プロらしい操作性を手に入れたマイクロフォーサーズ パナソニックの最新ミラーレス一眼『G9PROII』徹底レビュー

パナソニックの最新ミラーレス一眼を徹底レビュー

 2023年10月27日、パナソニックから最新のミラーレス一眼カメラ『G9PROII(DC-G9M2)』が発売される。公式予約サイトでの価格は、ボディ単体が23万670円、レンズキットが30万3930円となっている。

 このカメラは2018年1月に登場した『G9 PRO』の後継機にあたるが、約5年半という発売スパンはデジカメ界隈からするとかなりの長期間だ。デジカメにおいてのトレンドが移り変わるにも充分な期間だろう。

 しかしそれは、すべてが進化したと言っても良い。公式サイトには『G9 PRO』と『G9PROII』の比較表が掲載されているが、ほぼすべての項目で『G9PROII』の方が充実している。技術の進化を思えばさもありなん。

 現代のデジカメ趨勢において『G9PROII』の立ち位置は複雑だ。その理由は採用しているマイクロフォーサーズ規格にあるのだが、そうした事情も踏まえつつ本機のレビューをお届けしよう。なお、レンズには『LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S.』を使用している。

ボディサイズはフルサイズと同等

 前提として、『G9PROII』が採用しているマイクロフォーサーズ(MFT)について解説しておきたい。

 MFTはオリンパス(現OMデジタルソリューションズ)とパナソニックが共同開発した規格で、4/3型(約17.3×約13.0mm)の撮像素子を採用しているのが特徴。撮像素子の大きさはデジカメによって異なり、フルサイズ(約36×約24mm)や、APS-C(約23.6×15.8mm)、1型(約13.2×8.8mm)などがある。

 つまり、MFTのセンサーはAPS-Cより小さく1型より大きい、ということだ。「撮像素子は大きければ良いのか?」はデジカメにおいて議論の尽きないテーマで、フルサイズなら柔らかなボケが楽しめる一方、小型センサーはカメラ本体の小型化や被写界深度の深さが利点だ。センサーサイズによって一長一短がある。

  実際に『G9PROII』のセンサーの大きさを見てみよう。写真左が『G9PROII』で、右側がAPS-Cセンサー搭載のデジカメ『X-T4』だ。レンズをマウントする銀色の輪の大きさも違えば、その中央にあるセンサーの大きさも異なっている。だが、ボディサイズが極端に異なるかと言われればそうでもない。

 これが『G9PROII』の特徴のひとつだ。本機のボディはパナソニックのフルサイズミラーレス一眼『S5II』のボディをベースとしている。小型軽量を得意とするMFTセンサーを採用しているにも関わらず、ボディはフルサイズカメラと同じサイズ感なのだ。

 フルサイズのボディを活用することで手に入れたメリットのひとつが、この深いグリップだ。小型軽量を得意とするカメラはホールド感を犠牲にしがちなのだが、本機はフルサイズと同等のガッシリしたグリップを手に入れた。事実、極めてホールド感は良い。

 一方でレンズには軽量なMFTを使うため、レンズ部分には重量感を感じにくい。重いレンズはフロントヘビーになり疲労を蓄積していくが、ここはMFTのメリットが活きている。小型軽量を持ち味とするMFTのレンズ資産を安定感のあるボディで使う。これができるのは、現段階では『G9PROII』だけだろう。

 フルサイズであるSシリーズゆずりの3連ボタンも継承している(G9PROも同様の配置)。WB、ISO、露出ボタンと、よく使うものを同じ位置にまとめた設計だ。赤いボタンは動画撮影ボタンで、スチールの撮影中でもスピーディに動作の撮影に移行できる。シャッターは前ダイヤルも兼ねており、ここはSシリーズから受け継いだ要素だ。

 背面の設計も『S5II』とほぼ同様。ジョイスティックは8方向に移動し、ピント操作もスムーズ。また、『G9PROII』はGシリーズにおいて初めて像面位相差AFを搭載したカメラでもある。それに伴い被写体認識の精度も向上し、動物の瞳AF対応、車やバイクの認識など、現代らしい賢いカメラになったといえる。測距点は像面位相差AFが779点、コントラストAFが315点。

解像度不安を払拭する「ハイレゾモード」

 『G9PROII』の有効解像度は、2521万画素。フルサイズ級のボディに入っているセンサーとしてはやや少なく感じる数字だが、そんな時は「ハイレゾモード」が役に立つ。これはセンサーを移動させて8回連続撮影し、合成することで約1億画素の画像を作り出す機能だ。前モデルから受け継いでいる機能だが、新たに手持ちでのハイレゾモード撮影が可能となった。

 とはいえ、ハイレゾモードが活躍するのは三脚での撮影時であることに間違いはない。どれくらい画質に変化があるのか、上の植物の写真を例にして紹介しよう。

 左がハイレゾモードで撮影したもの、右が通常撮影したものだ。それぞれ等倍拡大すると寄れる距離が大きく違うことがわかる。解像度は左が11,552×8,672px(容量28.8MB)で、右が5,776×4336px(容量8.6MB)となる。

 通常撮影した右側の写真を200%に拡大すればハイレゾモードと同等の寄り具合になるが、エッジや背景のボケ部分に粗が見えてくる。解像度が必要なシーンでは、このハイレゾモードが活躍するだろう。

