『風、薫る』の核心は“セツ”村上穂乃佳にある? りんと直美が選んだ“1ミリの前進”

男性に頼らず毅然と生きるりん(見上愛)と直美(上坂樹里)にさらなる試練が。NHK連続テレビ小説『風、薫る』第23週「歩々清風」(演出:松本仁志)では、恵風看護婦会の活動成果によって、ほかにも派出看護の会が誕生しはじめる。玉石混交で、なかには安価で安易かつ粗悪な看護を行うところもあり、りんたちにも悪い影響を及ぼして……。
そんな状況下、りんと直美は様々な人たちと再会する。世間は広いようで狭い。一人目は寛太(藤原季節)。新たな看護婦会を作って、直美たちの営業妨害になる。それから、内務省衛生局の柳生(中村倫也)。直美とりんは看護婦会の現況を公的に調査してほしいと直談判に行く。

彼らの再登場は一見、ビジュのいい男性キャラがシマケン(佐野晶哉)と吾郎(甲斐翔真)の退場によって不足した分を補填しているかのようにも思える。だが、第23週の最重要再登場人物はほかにいる。男性ではない。
セツ(村上穂乃佳)だ。帝都医大病院時代、遊郭で客に無理心中させられて危篤状態で運ばれてきた、かつての遊女である。源氏名は夕凪で、直美の母・文(内田慈)の源氏名と同じだった。母との接点は故郷が同じであったこと。
直美はセツと触れ合うことで、自分を捨てた母の気持ちに少しだけ歩み寄れた。りんと直美は劣悪な環境下の遊郭で働くセツを救おうと奮闘。結果、ふつうは足抜けなんてほとんどできない遊郭をやめさせることに成功した。シマケンの新聞寄稿によって世相が動いたのだ。ただし、セツひとりを救ったところで大局に影響はない。そのとき味わった現実の厳しさが、何年も経ったいま再びりんと直美を愕然とさせる。
セツは、寛太の経営する親和看護婦会で働いていた。遊郭をやめ、自分の足で外の世界を歩いてみたいと希望を抱いて旅立ったセツだったが、どんな仕事をしても学がないため長続きせず、結局また遊郭で働くしかない状況に追い込まれてしまう。それを救ったのが寛太だったのだ。

寛太は決して道徳的な人間ではない。詐欺師まがいのことをして糊口をしのいでいる。だが遊郭で女性をこき使うほどの不道徳さは持ち合わせていない。りんや直美のように美徳にあふれた経営ではないにしても、遊郭で働くよりはましな環境で女性に看護の仕事を斡旋していたのだ。
「あんたが目の敵にしてるのは、そういう貧しい女たちだ」
自分のしていることを正当化する寛太に対して、りんと直美はまったく反論の余地がない。だが寛太のしていることは、女性を遊郭から救うことにはなっても、看護に対するある種の冒涜になる。専門的な勉強も訓練もされていない、看護とは呼べないものを看護として行えば、看護婦の仕事が世間から誤解されるからだ。



















