テクノロジーで進化する「ホラー文化」 10~20代の間で再燃する理由を株式会社闇・頓花聖太郎&ImCyan-アイムシアン-に聞く

テクノロジーで進化する「ホラー文化」

 近年「ホラー」というジャンルが、10〜20代の若者たちのあいだで新たな盛り上がりを見せている。ネット上にアップされた自作のホラーゲームをYouTubeやニコニコ動画のゲーム実況配信者たちが実況し、動画を見た視聴者たちがそのゲームをプレイする、というかたちでヒットコンテンツが生み出されるようになってきているからだ。映画化もされた『青鬼』などがその最たる例だろう。

 そうした盛り上がりを背景に、「ホラー」をテーマにしたユーモラスな企業PRサイトを数多く手掛けてネットユーザーから注目を集めているのが「株式会社闇」だ。闇は、2022年2月に初となるオンラインホラーイベント『心霊配信の夜』を開催したところ、たちまち大人気となり4月3日までの追加公演が決定した。

 今回はその株式会社闇の代表取締役CCO・頓花聖太郎(とんか・せいたろう)と、2012年から『日常侵食リアルホラーつぐのひ』シリーズで人気を博しているImCyan-アイムシアン-という、インターネット発の二人の新世代ホラークリエイターに、大人にはなかなか見えないホラー文化の盛り上がりについて語ってもらった。

■株式会社闇
2015年会社設立。設立時から「怖ろしい企業サイトを持つ会社」として様々なメディアに取り上げられ話題となる。お化け屋敷制作、ホラーVRの制作・イベント化、ホラーゲーム制作、ホラーを使った商品プロモーションが主な事業領域。ネット上で話題を起こすことを得意としており、株式会社闇が手掛けた制作物のYoutube実況の再生数は累計4500万回を超える。アプリとビーコンを使用し、広い遊園地で追いかけてくるお化けから逃げまわるイベントやプロジェクションや立体音響を使用した観覧車の中で体験するお化け屋敷体験、ホラーVRを体験後に実際にお化け屋敷を味わうイベントなどホラーに「テクノロジー」をかけあわせたイベントに定評がある。

■頓花聖太郎
1981年兵庫県生まれ。グラフィックデザイナー・WEBデザイナーを経て、ホラー好きが高じて、ホラー専門の制作会社、株式会社闇を2015年に設立。

■ImCyan-アイムシアン-
ゲーム作家。学生時代から個人でのゲーム制作を始め、2005年には『Lost Maria -名もなき花-』がテックウィンコンテストパークで金賞を受賞。
2012年12月発表のホラーゲーム「日常侵食リアルホラー つぐのひ」が、単純ながらも斬新なスタイルで大きく話題を呼んだ。以降、「つぐのひ」シリーズとして、様々なスタイルのゲームを制作。日本独特の湿っぽい“じめじめとした”空間を、独自の美学に基づく恐怖表現へと変換するスタイルが高い評価を受けてきた。
近年ではゴシックホラーや、VTuberとのコラボなどにも積極的に挑戦しており、独特の世界観がさらに進化。Steamで過去作を収録したパッケージが発売され、ゲーム実況でも高い人気を博するなど、ますます注目を集めている。

――株式会社闇の手掛けたオンラインイベント『心霊配信の夜』は追加公演も決まり、大好評になっているそうですね。

頓花聖太郎(以下、頓花):SNSでもかなりの量の感想の投稿をいただいてるんですが、95%ぐらいは絶賛してくれていて、イベント後のアンケートも5段階評価で平均が4.3というところで、非常に良い評価をいただいています。結果としてやりたかったことはストーリー面でもシステム面でもかなり実装できたので、手応えとしては非常に大きなものがあります。あともうひとつ大きいのが、ロケーションに使っている旧家が……。

――シアンさんの実家、という(笑)。

頓花:公演の最後にスタッフロールで「ロケーション協力:ImCyan-アイムシアン-」って出てくるので、そこでコメントも「シアンさんの家なんだ!」って盛り上がりが毎度起きてるんですね。

ImCyan-アイムシアン-(以下、シアン):嬉しいです(笑)。

私も参加したのですが、役者さんが出てきてドラマ仕立てになっていて、システムと連動しているのが面白かったですね。劇中のキャラクターが視聴者に訴えかけてきて、それに視聴者が応対するというコミュニケーションが新しすぎるなと。

「闇」とは何をしている会社なのか?

――株式会社闇は「すごく怖いホームページを作る会社」というイメージが強いですけど、実は今回のようにサイト制作以外のことも色々やっているんですよね?

