得られている感覚があれば、より多くのプレイヤーを満足させることができたはずだ。言わずもがなだが、このサイクルは多くのハックアンドスラッシュ、ルートシューターにも共通するものである。出来に関しては少なくとも人気作の比較対象となっている一方で、それらが高評価を獲得し、『The First Descendant』が賛否両論となっている理由には、“対価”の部分の不親切さがあるような気がしてならない。

The First Descendant│Meet Bunny│Character Gameplay Trailer

 反面で、『The First Descendant』には他の作品にはない魅力も存在する。それが登場するキャラクターたちのビジュアルの良さだ。現状、同タイトルの課金要素は主に、バトルパスやスキンの購入、キャラクターの開放などで構成されているが、後ろふたつが商業的な好調に大きく寄与しているように感じている。この点は上述の人気作にも勝るストロングポイントであるはずだ。ゲーム内に登場するプレイアブル以外のキャラクターに対し、「この人を操作してみたい」と感じさせられるケースも少なくない。今後、そうした登場人物がプレイアブルとして実装されることがあれば、より『The First Descendant』の強みは際立っていくだろう。ここには、同タイトルが他の人気作とは異なり、MO/MMOの成分を多く含むことも良い影響を与えていそうだ。ともすると、欠点にも挙げられやすい既製のキャラクターを操作するという『The First Descendant』のシステムだが、そのマイナスを補って余りあるほどの恩恵をインプレッションにもたらしていると考えることもできるのではないだろうか。

 新規IPとしては上々のスタートを切った『The First Descendant』。7月7日夜には、Steam版の同時接続者数がリリース以降最高となる26万強を記録した。この勢いを持続できるかは、現在のユーザーの関心をつなぎとめられるかにかかっていると言えるだろう。短所を補いつつ、長所を伸ばすアップデートに期待したい。

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