帰還を果たしたK/DAと、新たなアプローチでシーンに挑むaespa 現実と虚構を繋ぐバーチャルK-POPが示す未来

帰還を果たしたK/DAと、新たなアプローチでシーンに挑むaespa 現実と虚構を繋ぐバーチャルK-POPが示す未来

 2020年10月28日。この日はK/DAの2年ぶりとなる新たなミュージックビデオ「MORE feat. Madison Beer, (G)I-DLE, Lexie Liu, Jaira Burns, Seraphine」と、NCTやEXOらを擁する韓国の大手芸能事務所であるSM ENTERTAINMENTによる新たなK-POPグループ、aespaの紹介動画「MY, KARINA」が揃って公開されるという印象深い一日だった。これは単なる偶然だが、どこか繋がるものを感じたという人も少なくないだろう。どちらも、”メンバーが仮想空間で活躍するバーチャル・アイドル”という大きな共通点を持っていたのだから。そして、その意味ではaespaにとってK/DAは偉大な先人といえるかもしれない。

K/DA – “MORE feat. Madison Beer, (G)I-DLE, Lexie Liu, Jaira Burns, Seraphine” ミュージック・ビデオ
aespa – “MY, KARINA”

仮想世界で活動する2つのK-POPグループ、K/DAとaespa

 アーリ、アカリ、イブリン、カイ=サの4名で構成されるK/DAは、世界中で驚異的な人気を誇るオンライン・ゲーム『League of Legends』から生まれたバーチャルK-POPグループである。2018年秋にデビュー曲となる”POP/STARS”を発表し、同作のプレイヤーを中心に爆発的な人気を獲得。その後、約2年の時を経て活動を再開し、”MORE”を含む全5曲入りのEP『ALL OUT』をデジタル・リリースしたばかりだ。ちなみに、”中の人”については、米国のシンガーであるMadison BeerとJaira Burns、そしてK-POPグループの(G)I-dleのメンバーであるミヨンとソヨンを中心に、様々な人々がその時々に応じて変わりながら担当している(楽曲のフィーチャリング欄に記載されている)。 

 一方で、カリナ、ジゼル、ウィンター、ニンニンの4名で構成されるaespaは、前述の通りデビューしたばかりの新人グループである。だが、その最大の特徴は映像にもある通り、”現実世界のメンバーに対応した、仮想世界のメンバー(アバター)が存在する”というコンセプトだろう。この映像では、現実世界のカリナと仮想世界の”ae-カリナ”という人物が揃ってインタビューに答えており、二人が仲の良い存在であることをアピールしている。このコンセプトについて、K/DAの成功を追いかけるように見える人も少なくないだろうし、最初は筆者もその一人だった。だが、両者の活動形式や狙いは、よく見てみると明らかに異なっている。その最大の違いは両者の「仮想世界との繋がり方」にある。

「ゲームが持つ世界観やキャラクターが拡張する体験」とK-POPを繋いだK/DA

 前述の通り、K/DAの始まりは『League of Legends』(以下、『LoL』)にある。そもそも、グループのメンバーは結成以前より同作のチャンピオン(プレイアブル・キャラクターの通称)としてゲーム内で活躍していた。そして、2018年秋にそのメンバー用のスキン(チャンピオンの見た目を変えるためのアイテム)として発表されたのが『K/DAシリーズ』であり、このスキンを装着することで各チャンピオンをポップ・スターとしての姿へ変えることができるようになったのである。このように複数のチャンピオンを同一のグループやチームとして登場させるスキンのシリーズは、それ以前から同作において実施されてきた取り組みであり、その都度、シリーズ独自の物語や映像作品が制作されている。例えば、前年の2017年にはチャンピオンによるPentalillというヘヴィ・メタルバンドが誕生しており、ミュージック・ビデオも制作されている。

Pentalill – Mortal Reminder

 2009年にサービスを開始し、現在もトップクラスの世界的人気を誇る『LoL』は140体以上という膨大な数のチャンピオンを抱えている。そして、その全員に物語が存在し、スキンが追加されると同時に新たな物語が追加され、映像作品やコミックも活用しながら壮大な世界が構築されている。そして、K/DAは他のスキンシリーズなどと同様に、よりこの世界を拡張し、その魅力を高めるために(そしてスキンを売るために)創り上げられたグループだった。

 しかし、K/DAの成功はそれまでの取り組みとは一線を画すものだった。既存のプレイヤーから好意的に受け入れられるだけではなく、既に巻き起こりつつあった世界的なK-POPブームのタイミングと重なり、K/DAは「ゲーム内グループ」以上に「クールなバーチャルK-POPアイドル」として世間から認知されたのである。ゲームの世界観を拡張したスタイリッシュなビジュアルと、極めて完成度の高い楽曲・ビデオは普段ゲームに触れない人にとっても十分に魅力的なものであり、デビュー曲となる”POP/STARS”は現時点でYouTube再生回数4億回超えという驚異的なヒットを叩き出したのだ。

K/DA – POP/STARS

 だが、あくまで「ゲーム内ユニット」であるK/DAの活動は『LoL』の世界大会などでゲスト・アクトとして出演する程度に留まり、楽曲も”POP/STAR”以降、新曲が生まれることはなかった。前述の通り、そもそもK/DAは膨大なチャンピオンの中から、4名をピックアップしてスキンシリーズの一つとして展開したものであり、実際のポップ・グループのように精力的に活動することを想定していない。

 だが、運営元のRiot Gamesには多くの復活を求める声が寄せられた。また、K/DAをきっかけに新たに『LoL』を始める人も少なくなかったという(参考:https://www.espn.com/esports/story/_/id/29747458/riot-games-announces-k-da-comeback)。そして、遂に2年の休止期間を経て、K/DAが復活したのである。「MORE」では10月に登場した152体目のチャンピオンであるセラフィーンを新たなメンバーとして迎えており、中国系のルーツを持つ彼女の影響によって、リリックは英語・韓国語・中国語の3言語が含まれているのも大きな特徴だ。この背景には、以前から人気のあった中国におけるファンベースの拡大と、K/DA自体を『クールなアジア発のグループ』として発信したいという意図があるだろう。中国の微博とのインタビューに答えたり、米国を中心に人気を誇る音楽メディア、Geniusの名物企画「Verified」に登場するなど、プロモーションの面においても、K/DAを「ゲーム内ユニット」ではなく一つのポップ・グループとして売り出そうとしているように感じることができる。

K/DA – “MORE” Official Lyrics & Meaning | Verified (Genius)

 K/DAの元々の魅力は、『League of Legends』のチャンピオンの中からポップ・グループが生まれて実際に活動するという、ゲームの仮想世界が拡張されていく、ユニバース的な楽しさにあった。だが、ゲームの持つ魅力とK-POPカルチャーが繋がったことで、K/DAはそれ自体がクールな存在となり、既存の枠を遥かに超えた人気を獲得していったのである。

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