クリスマスを彩ったレア社の名作 「ドンキーコング」「バンジョーとカズーイ」を振り返る

クリスマスを彩ったレア社の名作を振り返る

 2023年も残すところあと10日ほど。時間の感覚は人によって異なるはずだが、年を取るにつれ、「もう一年経つの?」と日々の忙しさに驚かされるばかりだ。

 本稿を執筆している12月18日は、ちょうどクリスマスの1週間前にあたる。そしてこの時期になると、毎年必ず思い出すゲームソフトがある。それが『バンジョーとカズーイの大冒険』だ。

『バンジョーとカズーイの大冒険』 3つのポイント

 『バンジョーとカズーイの大冒険』は、1998年12月6日にNINTENDO64向けに発売された3Dアクションゲーム。イギリスのゲームデベロッパーであり、現在はマイクロソフトの子会社となっている“レア社”が開発を手掛けた。どこか間の抜けた熊の主人公「バンジョー」と相棒のよく喋る鳥「カズーイ」が活躍する作品だが、筆者は本作を1998年のクリスマスシーズンにプレゼントとしてもらい、年末から年始にかけ、苦労しながらも楽しんで攻略した思い出がある。

 そして翌年のクリスマスには、『ドンキーコング64』がなにげなく枕元に置かれており、朝目覚めた瞬間にとても驚いたことを覚えている。こちらもレア社によって生み出された3Dアクションゲームだが、当時の筆者はそんなことをまったく知らず、ただ純粋に「面白くて難しいゲーム」と思いながら遊んでいた。

 上記の実体験がよほど印象深いのか、筆者の脳内には「クリスマスと言えばレア社のアクションゲーム」というイメージが強烈に刷り込まれている。しかし、主観的な意見だけではなく、クリスマスシーズンに発売されたレア社の作品は客観的に見ても充実していることをご存知だろうか。

 今回は“レア社の黄金期”と呼ばれることも多い1990年代後半から2000年初頭に注目し、11月下旬〜12月にかけて発売された「ドンキーコング」シリーズと「バンジョーとカズーイの大冒険」シリーズを振り返る。

※各ソフトの発売日は国内版に準拠。

「ドンキーコング」シリーズ

 まずは国内でレア社の知名度を飛躍的に向上させた「ドンキーコング」シリーズから見てみよう。1994年11月26日に発売された『スーパードンキーコング』は、アーケードゲームとして誕生した初代『ドンキーコング』の作風を大幅にアップデート。良質な2Dアクションゲームであると同時に、グラフィックやサウンド面でも好評を獲得したスーパーファミコン後期の名作だ。

 最近ではお笑いコンビ「カミナリ」が本作の音楽を手がけた作曲家のデビッド・ワイズ氏にインタビューする動画が話題になったため、再び本作を目にした方も多いのではないだろうか。『スーパードンキーコング』はその後、約3年にわたって全3作品が誕生。2Dアクションという大枠はそのままに、新規キャラクターの実装や舞台の刷新を踏まえて順当に支持を集めた。

『スーパードンキーコング』プレイ画面(任天堂公式サイト)
『スーパードンキーコング』プレイ画面(任天堂公式サイト)

 『スーパードンキーコング』発売から5年後の12月10日、NINTENDO64にて『ドンキーコング64』がリリースされた。キングクルールの魔の手からDKアイランドを救うべく、ドンキーコングと仲間たちが立ち上がる……というストーリーで、プラットフォームの移行に伴ってジャンルも変化。箱庭フィールドを自由に移動し、さまざまなギミックや敵キャラを乗り越えながら「ゴールデンバナナ」を集める3Dアクションになった。

『ドンキーコング64』プレイ画面(任天堂公式サイト)
『ドンキーコング64』プレイ画面(任天堂公式サイト)

