『ドラゴンクエストX』好きの建築家が、開発者に「アストルティア」の都市と建築について本気で考察をぶつけてみた(第4部)

アストルティアの都市と建築(第4部)

 ドラゴンクエストXの冒険者としてアストルティアの世界を8年近く冒険し続けきた建築家の水谷元氏。長らくプレイしてきたユーザー&建築家の視点から開発に携わったスクウェア・エニックスの担当者に直撃する4部作のインタビュー企画。3部ではそこにいる種族の生き様も踏まえた上での「空間」作りについての話を聞いた。天使とギリシャ神殿という、仮想と現実が交差する話はまさに建築家と開発者ならではの展開となった。最終回となる第4部ではバージョン更新により、これまでは「アンビルド」だった、都市建築や景観作りが可能となった裏側について詳しく伺っていく。

第4回:バージョン7、最新技術の表現力と違和感のない既視感のつくり方

 聞き手は建築家の水谷元、語り手はスクウェア・エニックスの第二開発事業本部ディヴィジョン3 デザイナーの丹下俊也氏、第二開発事業本部ディヴィジョン3 プランナーの小川裕二郎氏。『ドラゴンクエストX』のゲーム開発の裏側が分かる、直撃インタビューをお届けする。

小川:『アマラーク王国』はお城もありますし、バージョン7の中では街として一番しっかりしています。

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丹下:ゴシックの上に移住した中東の人たちが飾り付けたというイメージです。折衷的なイメージです。

水谷:スペインとかはそうですよね。取り戻した後に増築したヨーロッパとアラブの折衷。

丹下:半鐘の形はイスラム圏にある半鐘を参考にしています。

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水谷:これは一応、街灯ですよね。この辺のモチーフもイスラムっぽい感じ。特にここが難しかったとか、議論したポイントはありますか。

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丹下:モデルの構造が複雑で3Dモデルだとサードパーソン(第三者視点)の性質がより強くなります。外や上から見た時と内部の構造が無理なくマップになっているというのを目指しました。ノウハウの蓄積でイメージが整合するようにしました。

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水谷:ここはちゃんと土台が基礎の上にのっていますね。

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丹下:スタッフに建物をしっかり見ろと今は言えるようになりました。

水谷:樹木の木肌や岩肌の質感とかも良くなりましたね。バージョン1から見てくるとよく分かる。屋根は板葺きですね。立派な木材が使われていますね、やはり混構造はヨーロッパでもよく見られます。

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丹下:担当者は違うのですが、スタッフ同士でどう置けば自然なのか議論します。この塗りの壁も下地のレンガの形が見えてリアリティがある表現を目指しています。町の樹木や植栽の影とかもちゃんと出しています。まあ、自然すぎてみんな気づいてないかもしれない。

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水谷:むしろ、それでいいんですよね。ただゲームが高解像度化していく中で、“ドラゴンクエストらしさ”とどうバランスをどう取るかが難しいですね。

丹下:あまりイメージが変わらないというところがドラゴンクエストが成功している秘訣かもしれませんね。

水谷:自然な形でシナリオに没頭させるという意識もありますよね。

丹下:バージョン1だったら、絨毯がピンと張って真っ直ぐではなく、たわみを入れたりとか。

水谷:歩いているときの音でわかるけど、たわみがないとペイントなのかなと思われてしまう。

丹下:そう、ペイントなのかなと思われてしまう。よりグラフィックでわかるようにしています。

水谷:ここの装飾は華美だけど構成はロマネスクっぽい。マップを見るとドラゴンクエストのお城って感じですよね。中央に階段が配置されていて、その周りに塔が配置されてある。

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©SQUARE ENIX

水谷:ドラゴンクエストでお城のテラスといえばロマンがあるような会話が行われるイメージです。やっぱり「シナリオにあるから作らないとね」というのはあるわけですよね?

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丹下:そうですね。本当は街を見下ろせるテラスにしたかったけど、どうしても制約があって。

水谷:当時の風景を回想するとか、町に思いを馳せるようなシーンにできる。装飾のモチーフとかはどういうふうに作られているんですか?

丹下:植物などのイメージをパターンで作っています。新しいバージョンが始まるごとに模様のサンプルみたいなものを自分たちで作ってゲームに反映しています。

水谷:世界観を作るために言語としてモチーフを設定をしないと統一感が得られない。

丹下:色彩設定も最初の方で決めて、グラフィックの色で強引にまとめちゃうこともあります。

水谷:金はどこから採掘しているのでしょうか?

小川:鉱山がありますね。

水谷:豊富に金が使われているから裕福な感じがしますね。アマラークの周辺にはけっこう資源がありますものね。

丹下:フーラズーラに襲われること以外は特に苦労はないと思います。

小川:アマラーク城は既存の城をそのまま再利用しているのもありますね。

水谷:せっかく飛べるようになったから外から見てみましょう。

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丹下:大陸間をそのまま飛べるようにしたいんですけどね。高いところに上がると見えてはいけないものまで見えちゃう。バージョン6は飛べることを前提に作ったのでごまかしやすい浮島の構造にしていたのですが、大陸だとあそこまで上げちゃうと、どこまでも作らなければならなくなってしまう。初期設定から頑張って、どの高度まで上げられるのか、ぎりぎりまで頑張りました。

水谷:やっぱり海とか外を見て回るとストーリーのヒントがいろいろと。

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