米大統領専用車「ビースト」は走る最強のテクノロジー? 歴史なども含めて解説
訪米した岸田文雄内閣総理大臣が「X」で、アメリカ合衆国のジョー・バイデン大統領とのツーショットが投稿され話題になった。その写真が撮影された場所は、なんと大統領専用車の中。合衆国大統領が他国の首脳を同乗させるのは異例中の異例という。両国の親密さをアピールした舞台となったのは装甲車並の装備を誇るリムジン『ビースト』。最強生物の愛称を持つクルマは“走る最強のテクノロジー”だった?
地上最強の愛称を持つクルマ
ビーストは合衆国大統領専用車の愛称。本来、大統領が乗るものにはコードネームの「one(ワン、以下カタカナ表記)」が付くのが通常だ。このワンで最も有名なのは大統領専用機、エアフォース・ワンだろう。そしてヘリコプターならマリーン・ワン、クルマなら専用車のブランド名を使ってキャデラック・ワンと呼ばれる。『ビースト』は愛称として大統領警護を担う、シークレットサービスが呼称したことがきっかけとされ、装甲車並の仕様を持つリムジンが「最強の野獣」を思わせることからつけられたもの。そしてそのクルマは「リンカーン」ブランドと「キャデラック」ブランドで交互に納入していた時期もあったようだが、第42代クリントン大統領以降は後者で落ち着いているようだ。
最強たる由縁のスペック
ビーストの詳しい仕様はトップシークレットだが、バラク・オバマ大統領が来日時に使用し、今は退役したそのクルマの情報が確認されている。
まずクルマのベースはGM製の様々なモデルだという。スタイリングは風格を出すよう高級車ブランドのキャデラック風だが、基本ベースはトラックベースの頑強なボディとされている。ボディはあらゆる襲撃を想定し、銃だけでなく爆発物に対しても耐性を持つ頑強さを持っており、たとえばドアの厚さは約8インチ(20cm)、その窓の厚さは5インチ(12.7cm)だ。これだけの装甲を持つ豪華なリムジンの車重は約8tと超ヘビー級。タイヤはパンクしても走行できるランフラット仕様。加えてタイヤのゴムがなくなった場合にもホイールだけでも100km以上の走行が可能だという。また、ヘッドライトが破壊されても搭載された暗視カメラを使って走行できる。
一方、車内には催眠弾、ショットガンなどの銃器を搭載。またバイオテロへの備えも考慮され、車内は完全密閉。運転席だけ窓が数cm開くが、他の窓は採光程度らしい。完全密閉される車内の空気は循環清浄しているという。(ちなみに、アメリカのテスラ社がリリースするモデルにはHEPAフィルトレーションシステムが用意され、生物兵器防衛モードを備えている。民間人が普通に買えるクルマでこの手の装備を謳うのはテスラが最初となる)。
また、ビーストには大統領が負傷した場合にも備え、輸血パックも数セットあり医療対応も可能という。頑強なボディ、室内システム、そして迎撃用の装備とあらゆる面で大統領を防護する車として仕上げられている。