K-POP×バーチャルは一大ムーブメントに? 「MAVE:」はaespaの成功を踏まえ“現実と仮想世界の垣根”を超えられるか

「MAVE:」は“現実と仮想世界の垣根”を超えられるか

 1月25日、新たなK-POPガールズグループ「MAVE:」がデビューを果たした。「make new wave」という言葉に由来したグループ名を持ち、マティ、ジェナ、タイラ、シウの4名から構成される同グループは、早速、デビュー作となる『PANDORA’S BOX』をリリース。人気音楽番組の『Show Music Core』に出演するなど精力的に活動を行っている。

完全なバーチャル上の存在 新時代の到来を予感させるグループ

 MAVE:の最大の特徴は、このグループが実際の世界には存在しないということだろう。前述した4人のメンバーはいずれもバーチャル上の存在であり、実体として目の前に現れることはない。いわゆるバーチャル・グループである。

 もしかしたら、K-POPファンの中には「またか」と思う人もいるかもしれない。近年のバーチャル・カルチャーとK-POPカルチャーのクロスオーバーの動きは更に加速しており、この一年でもバーチャルメンバーのセジンを含むボーイズ・グループ「SUPERKIND」のデビュー、バーチャル・インフルエンサーとして活躍するROZYのアーティスト・デビュー、史上初のバーチャル・アイドルとしてのデビューを懸けたサバイバル番組である『少女リバース』の放送開始など、トピックに事欠かない状況が続いている。ある種のブームのような状態といっても過言ではないだろう。

SUPERKIND (슈퍼카인드) 'WATCH OUT' Official MV
[Official Lyric] ROZY (로지) - Who Am I
소녀 리버스 - 약속해(I Promise) Full Ver. | 소녀 리버스

 このような状況の背景にあるのは、バーチャル・カルチャーを支える技術の進化と、その注目度の高さだ。恐らくいまのK-POPシーンにおいて最も成功を収めているバーチャル・グループは、昨年のコーチェラ・フェスティバルにも出演を果たしたaespaだが(とはいえ、同グループの人気を支えているのは間違いなくリアルでの活動であり、バーチャル面での活動が成功しているかどうかについては、まだ断定できる状態ではないが)、同グループがバーチャルでの活動を強くアピールしているのは、所属するSM ENTERTAINMENTがメタバース事業に本腰を入れているからに他ならない。

 前述したトピックに改めて目を向けてみると、SUPERKINDの所属事務所であるDeep Studioは人工知能やデジタルアバターの開発を手掛けるスタートアップ企業であり、ROZYを生み出したSidus Studio Xもメタバース事業の一つとしてバーチャル・ヒューマンの開発に力を入れている。『少女リバース』の企画・制作を手掛けるカカオエンターテインメントもやはりメタバース事業に力を入れるべく、2021年に韓国の大手ゲーム会社であるネットマーブルの子会社であるメタバース・エンターテイメントと提携し、メタバースコンテンツの共同開発を実施している。さまざまな企業がメタバース領域への進出を画策しており、その技術デモのような役割をバーチャル・アーティストが担っているというわけだ。

 実は、MAVE:は前述のメタバース・エンターテイメントに所属しており、同社にとって初のガールズ・グループとして位置付けられている。親会社にあたるネットマーブルは現在、ブロックチェーンを活用したゲームや自社によるメタバース開発に力を入れており、今後はそれらの作品にもMAVE:を登場させることが予想されるだろう。普段は技術にそれほど関心のあるわけではない一般層に、MAVE:をきっかけにして自社のゲームやメタバースに興味を持ってもらう。そんな流れが描かれているのではないだろうか。

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