フィンランドの義務教育がわずか二日で遠隔化できた理由は? 現地の小中学校教員に聞いた
桜も咲き日本では新学期が始まる頃合いだが、今も休校する学校が多いようだ。日本からは遠隔授業実施の難しさから義務教育が上手く行われていないというような報道も伝え聞くが、デジタル化の度合いがEU加盟国中1位であるフィンランドではどうだろうか?
この記事では、コロナウイルスを受けて遠隔授業が始まった経緯から、遠隔授業への移行に関して、フィンランドの小学校教員と中学校教員へのインタビューを交えてお伝えしよう。
コロナウイルスで休校となったフィンランド
フィンランドでコロナウイルス関連で最初に影響の出た学校は、首都ヘルシンキのヘルシンキ大学付属学校だろう。3月1日の発表では、生徒がコロナウイルス検査で陽性と判明し、接触の可能性のある同学校の生徒を含む130名が自宅隔離となった。この時点では14日間の自己隔離が予定されており、このような対処を行う学校はここのみだった。校長は学校が遠隔教育と自己学習で必要な教育を提供すると述べている。自宅隔離対象となった子の親はと言えば、仕事に行っても差し支えがないとされており、一部でこれを批判する声もあった。
その後遠隔教育をする学校や大学が増え、西フィンランドのフイッテッイネン市では16日より同市の全ての学校を閉鎖し遠隔教育を始めた。同日3月16日には政府により非常事態宣言が発令されると共に、18日から国内の学校が閉鎖されることが宣言された。
これを受けてフィンランドの全ての学校は閉鎖され、遠隔教育が行われだした。しかし生徒が自宅から授業を受けることができても、その親は仕事を休むことはできない。生徒の年齢が高ければ家の中で自立して学習・生活が可能だろうが、低学年の子供だけを家に残すのは心掛かりだ。
政府は全国の学校閉鎖を発表した当初は、「社会機能に不可欠な分野」(※)の仕事を持つ人に限り、1年生から3年生に当たる児童を持つ場合は、その子供達向けに通常の対面式の授業を行うことが可能としていた。
(※)この「社会機能に不可欠な分野」のリストはフィンランド内閣ウェブサイトで英語でも読むことができる。
ある意味恣意的にも思えるこの区分けは3月20日に撤回され、どのような仕事を持つ人の子であれ1年生から3年生の児童は対面式授業を受けることが可能となった。国家教育委員会によれば対面式の授業を受けることが可能なのはプリスクール児童、1年生から3年生、特別支援教育が必要な児童と、基礎教育の進学に必要な成績が足りず、付加基礎教育が必要な児童と、基礎教育の準備コースに入っている生徒(フィンランド語がまだできない移民の子ども)だ。
ただし、それらの児童への対面式授業は親の都合が付かない場合に「可能」なのであって、基本的にはできる限り遠隔授業を受けさせることが推薦されている。
現場の様子を小学校教員と中学校教員にインタビュー
全校生徒53人のRödskog skolaで教えるロバート・ミエットゥネン(Robert Miettunen)氏と、全校生徒約800人のSaunalahden kouluで教えるアレクシ・ヘイコラ(Aleksi Heikola)氏にメールでインタビューを行った。どちらの学校も3月27日から閉鎖されているウーシマー県内のエスポー市にある。首都ヘルシンキに接しており、フィンランドではヘルシンキ市に次ぎ2番目に大きい市。オフィスビルなども多いが、ヘルシンキのベッドタウンとして機能している地域でもある。
Rödskog skolaではスウェーデン語系フィンランド人達が(※)1年生から4年生までの授業を受ける(5年、6年生の教育は別の学校で受けることとなる)。便宜上本記事中ではRödskog skolaを「小学校」とさせて戴く。ミエットゥネン氏はここで代行教師として3年生を担当する。
※スウェーデン語を母語として登録するフィンランド人。全国民の5%程を占める。
Saunalahden kouluはプレスクールから9年生までの一貫校である。インタビューしたヘイコラ氏は日本で中学1~3年に当たる7年生から9年生を対象に国語であるフィンランド語を教える。彼の教えるのが中学生に当たることから便宜上こちらは本記事では「中学校」とさせて戴く。
どちらの学校でも16日政府の発表を受けて3月18日から遠隔教育を行い始めた。週末を挟んだ僅か2日で小中学校は上手く遠隔化に対応できたのだろうか?