デジタル先進国・フィンランドの公務員は、どのようにしてテレワークを実現したのか?

デジタル先進国・フィンランドの公務員は、どのようにしてテレワークを実現したのか?

 先の記事にも記したように、コロナウイルスの影響を受けて現在フィンランドでは100万人ほどがテレワークをしている。人口550万人のフィンランドでは、労働人口とされる15歳から64歳は2019年で約342万人、内就職人口は約259万人(Tieto&Trendit)であることを考えれば、実に全労働者の三人に一人以上がテレワークをしているということだ。

 現場の声を聞くべく、今回はヘルシンキ市都市環境課に務めるカタリーナ・ヒルヴォネン(Katariina Hirvonen)氏を取材することができた。インタビューは氏が「テレワーク会議でも1度使った」というZoomで最初は試みたが互いに音声が聞こえず(これもその会議の際に起きた問題だったそうだが解決方法は思い出せないとのことで)、最終的にGoogle Hangoutで行われた。

スムーズだったテレワーク化

 彼女の部署は150人ほどが勤務している。政府がテレワークを推薦した3月13日からテレワークを積極的に行いだし、17日にはほぼ皆がテレワーク化に移行できた。

 だが政府がテレワークを推薦するよりも前から、この職場ではテレワークが可能な状態であり、週に1度自宅から仕事をする職員も以前より存在した。

 幸いなことに部署職員たちの業務のほとんどはテレワークで置き換えることのできるものだ。大半の仕事はパソコンを通じて行っていたので問題はない。これまで皆で集まっていたチームのミーティングはMicrosoft Teamsに置き換えられた。Teamsでのミーティングの際には時折通信が乱れて話が聞こえなくなるなどの障害こそあるが、仕事の効率性はさほど下がってはいないようだ(詳しくは後述)。

 唯一テレワーク化できていないのが物理的な手紙の送付業務であり、これは職員がオフィスに赴くほかない。ただフィンランドの郵便局Postiには「iPosti」というデジタルドキュメントを紙の郵便化して送るサービスが存在するため、今後可能であればそちらを利用しようという考えだ。

 一方、職員の中にはCAD(コンピュータを用いた設計)を業務とするため、職場には大きなセカンドスクリーンがあったが、自宅業務するには大きなスクリーンがないことからオフィスで作業するスタッフも居たようだ。

デジタル・デバイドと、試されるIT能力

 ほぼ全ての業務がテレワーク化できたとはいえ、その移行のスムーズさは職員のIT能力によるところが多い。前述したようなZoom会議での問題のような細々とした問題もあれば、業務ができない状態に至るものまで、各職員のIT能力やIT環境の差による影響、すなわちデジタル・デバイド(情報格差)の影響も露見したようだ。

 例えばヒルヴォネン氏と同じ職場の60歳代の職員は、自宅でのパソコンの設定やVPNの設定に苦労したそう。最終的には上司や他の職員の助けで、自宅からテレワークできる環境になり事なきを得たが、もしテレワーク環境を構築できなかったらどうなっていただろうか?

 私の知る他の会社でも、家のWi-Fiルーターが壊れたのでパソコンから仕事ができないし、買い換えようにも店は開いていないという例があったが、もう少しIT知識があればスマートフォンのテザリング機能を利用し、Wi-Fiの親機として使用することでパソコンでインターネットを使える状況を取り戻すことができたかもしれない。

 (先のCAD業務用のスクリーンの話に似るが)物理的なデジタル・デバイドの点では、職場では自分のパソコンの画面の他にセカンドスクリーンがあり皆がほぼ同じ環境で働けていたが、自宅で働く際に会社がスクリーンの貸し出しを許可しなかったという実例も聞く。この状況では自宅に外付けスクリーンを持っておらず、業務用パソコンについている画面のみで働く人と、自宅の外付けスクリーンで業務ができる人では、労働の効率性に差が出てしまう。

 特殊な状況での特殊な例であるのは事実だが、デジタル経済・社会インデックス1位のフィンランドといえども、このような急なテレワーク化は、個々のITに関する能力や環境の格差の存在を浮き彫りにする(更にデジタル・デバイドが浮き彫りになるのは遠隔教育の現場だが、それはまた別の機会にお伝えしよう)。

テレワークの利点

 テレワークの利点は言わずもがな、通勤がないことにあり、ヒルヴォネン氏もプライベートな時間が増えたことを喜んでいる。他の会社で働く私の知り合いからも、「これで朝遅くまで眠れる(笑)」などと、テレワークにより「通勤時間」が無くなったことを喜ぶ声が聞こえた。人によっては通勤をしなくて済むということで、ストレスの軽減にも繋がることだろう。

 また、環境面への影響も忘れるべきではない。たとえば、通勤費を削減できるのも利点だ。交通機関の遅延も通勤中の事故もなく業務を始められるのは、働き手にも雇用主にとっても嬉しい点だ(「事故が最も起こりやすいところは自宅」ともされ、テレワーク中の事故は業務に直接関連したものでないと労災保険が下りないが……)。

 通勤がないことは(モビリティーサービス提供者にとっては災難であろうが)働き手、雇用主、地球環境にとって多くの面でプラスとなるものだろう。

 もう一つヒルヴォネン氏から利点としてあげられたのが、「無駄に話しかけてくる人が居ないため、集中できる」という点だった(しかし後述するがこれはテレワークにおける欠点にも繋がる部分でもある)。誰とも物理的に会う必要が無くなることで、特にオフィスでの業務で一番の問題が職場上の人間関係だという人にとっては大いなる利点となるだろう。

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