 本作はドンキー以外にもディディーコングやタイニーコングなど、性能の異なる複数キャラクターを使い分ける楽しみ方が生まれた。ただし全編にわたって難易度が高く、ゲームクリアに必要な収集物をあとになって必死にかき集めた思い出がある(DKアーケードとJETPACは半ばトラウマ)。とはいえ、そうして苦労した部分を含めても、本作がNINTENDO64の3Dアクションゲームとして名作の部類に入るのは間違いないだろう。

「バンジョーとカズーイの大冒険」シリーズ

 冒頭で筆者が「思い出の一本」として述べた『バンジョーとカズーイの大冒険』は、1998年12月6日に市場へ送りだされた。主役を務めるのはバンジョー&カズーイで、魔女「グランチルダ」にさらわれたバンジョーの妹を助けるため、各ワールドに散らばった「ジグソー」を拾い集めるという内容だ。“目標物を回収しながらステージを巡る”という本質は『ドンキーコング64』と共通しつつも、バンジョー&カズーイが互いを補うようにアクションを担っているのが本作の独自要素として挙げられる。

『バンジョーとカズーイの大冒険』プレイ画面(Xbox公式サイト)
『バンジョーとカズーイの大冒険』プレイ画面(Xbox公式サイト)

 『バンジョーとカズーイの大冒険』では、地面を歩く・高所に上る・水中を泳ぐなどの基本アクションはバンジョーが担当し、ダッシュ移動・遠距離攻撃・飛行などを背中に乗ったカズーイが行う。

 2000年11月27日には、続編『バンジョーとカズーイの大冒険2』も登場。こちらは“前作キャラクターの死亡シーン”から幕が上がり、序盤で訪れる村ではグランチルダによって生気を吸われた味方キャラが襲いかかってきたりと、冒頭からショッキングなシーンが頻発。また舞台となるステージも「廃墟のように寂れた遊園地」「環境破壊に繋がる毒ガス工場」など、気分が重くなるような雰囲気がそれなりに見受けられる。

 しかし作品の完成度は高く、『バンジョーとカズーイの大冒険』から主役コンビのアクション数が増えただけでなく、複数人で遊べるマルチプレイモードも追加。従来のように腰を据えて挑むアクションゲームでありながらも、対戦ゲームとして友人や家族と肩を並べて楽しむこともできた。

『バンジョーとカズーイの大冒険2』プレイ画面(Xbox公式サイト)
『バンジョーとカズーイの大冒険2』プレイ画面(Xbox公式サイト)

 『バンジョーとカズーイの大冒険2』は全体的に高難易度、なおかつ完全クリアにはそれなりの覚悟を要するが、NINTENDO64の時代に隆盛した箱庭3Dアクションの最終形といっても過言ではない。そうした点も含め、歯ごたえ抜群な「バンジョーとカズーイの大冒険」シリーズは、レア社の黄金期に燦然と輝く3Dアクションゲームだった。

 総じて見るに、「バンジョーとカズーイの大冒険」シリーズは1998年から2000年にかけて発売された2作品の印象が強いかもしれない。それだけに「バンジョーとカズーイの大冒険はNINTENDO64でしか見たことがない」と思う方が多いだろう。だが、シリーズ自体は続いており、Xbox360用ソフト『バンジョーとカズーイの大冒険 : ガレージ大作戦』や、携帯アプリでのみ配信された『バンジョーとカズーイの大冒険〜グランティの復讐』、そして日本未発売に終わったレースゲーム『Banjo Pilot』など、プラットフォームをまたいでタイトルが作られ続けた人気シリーズだったと言える。

有志によるプレイ動画「Banjo Pilot Full Gameplay Walkthrough (Longplay)」

 今回ご紹介したのは「ドンキーコング」シリーズと「バンジョーとカズーイの大冒険」のみだが、『ゴールデンアイ 007』や『ディディーコングレーシング』など、レア社の名作はまだまだ存在する。現在では家庭用ゲーム機向けにダウンロード版が配信されている場合もあるので、興味がある方はぜひ年末年始の機会にプレイしていただきたい。

©Nintendo / Rare. Game by Rare

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