頓花:はい。実は「ホラーにまつわることだったら何でもやる」という雑食の会社でして。ほかにもミュージックビデオを作ったり、子ども向けのホラーを作ったりもしてますね。

シアン:私もホームページ制作で有名なイメージだったので、今回そういうことを知って驚きました。

私が株式会社闇を知ったのは、2015年ぐらいからですね。ホームページを、もう動画一本ぶんくらいの面白さで作り上げていて、ホラーの演出の手数が詰まっているじゃないですか。特に印象的なのは「幽霊専用の脱毛サロン」ですね。

頓花:ありがとうございます。バーグハンバーグバーグさんと一緒に作ったサイトですね。

シアン:私は当時から、やっぱりデザインの良さ、アイデアの盛り込み方にすごく感銘を受けてまして。ギャグになってしまうモチーフでも、ホラーの文脈にしっかり落とし込んで作っていらっしゃるのがすごいなと思っていました。

頓花:でも、中心になるのはホラーとテクノロジーなんです。

たとえばチームラボさんは、テクノロジーを美術の文脈やミュージアムに持っていくことで面白いエンターテインメントやアートを作られていますよね。そういうふうにテクノロジーにはライブ演出とかも含めてできることがたくさんあるんです。そこで僕らは「テックとホラー」に注目してやっていきたいな、と思っているんです。

――チームラボの名前が挙がるのは意外でした! でも逆に「テクノロジーが発達するとホラーはなくなっていくんじゃないか?」みたいなことを言われたりもしますよね。

頓花:逆に「テクノロジーが生み出すホラー」がめちゃくちゃあると思っていて、そっちに張ってる側の人間かもしれません。

――それは未知の体験を演出できる、という意味でしょうか。

頓花:そうですね。僕たちがプロデュースしたイベントだと、閉園後の遊園地で来場者にタブレットを持ってもらったものがあります。遊園地内にたくさんの鬼=敵キャラクターを配置して、その鬼たちはビーコンを持っているんです。で、ビーコンとタブレットが通信して鬼に見つかったらどんどん自分にダメージが来る。

『闇遊園地でかくれんぼ』より
『闇遊園地でかくれんぼ』より

 そうして鬼たちとかくれんぼをしながら遊園地を進んで、色んなミッションをクリアしていくインタラクティブなゲーム性のあるイベントをやりました。そういうことを、テックとホラーという形で提案していきたいなと。

 ただ、自分たちがオリジナルでBtoCの企画を行うのは、今回が初めてなんですよ。これまでは、ずっとBtoBだったので。

――じゃあ、自社製作第一弾で、いきなりの大成功という感じなんですね。

頓花:いやもう、本当によかったですよ。

つぐのひの「天然」な魅力

 

『日常侵食リアルホラーつぐのひ 第二話』
『日常侵食リアルホラーつぐのひ 第二話』より

――少し戻るのですが……先ほどの話で面白かったのが、アイムシアンの名前を見て驚くファンの人がいたことなんですよ。実は闇にしても「つぐのひ」にしても、昔ながらのホラーファンには知られてないところがあるじゃないですか。

頓花:僕からすると、「つぐのひ」なんて何か出すたびに実況動画がバズってるイメージですけどね。

――やっぱり双方とも、インターネット以降の新世代ホラー作家という感じがあると思うんです。今日の対談は、そういうあたりも聞いてみたいなと思いまして。

頓花:僕たちはシステムから企画まで一式やるケースが多いんですけど、シアンさんもそうですよね。

 シアン:RPGツクールというツールを使ってはいるけど、そうですね。あと頓花さんと同じでもともとデザイナーでもあったので、ビジュアル表現にはこだわりがあります。

『つぐのひ -霊刻の踏切り-』
『つぐのひ -霊刻の踏切り-』より

頓花:「つぐのひ」はリアルの3Dの世界を、デフォルメの2Dの世界に持っていく画像の加工の仕方、揺れや音の作り方がすごいなと思います。

 あと、ホラー演出に関しては『つぐのひ』シリーズって「こんな演出したら絶対喜ぶやろな」というサービス精神で作られているのをすごく感じるんです。「怨念が溜まるとしたらこういうとこやな」って思います(笑)。ほかのクリエイターとのコラボ企画にも絶対に手を抜かないじゃないですか。

シアン:そうですね。そこは、手を抜かずにしっかり詰め込もうとは思ってます。

『アイの亡き声』
話題となったコラボ『アイの亡き声』

頓花:今回のイベントで僕たちは「どう実況されるか」というところを考えたりはしたんです。シアンさんの作品は実況がすごく盛り上がりますけど、あれってどういうふうに考えて作っていらっしゃるんですか?

シアン:実は私、なるべく実況を意識しないようにはしているんですよ。もちろん『つぐのひ』は実況から広めてくださったと思っているんですが、そこはむしろ「毎回驚き、新鮮さがあるように」ということを要にして作るようにしていますね。

――なるほど、闇が企画と制作の力で魅せていく会社なら、シアンさんは「天然」のホラー作家という感じなんですね(笑)。



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