『風、薫る』の核心は“セツ”村上穂乃佳にある? りんと直美が選んだ“1ミリの前進”

りんと直美はまずセツに恵風看護婦会で働いてもらおうと考える。でもそれは、かつて彼女たちの前に立ち塞がった、“たったひとりを救っても社会は変わらない”という問題を少しも改善していない。それでもりんと直美は、ほんの1ミリでも前に動くことを選択する。りんは以前から、思ったら即行動する性分で、いま目の前で救いを求める手があれば、迷わず手を差し伸べることを選んできた。今回もまたそうする。
最初のうち、セツは簡単にはりんたちの思いに応えられない。むしろ、担当していた患者が死ぬかもしれない状況を目の当たりにして看護の怖さに怯える。そこでまた、自分には学がないからこんな難しいことはできるわけないと尻込みしてしまうのだ。自信のないセツを鼓舞したのは、りんでも直美でもない。しのぶ(木越明)だった。

「どんな女でも生きてればいろいろある。けどそれをはねっ返さなきゃ。いつまでたっても女の立つ瀬がないじゃない」
看護婦養成学校時代からりんたちと関わってきて、看護婦会発足のときも手伝っていたしのぶが、ここへ来てちょっといいことを言う。しのぶはしのぶで、結婚して子どもができたので、看護の仕事を休んでいた。彼女は彼女なりに、女性が結婚して子どもが生まれると仕事がしづらくなる状況に抗いたいと思っている。しのぶのように裕福な家に生まれ育った人物とセツを同列に考えて、「どんな女でも生きてればいろいろある」とくくってしまうことはいささか気になるが、「いつまでたっても女の立つ瀬がないじゃない」とガツンと言うのは、ドラマにリズムを生んで良かったとも思う。
このドラマ、わりと淡々としているし、りんも直美もあまりはっきりものを言わない。以前は直美がキツイことを言っていたが、大人になってからはわりと慎重になってしまった。そこでしのぶのような、何かと喧嘩腰なキャラがいるとメリハリが出る。
さて。この時代、看護婦という職業が一般に認知されたのは、日清・日露戦争の影響だった。そこで看護婦が活躍したことで、世間にその存在を知らしめることができたのだ。ただ、そうして看護婦が増えるとなかには信用できない看護婦が現れる。でもそれは看護婦を名乗る者のせいではなく、雇用者が倫理に反していたからだということも記録に残っている。看護とは言えない不道徳な行為をさせたり、激安の給料で働かせたり、約束と違うことをしたり。結局、弱者女性をいいように使って私腹を肥やす者が存在するのだ。これではやっぱり社会を変えないことには始まらない、となる。ひとりひとりが自覚を持って、社会の改善に当たらないといけない。そんなことを考えさせられた。

第115回ではもうひとり再登場する。再び、シマケンが現れたのだ。彼とりんの関係と社会の問題は密接な関係があるのかどうか、終盤の謎である。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK




















