『踊る大捜査線3』にはシリーズのテーマ“生きる”が集約 “最強の悪役”日向真奈美の思想

前作『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』でも、リストラされたサラリーマンが犯人だと特定しても人数が多すぎて特定に時間がかかるという場面が描かれたが、こういったバブル崩壊以降の平成不況で日本人の労働環境が流動化したことが犯罪と結びついているという描写が『踊る』シリーズでは繰り返し描かれており、『踊る3』では日向真奈美というカリスマに匿名性の高い平凡な人々が動員される様子が描かれていた。
また、湾岸署が新社舎へ引っ越しすることに象徴されているが、『踊る3』はこれまでの『踊る』と、新しい『踊る』を繋ぐ物語となっている。
シリーズの支柱的存在と言える老刑事の和久平八郎を演じたいかりや長介が2004年に亡くなったため『踊る』でも和久はすでに死去している。そして、和久の甥にあたる和久伸次郎(伊藤淳史)が新人刑事として湾岸署に赴任し、青島の部下となる。
また、スピンオフドラマ『踊る大捜査線 番外編 湾岸署婦警物語 初夏の交通安全スペシャル』(フジテレビ系)で主人公を務めた篠原夏美(内田有紀)も青島の部下として登場する。

何より、係長になったことで青島が上司と部下の間で悩む中間管理職になったことは、『踊る3』の大きな変化だろう。『踊る2』までの青島を取り巻く人間関係はテレビシリーズの延長線上にあるものだったが、7年が経ち、各登場人物の立場は大きく変化した。
テレビドラマや映画は、生身の役者が演じるため、シリーズが進むと役者も登場人物と同じように年を重ねる。特に『踊る』シリーズは、劇中の時代状況が視聴者の現実と同じように進んでいるため、シリーズの進行とともに、青島たちも年齢を重ね、社会的立場が変化していく。
『北の国から』(フジテレビ系)のように、役者の成長にあわせて物語を進めていく長編ドラマシリーズは、時間の流れをうまく取り込むとフィクションとドキュメンタリーの中間にあるような作品となり、視聴者と同じ時間軸を生きているような手触りが生まれるのだが、青島たちが年を重ねて変化しながら生きていく姿を肯定的に描こうとしたのが『踊る3』だったのかもしれない。
そう考えると、脱獄した日向が青島と向かった場所が、旧湾岸署だったことは必然だと言える。
人気のない旧湾岸署の中で、青島と日向が対峙する場面は、終始賑やかで大勢の人間が画面に映っている『踊る』シリーズでは異例の静寂が際立った不穏なシーンとなっていたが、刑務所から解放された日向の目的は、旧湾岸署を爆発させることで自殺し、自らを神格化させることだった。
日向は死ぬことで、第2、第3の日向真奈美を生み出し、社会秩序を崩壊させようと目論む。
登場人物が年を取っていく姿を肯定的に描く『踊る』の世界で、日向は例外的に「死」に囚われた存在だった。だからこそ『踊る』の世界で最強の悪役となったのだが、そんな日向を青島は刑事として命がけで助けようとする。
爆発する旧湾岸署の中から青島が日向を背負って脱出する場面は、『踊る』が描こうとしてきた「生きる」というテーマが集約された名シーンである。
■放送情報
『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』
フジテレビ系『土曜プレミアム』にて、9月5日(土)20:00〜23:10放送
出演:織田裕二、深津絵里、ユースケ・サンタマリア、小栗旬、小泉今日子、柳葉敏郎ほか
監督:本広克行
脚本:君塚良一
製作:亀山千広
プロデューサー:臼井裕詞、安藤親広、村上公一
製作:フジテレビジョン、アイ・エヌ・ピー





