意外と軽い? 見た目以上に取り出しやすいカメラ

 ではいよいよ『G9PROII』を持って外に飛び出そう。自転車に乗って川沿いを進んでいると、日に当たる彼岸花の列が見えた。カバンから『G9PROII』をサッと取り出して撮影してみたが、一連の動作のなんとスムーズなことか。『G9PROII』はサイズ感のわりに取り回やすい、ハンドリングに優れたカメラだったのだ。

  ちなみに『G9PROII』の重量はバッテリー込みで約658g。キットレンズ『LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S.』の重量が約320gなので、合計で約978gとなる。

 ハンドリングがしやすいし、フレーミングもスムーズ。さらにAFも俊敏で、心が動いた情景に対してカメラが素早く反応してくれる感覚がある。使っている身としては「軽やかなカメラだな」と感じているが、グリップなどの見た目は重厚感があり、そのギャップもユニーク。

 MFTゆえボケ表現には弱いが、そこはレンズとの兼ね合いになってくるだろう。この写真は60mmのF4で撮影したが、フルサイズ換算だと120mmのF8程度になる。120mmの望遠フルサイズ、あるいは80mmのAPS-Cを持ち歩く労力と比較すれば、フルサイズ換算で24-120mmのズームレンジをこの軽量さで持ち歩けるのはずるいとすら思ってしまう。

 今回使ったレンズ『LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S.』は、マクロ表現にも強い。テレ端でヤマホトトギスを撮影したが、最短20cmまで寄ることもできる。

 テーブルフォトもお手の物。今までの写真はフォトスタイル「スタンダード」で撮影したが、こちらの写真は彩度を強める「VIVID」で撮影した。紅茶の赤が良く出ている。

 街撮りでの使いやすさは十二分に実感できた。ただし、電源を入れてから起動するまでに5秒ほどの時間が必要で、これは『GH6』にも見られたものだ。スリープモードからの復帰は素早いため(1秒程度)、シャッターチャンスを逃したくないなら電源を落とさず使うと良いだろう。

動物園でAFの精度をチェック

 次はMFTが得意とする動物撮影を試していこう。『G9PROII』の像面位相差AFや強化された動物AF性能は、動物や野鳥撮影にもうってつけだろう。

 AFモードから動物瞳AFをオンにして、近づいてきたクロウチワキジを撮影。何度か手前の柵にピントが引っ張られることもあったが、しっかりと瞳にピントを合わせてくれた。

 これはカラスバトを撮影している最中だが、瞳AFが認識されると緑のピントが取りの瞳に張り付く。手前に障害物がある場合は百発百中とはいかないが、何度か試せばうまくいった。

 アフリカタテガミヤマアラシにレンズを向けると、四角いフォーカスアイコンが表示された。動物を見つけると自動で被写体を認識してくれているようだ。動物園では常に動き回っている動物もいるが、この精度で認識してくれるならAF-Cでの撮影も捗る。

 また、連射機能も心強かった。メカシャッター時は最大14コマ、電子シャッターなら最大75コマまで撮影できる。さらにシャッターを押す前のシーンを撮影するプリ連写は最大113コマまで遡って記録が可能なので、これまでなら逃していたシャッターチャンスの可能性もも高まる。プリ連写時は本体が高温になるため、頻発は禁物。

 動物や鳥へのAFは、動物園でもしっかりと活用できることがわかった。野鳥撮影はMFTの得意とするところだが、像面位相差AFをはじめAF性能の向上によってさらに使いやすくなるはずだ。

強力な手ブレ補正を活かすべく、手持ちで花火撮影に挑戦

  最後は『G9PROII』だけで花火大会の撮影に行ってみた。花火の撮影は三脚の使用が望ましいが、最大8段のボディ内手ぶれ補正(B.I.S.)でどこまでいけるのかをチェックする。開発者インタビューによると、ジャイロセンサーの変更や信号処理の改善が高い手ブレ補正性能を実現したとのこと。

 こちらの写真はシャッタースピード1/2秒で撮影した。地面に座って膝の上に肘を固定した状態で撮影しているが、目視でわかるブレは無い。

 列車が通過するタイミングで撮影。シャッタースピードは1/6秒で、この程度のシャッターチャンスであれば立ち姿勢でも撮影できそうだ。60mmまでズームしているが、トリミングで水平を調整すれば良いカットになるのでは?

 

 同じくシャッタースピード1/6で撮影。カメラ一台でフラっと立ち寄った花火大会だったが、これくらい撮影できれば大満足だ。低感度で5秒程度の露光時間が欲しい場合は、さすがに手持ちでは厳しいだろう。それでも2秒くらいなら頑張れそうだ。

幅広い表現力+ハンドリングに優れたプロ設計

  MFTならではの幅広いズームレンジに加えて、パナソニックがSシリーズで培った本格仕様のインターフェース。それらを融合させたのが、今回の『G9PROII』だと感じた。まさしく、MFTのフラッグシップを名乗るに相応しいモデルと言えるだろう。

 また、今回の記事では触れなかったが、動画撮影のためのカメラとしても『G9PROII』は活躍できる。

 『S5II』より搭載された機能「リアルタイムLUT」は本機にも継承されており、シネマライクな撮影を気軽に楽しめる。ただし冷却ファンは非搭載なため、長時間の撮影には不向き。動画機として評価の高いGHシリーズとの差別化ともとれるが、スチールも動画も両方楽しみたい人にとっては極めて使いやすいバランスになっている。

 現在、MFTのカメラは供給が少ないのが事実だ。そんななかで登場した『G9PROII』の存在意義は大きく、次代のMFTを牽引していくモデルになるだろう。

◎参考情報

https://panasonic.jp/dc/products/g_series/g9m2.html

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