『踊る大捜査線 N.E.W.』『VIVANT』で問われるAI描写 物語が情報の進化に追いつけない?

織田裕二主演の映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』は14年ぶりの新作として好調な滑り出しを見せた一方、公開直後から作品の内容や演出についてさまざまな声が上がっている。なかでも興味深いのが、作中に持ち込まれた「AI」の扱いだ。1997年のスタート以来、現場の刑事たちが足で稼ぐ人間味あふれるドラマを軸としてきた同シリーズだが、劇中の警察組織そのものが変貌を遂げている。

冒頭の誘拐事件の演習シーンでは、ビッグデータを活用したAI捜査が導入されており、人間の行動や事件の発生を事前に予測し、効率的に物事を管理するシステムの構築が進められていた。もともと『踊る大捜査線』のモチーフとして知られる『機動警察パトレイバー』的な先鋭性が窺える設定であり、「AI時代における刑事の存在意義とは何なのか」というテーマを提示しようとした作り手の意図も見える。
しかし、その一方でAIの演出には厳しい目が向けられた。とりわけ、故いかりや長介さんが演じた和久平八郎の音声を再現した「AI和久さん」に対しては、「胸が熱くなった」と懐かしむ声がある一方で、「事件解決にまったく関係ないし、故人を冒涜している」「和久さんのセリフを連打して笑いをとるような、おふざけ演出は非常に不快だった」「安易にAIボイスで喋らせるのは、キャラクターへの倫理観やリスペクトが欠如していると感じる」といった批判も続出している。

劇中における最新テクノロジーの扱いをめぐる波紋は、TBS日曜劇場『VIVANT』第2シーズンにも見受けられる。破格の制作スケールで話題を集める本作だが、“新キャラ”として導入されたAI「ハヤト」の立ち位置に対して疑問の声が噴出。ハヤトがあまりにも迅速かつ正確にデータを解析してしまうため、人間が常人離れした能力や推理、粘り強い捜査で局面を打開していく重みが薄れてしまった感は否めない。
両作に共通して漂うのは、作品が本来持っていた地に足のついた人間ドラマに唐突なテクノロジーが介入したことによる「温度差」だろう。フィクションだからこそ、人間が足を使って情報を集め、試行錯誤の末に真実へ辿り着く過程こそが観る者の感情を揺さぶる。ところが、AIが数秒で正解を出してしまうと、物語の推進力が技術側に奪われ、作品の世界観からキャラクターたちが宙に浮いてしまったかのような“冷め”を生んでしまう。

もし『踊る大捜査線 N.E.W.』や『VIVANT』において、より納得できる描き方があるとすれば、AIを単なる解決手段ではなく、人間に最悪の選択や葛藤を迫る存在として作品の背景に組み込む方法だったのではないか。たとえば、『踊る』であれば、AIが導き出した“非情な最適解”に対し、現場の刑事が数値化できない情や勘で挑む構図を強める手もあったはず。『VIVANT』においても、ハヤトを全知全能のツールにするのではなく、解析データそのものが敵に改ざんされている可能性を盛り込み、データと仲間のどちらを信じるかという疑心暗鬼を生む存在として描けば、スパイサスペンスとしての緊張感は一層増したと考えられる。
劇中におけるAI描写の課題は、技術そのものの問題というよりも、展開をスムーズに進めるための便利な道具に見えてしまう点にある。人間同士のドラマを丁寧に描き切る姿勢こそが、観客の心に届く作品づくりの第一歩であり、画面から“浮遊感”を消し去る唯一の道筋なのかもしれない。
■公開情報
『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』
全国公開中
出演:織田裕二、趣里、白洲迅、佐々木蔵之介、増田貴久、野呂佳代、玉井詩織(ももいろクローバーZ)、藤吉夏鈴(櫻坂46)、齊藤なぎさ、佐藤二朗、ユースケ・サンタマリア、真矢ミキ、水野美紀、甲本雅裕、寺島進、伊藤淳史、滝藤賢一、松重豊、松下洸平、斉藤暁、小野武彦、北村総一朗
監督:本広克行
脚本:君塚良一
プロデュース:亀山千広
音楽:松本晃彦
主題歌:織田裕二「Love Somebody(CINEMA Version)」(ユニバーサル ミュージック)
配給:東宝
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