『豊臣兄弟!』高橋努が作り上げた愛すべき蜂須賀正勝 “強面”の奥にある愛嬌と哀愁

『豊臣兄弟!』高橋努の愛すべき蜂須賀正勝

 NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』第37回「秀長の国」。予告で気になる姿を見せているのが、高橋努演じる蜂須賀正勝だ。

 第36回では、関白となり、かつてとは別人のように大きな権力を手にした秀吉(池松壮亮)に対して、弟・秀長(仲野太賀)を思うこと、そして初心を忘れないように言葉をかけていた正勝。第37回の予告では「わしの人生を懸けてよかった」と語る姿も映し出されている。史実の正勝が亡くなったのは1586年。いよいよ別れが近づいていることを感じさせる。

 正勝が初登場したのは、第7回「決死の築城作戦」。尾張と美濃の国境の川筋を仕切る川並衆の棟梁で、登場早々、かつてともに川並衆を率いていた前野長康(渋谷謙人)と刀を交える血の気の多い男だった。大柄な体格に鋭い眼光、腹の底から響くような声。いかにも腕っぷしの強い豪傑といった出で立ちだったが、続く墨俣築城では川並衆を率いて小一郎や藤吉郎に協力。やがて豊臣兄弟と長く歩みをともにする仲間の一人となっていった。

 小一郎と藤吉郎が言い争えば、その横には正勝がいる。竹中半兵衛(菅田将暉)が加わってからは、戦の最中にありながらも4人が無邪気にやり取りする場面が何度も描かれた。半兵衛を失い、信長(小栗旬)が倒れ、秀吉と秀長の立場が大きく変わっても、正勝は変わらず兄弟の近くにいた。もちろん、豪快で血気盛んなところは変わらない。だが、今では怖さよりも先に親しみを感じる。少しお調子者で、仲間思いで、どこか不器用。秀吉や秀長に遠慮なく物を言えるのも、2人がまだ何者でもなかった頃を知っているからこそだろう。

 正勝は、荒々しさや泥臭さを持ちながら、ふとした瞬間に愛嬌ものぞかせる人物として描かれてきた。豪快な立ち振る舞いの奥にはどこか哀愁があり、決して武骨なだけでは終わらない。その人間味こそ、高橋が演じる正勝の大きな魅力となっている。

 高橋は強面である。182cmという体格もあり、映画『クローズZERO』シリーズの牧瀬隆史をはじめ、強さや荒々しさを感じさせる役柄がよく似合う。大河ドラマでも『天地人』の加藤清正、『どうする家康』の嶋左近などを演じてきた。ただ、高橋の魅力はそうした迫力だけにあるわけではない。どこか愛嬌のある表情や、ふとした瞬間に見せる柔らかさが加わることで、人物に一気に体温が生まれる。正勝もまた、登場時の荒々しさを残しながら、物語が進むほどに親しみのある人物へと変わっていった。

 近年では、NHK連続テレビ小説『虎に翼』で演じた新聞記者・竹中次郎も印象深い。明律大学女子部に入学した寅子(伊藤沙莉)たちを取材し、当初は皮肉めいた記事を書くなど、一筋縄ではいかない記者として登場した竹中。その後は共亜事件で寅子に忠告し、彼女を襲おうとした男を投げ飛ばす場面もあった。さらに物語後半では、杖をつきながら原爆裁判を傍聴する姿を見せるなど、長い年月をかけて寅子の歩みを見届ける人物となっていった。

 高橋は『虎に翼』で、竹中の40代から70代までを演じた。若い頃の荒っぽさから、年齢を重ねたあとの静かな佇まいまで、長い時間の経過を背負わせる役どころだった。セリフで人物像を説明するのではなく、その場に立っているだけで竹中が過ごしてきた年月を感じさせる。こうした説得力は、高橋がこれまで映画、ドラマ、舞台で積み重ねてきた経験によるものだろう。

 『豊臣兄弟!』の正勝もまた、物語の序盤から長く兄弟と歩んできた人物だ。秀吉と秀長がまだ天下人とはほど遠かった頃に出会い、その後は藤吉郎の与力として戦を重ね、兄弟が立場を上げていく過程を間近で見続けてきた。半兵衛をはじめ、仲間との別れも経験している。そうした時間の積み重ねがあるからこそ、現在の正勝の一言一言には重みがある。

 豊臣兄弟が上へと駆け上がる一方で、彼らの昔を知る人物は少しずついなくなっている。正勝もまた、その時代をともに生きた大切な一人だ。第37回で正勝がどのような姿を見せるのか。豪快さと愛嬌、そしてどこか漂う哀愁。高橋がここまで作り上げてきた蜂須賀正勝の生き様を、最後まで見届けたい。

■放送情報
大河ドラマ『豊臣兄弟!』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/毎週土曜13:05〜再放送
NHK BSにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:仲野太賀、池松壮亮、吉岡里帆、浜辺美波、白石聖、坂井真紀、宮澤エマ、倉沢杏菜
大東駿介、松下洸平、中島歩、要潤、山口馬木也、宮﨑あおい、小栗旬ほか
語り:安藤サクラ
脚本:八津弘幸
制作統括:松川博敬、堀内裕介
演出:渡邊良雄、渡辺哲也、田中正
音楽:木村秀彬
時代考証:黒田基樹、柴裕之
プロデューサー:高橋優香子、舟橋哲男、吉岡和彦(展開・プロモーション)、国友茜(広報)
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.web.nhk/tv/pl/series-tep-P52L88MYXY
公式X(旧Twitter):@nhk_toyotomi
公式Instagram:@nhk_toyotomi

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