カラオケはなぜフィンランドで進化? 仕掛け人に聞く“いつでもどこでもカラオケ”誕生秘話

カラオケ、なぜフィンランドで進化?

 スマホやパソコン、スマートテレビからアクセスする事のできるフィンランド発のカラオケストリーミングサービス『Singa』。その共同創設者でCEOのアッテ・フヤネン氏をインタビューした。

 前回の記事ではフィンランドでのカラオケ文化がどのようなものであるか、そして『Singa』誕生の経緯について一通り説明した。続く今回の記事では、『Singa』について詳しく説明していこう。

歌うための最高のツールを

 世界初のカラオケ世界大会を主催してから10年後の2013年。フヤネン氏とトミ・パユネン氏(Tomi Pajunen)は『Singa』を設立した。

 「歌うという行為」を基盤に置き、どんな環境で、どのような目的でユーザーが歌っても楽しめるように、そしてユーザーにとって容易かつ最良な、「歌うための最高のツール」となることを目指した。それと同時に、進化の見えないカラオケ業界に革新をもたらすサービスでもある。

 「歌うという行為」は、カラオケの根本にある部分。国や文化、カラオケの在り方がどれだけ違っても共通する部分だ。そしてもし『Singa』が歌うためのソリューションとして最良のものになればサービスとしての『Singa』はユニバーサルなものになるはず、との思いもあった。

 特に『Singa』は従来のカラオケのような機械やディスクの販売を伴わず、ソフト部分だけで成り立つため、世界どこでも利用するのは簡単だ。また、カラオケマシンやディスク販売はしていないため、既存のカラオケビジネスを食うことはない。自社で曲を持っているわけではなく、Spotifyと同様に様々なレーベルの楽曲をライセンシングするおかげでライブラリも最大級となっている。

自動化にAIも活用

 『Singa』のシステムでは、ライセンシングした既存のカラオケ曲を入れ込むことで自動的に歌詞や動画部分が作りだされるのだが、これだけでなくAIを活用している点にも注目だ。

 楽曲のイメージ画像や、歌う際に流れる画像はAIが自動的に歌の雰囲気や歌詞を識別して膨大な画像ライブラリの中から選んでいる。この部分が自動化されているため、新しい楽曲が追加される際にも人の手が掛からず、すぐに導入可能。

 またAIのお陰でユーザーが例えば「あるジャンルの特定のスタイルの歌を10曲歌う」などすれば、類似スタイルの曲やユーザーの声に合った曲のリストを提示することもできる。

いつでも、どこでも、どんなデバイスからも

 「カラオケマシン」が不要であり、これがビジネス向けとしても大きな強みがあることは先にも述べたが、個人向けサービスの強みとしては、サービスを使用可能なデバイスがユビキタスである点がある。

 個人向けではAndroidと、iOSのスマートフォン、Android TVとApple TV用にアプリが出ており、手元のスマホで、または自宅テレビの大画面でカラオケが楽しめる。デスクトップ向けブラウザからもサービスにアクセスできるため、パソコンからだって楽しめる(またこのためスマートフォンのブラウザからもデスクトップモードを使えばアプリをインストールせずに使用可能だ)。

 ユーザーは好きなデバイスから『Singa』の自分のアカウントにアクセスして、曲を選択、すると普通のカラオケと同じく音楽と共に歌詞が表示されるので、それに合わせて歌うという仕組み。スマホやパソコンで一人カラオケするもよし、スマートTVでホームパーティーするもよし。酔っ払いにヤジを飛ばされるバーやナイトクラブに行かずとも歌えるし、ビデオカラオケのように収録曲の少なさに嘆くこともない。いつでも、どこでも、どんなデバイスでも、簡単に本格的にカラオケができるのだ。

 個人向けの無料アカウントでは選択できる曲が制限されることに加え、歌えるのは一日3曲までという制限が付いている。月9.99ユーロ(記事執筆時レートで約1200円)のプレミアムアカウントになるとそれらの制限が解除される他、音質もより向上する。

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