『Tシャツが乾くまで』脚本の“荒削り”さを分析 『GTO』との比較でみえるドラマの見せ方

『Tシャツが乾くまで』『GTO』を比較分析

 いわば受動性と能動性、事象が先行するのか行動・感情が先行するのかという、登場人物や物語構造の見せ方の差異が、この両作を比較するとわかりやすいというだけの話であるのかもしれない。とはいえこれは、あくまでも終盤に差し掛かる局面までの話だ。たとえば1998年版の『GTO』も行動・感情先行型で物語が進められていった末に、学校が吸収合併されるという事象の発生が先んじる転換をもってクライマックスに突入することとなった。今回の『GTO』でも、終盤にこうした転換が訪れても何ら不思議なことではない。

 また、それまで事象に対して受け身となる主人公を描いていた『Tシャツ』が、その主人公たる咲子の失踪返しによって第8話でガラリと変容を遂げたことも、終盤の局面に向けた必要な転換である。その結果として、ドラマ前半において事象の原因そのものであった充が能動的に周囲の人々を喫茶店に集め、咲子について調べるくだりは完全に行動・感情が先行している。ただこちらの場合、その後に訪れる新たな事象を引き受けるためのものと考えられる。というのも、基本的に連続ドラマというものは、事象よりも感情的な部分が落としどころになるほうが盛り上がるからである。

『Tシャツが乾くまで』©TBS

 遊川和彦の脚本は、そこに年齢的な古さが垣間見えたとしても(その良し悪しは別として)、非常に安定感があることは言うまでもない。一方で生方美久という脚本家は、上手いか下手かで言えば間違いなく上手いが、まだ少々荒削りな部分がある点は否めない。例えば彼女の出世作である『silent』(TBS系)にしても、第1話での目黒蓮の演技によって一気に視聴者を引き込む完璧に等しい構成の妙味はあったが、その後、回ごとに視点となる登場人物が移り変わっていくスタイルは、どうしても物語全体を薄味にしてしまっていた。かなり興味をそそる題材と導入が冴え渡っているが、肝心の物語運びとその長さが合っていない純文学のような感触だ。

 だが今回の『Tシャツ』に関しては、主眼となる登場人物を動かしたくてたまらない雰囲気が端々から感じられるものの、先述のように咲子から充への移行をドラマの転換のために機能させるなど、巧くエンタテイメントとして踏みとどまっていることがわかる。もちろん第5話の長い長い電話のシーンのように見事な引き込み方は健在。こうした癖のようなものや、坂元裕二的な粋さをねらったような第8話の喫茶店の掛け合いを観ると、この脚本家に適しているのはもっと気楽な会話劇か、あるいはテレビドラマよりも短尺でまとめ上げられた映画作品なのではないかと思えるのだが。

■放送情報
金曜ドラマ『Tシャツが乾くまで』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
U-NEXTにて、各話放送直後より配信
Netflixにて配信中
出演:蒼井優、中島歩、高橋文哉、夏帆、松山ケンイチ、リリー・フランキー、臼田あさ美、齋藤飛鳥、庄司浩平、久保田薫、飛永翼ほか
脚本:生方美久
演出:土井裕泰、塚本連平、小牧桜
音楽:haruka nakamura
主題歌:スピッツ「見知らぬ糸」(Polydor Records)
プロデューサー:千葉行利、宮川晶
製作:ケイファクトリー、TBS
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/tshirt_ga_kawakumade_tbs
公式X(旧Twitter):@tshirts_tbs

『GTO』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:反町隆史、生見愛瑠、工藤阿須加、高橋メアリージュン、市川知宏、夙川アトム、近藤芳正、宇梶剛士、松嶋菜々子、稲垣来泉、及川桃利、大島美優、梶原叶渚、川口和空、北里琉、柴崎楓雅、難波碧空、西浦心乃助、堀口真帆、森本陸斗ほか
原作:藤沢とおる『GTO』(講談社『週刊少年マガジンKC』刊)
脚本:遊川和彦
監督:中島悟、松田健斗
音楽:福廣秀一朗
エグゼクティブプロデューサー:安藤和久
チーフプロデューサー:河西秀幸
プロデューサー:永富康太郎、伊藤茜
制作協力:メディアプルポ
制作著作:カンテレ
©藤沢とおる/講談社/カンテレ
公式X(旧Twitter):https://x.com/GTO2026summer
公式Instagram:https://www.instagram.com/gto2026summer/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@gto2026summer

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