テクノロジーで進化する「ホラー文化」 10~20代の間で再燃する理由を株式会社闇・頓花聖太郎&ImCyan-アイムシアン-に聞く

テクノロジーで進化する「ホラー文化」

旧家に宿る恐怖と怨念――ロケ地となったシアンさんの実家とは?

頓花:ただね、そういった文化をいま表現しようとしたときに、ロケーションってすごく大事やなって思うんです。新しいマンションでやっても、なかなかそういった怖さを出せない。今回の『心霊配信の夜』は、シアンさんの家があったから初めてできた表現だなと思うんです。

――イベントでも「怖い!」とか「やだこの家!」って言われてましたもんね。闇はなぜシアンさんの家に着目したんでしょう?(笑)

頓花:Twitterでシアンさんが「思い出深い実家を取り壊すことになった」ということで写真とともに投稿されていたんですが、ちょうどその時期、僕らはロケーション探しに躍起になっていたんです。ホラーのロケーションって探すのが結構大変で、断られたりとかするんですよね。

――「うちの家をホラーの撮影に使うのか!」と(笑)。

頓花:はい。そんなときにシアンさんの投稿を見て、「もうこれしかない!」「ダメ元で言ってみよう!」ということになったんです。でも一方で、シアンさんに嫌われてしまったら非常につらいなと……。

――確かに、「闇からこんな失礼な話が来た」ってTwitterで晒されたらダメージが大きそうです。

頓花:「人の家を何だと思ってるんだ!」と思わせてしまったらどうしようと。でも意を決して社員が問い合わせをしてくれて、そしたら「何か前向きな返信をいただいたんですけど……」となりまして。

――実際、問い合わせを受けてシアンさんはどう思ったんですか?

シアン:いやー、私はもともと闇さんをホラークリエイターとしてすごい尊敬していたので「これはもう全面的に協力したい!」「なんとしてでも親を説得しなければ!」と、その瞬間に決意しました。

――そうですか(笑)。

頓花:本当にありがたかったです。そのあとトントン拍子に話が進んで、シアンさんから家の資料をいただいていたんですが、「ロケハンいらんやん!?」っていうぐらいめちゃくちゃキレイでわかりやすい、すでに写真からして怖い資料だったんです。「この味噌を作る土蔵、怖いな」とか、そこから脚本へのインスピレーションがどんどん湧いてきました。

――シアンさんは『つぐのひ』シリーズの『昭和からの呼び声』でも旧家の怖さをモチーフにされていましたよね。子どものころからご自身の実家が怖いという意識はあったんでしょうか。

シアン:正直、気づいたのは大人になってからですね。子どものころは祖母もまだ生きてましたし、古い家ではあるんですけど、農具を置いたり、豆を炊いたり、味噌を作ったりと全然使っていたんですよ。

――当時は人気(ひとけ)があったんですね。

シアン:でも2019年に祖母が亡くなったあと、私も祖母との思い出があるので写真を撮っておこうと思って2年前ぐらいに行ってみたら、しっかり怖くなっていたんです。

頓花:本当の廃墟って、人がいなくなってかなり長いので実はあんまり怖くないですよね。人が住まなくなってウン10年ぐらいの感じが一番怖い。シアンさんのご実家はホコリの溜まり方から、段ボールの置かれ方、壁のテクスチャまでも含めて、小道具には出せない時間の積み重ねを感じます。本当にホラー製作者からするとよだれが垂れっぱなしのロケーションで……失礼なこと言ってたら本当に申し訳ないんですけど。

シアン:いえ、私も全く同じことを思います。階段が急だったりとか、隙間風の音とか、そういう部分がすごく大きいですよね。

ロケーション地となったImCyan-アイムシアン-の実家
ロケーション地となったImCyan-アイムシアン-の実家

頓花:本当に、現場の空気感が素晴らしかったんですよ。役者さんたちが怖がっているのは演技だけではなくて半分本気で怖かったんじゃないかな。

 でも一方で、ロケハンのときにはお母様がお食事を出してくださって、お茶もいただいて、リンゴもいただきました。本来なら塩を撒かれてもおかしくないのに(笑)。シアンさんのお家の豚汁がたまらなくおいしくて、ロケバスの中でも「うまかったなー!」って。

シアン:お味噌、自家製で作ってるんですよ。

頓花:そのお味噌がね、東京では絶対食えんっていう美味しさで。「シアン家のサービス精神すごー!」と思いました。なんかもう「第二の実家できちゃったかな」ぐらいに温かくおもてなしをいただいて、感激しっぱなしでした。

シアン:私もホラーゲームを作ってるので、両親もそういう理解があったとは思います。「また来て欲しい」って言ってましたので、是非いらしてください。

――自分の家が完全にホラー扱いされているのに、シアン家は家族全員で歓待してくれたんですね。いい話だ(笑)。

今後のホラー業界でやりたいこと

――お二人は、「ここからこういうことをしていきたい」というのはありますか?

シアン:いままでに無い新しいものを思いついているわけではないのですが、たとえば架空のキャラクターのSNSアカウントを作って運用してみたい、というのはありますね。

――もしかしたら、闇と一緒にやったらいいかもしれないですね。頓花さんはどうでしょうか?

頓花:映画でもゲームでもないその間を、オンラインで体感できるイベントを作ってみたいですね。将来的には、VRでホラーイベントを作ってみたい。テクノロジーとホラーの未来は本当にどこまでも、何でもできるな、って思ってます。

――ありがとうございます。最後に今回の『心霊配信の夜』イベントについて一言ずつお願いします!

頓花:じゃあ私から。今回はシアンさんの家を舞台にさせてもらって、まったく新しいホラーイベントを作れたかなと思います。

株式会社闇は「インターネット、オンラインだからこそ面白い」ということにこだわって作っていますので、昔のインターネットが好きな人も、最近のちょっと殺伐としたインターネットに距離感を感じている人も、もう一回、「オンラインならではのエンターテインメント」を感じていただけるものになっていると思うので、ぜひ体験していただけると嬉しいです

シアン:えっと、私の実家を舞台として使っていただいております。大正時代に建てられた家で、長年私の家族が生まれそして死んでいった家のその怨念をぜひ、画面から感じていただければと思っております。

――自分の先祖を怨霊扱い……さすがですね(笑)。今日はありがとうございました!

■関連リンク
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