『VIVANT』堺雅人の一人三役に仰天 乃木・Fとは異なる“リュウ”のねじれた人物像

『VIVANT』(TBS系)第16話では、野崎(阿部寛)のシンシー潜入の真の目的が明かされた。
別班員5名の身柄を売り渡した野崎。警視庁公安部部長の佐野(坂東彌十郎)は、野崎と共謀して諜報機関「シンシー(Xinxi)」への潜入を計画した。佐野が語り始めたのは、驚くべき真相だった。
第16話はカスピ海に面した架空の国ゴルバドと日本で同時進行する。野崎とシンシーの接点は5年前の2018年にさかのぼる。当時、野崎は北京で北朝鮮に対する諜報活動を行っており、野崎の下にいたエージェントが張競士(チョウ・ケイシ、高橋光臣)と劉銘軒(リュウ・ミンシュエン、堺雅人)だった。3人の関係性が野崎のシンシー潜入の発端にあった。
公安エリートだった野崎は、リュウやチョウと連携して北朝鮮高官の行動を把握。あるとき、リュウは特定した高官が北京入りしたことを知る。弾道ミサイルの発射スケジュールの証拠をつかむため、リュウは野崎の制止を振り切って単独潜入を断行した。その後のリュウの消息は北朝鮮から外務省を通じて知らされた。
佐野は野崎と協議の上、工作員3名と引換えにリュウを解放するという北朝鮮の条件を拒んだ。ただし、野崎は予備費を支出して救出作戦を模索する。交渉期限まで5時間、野崎は突入を決断する。「リュウ・ミンシュエンは俺にとってかけがえのない大切な部下だ」と言い、エージェントに頭を下げる野崎。しかし、あと一歩のところで送られてきたのは変わり果てたリュウの写真だった。
リュウの死に落胆する野崎の前に現れたのがハン・リンシン(宮下今日子)。このときすでにシンシーに在籍していたハンは、リュウの死を嘆くふりをしつつ、野崎をシンシーに誘う。各国の諜報機関で日本とのつながりがあれば、リュウが死ぬことはなかったと言うのだ。これが野崎とシンシーの最初の接触となる。
リュウの死のダメージは大きく、野崎をして「嫌になっちまったんだよ。命を削って国に尽くしても、残るのは微々たる退職金とろくでもない天下り先」と言わせるほど。そのリュウは外見が乃木とそっくり。第1シーズン第5話で、野崎が乃木に対して「リュウと似ている」と話す場面があったが、乃木との出会いは野崎にリュウを思い出させただろう。
リュウのセクシュアリティはゲイで、野崎を慕っていた。野崎がその思いに応えることはなかったが、チョウにダブルエージェントが疑われたこともあって、部下であるリュウへの信頼は厚かった。リュウを死なせたことの後悔に個人的な自責の念が込められていたかは不明だが「かわいがっていた後輩」だったことは確かである。
日本に帰国後、野崎は、チョウから公安の地位を利用して日本へのスパイ活動を行っていたことを告白される。チョウはシンシーに所属していた。チョウは野崎のスピーチに感動し、シンシーに加わることを勧める。ここからは想像の領域となる。核融合技術の開発者であるエリシャ・バートフ(マナフ・ダダショフ)が残したデータをめぐって、各国の諜報機関の争奪戦が繰り広げられており、そこにはシンシーと公安も含まれていた。
第16話前半は過去の回想シーンで、後半で作中の現在に飛ぶのだが、死んだと思っていたリュウが生きていた展開は、堺雅人による演じ分けと相まってインパクト絶大だった。現在のリュウは絶体絶命の危機から生還し、新たな生命を得たような怪しい生気が感じられる。リュウの中には自分を見捨てた日本への恨みがあり、同時に野崎が自分を助けようとしたことを知って野崎への執着は強まっている。このねじれた心理が、リュウの外見や言動の変化に反映されていると感じた。
リュウ自身がシンシーの二重スパイであり、日本に対する諜報活動を行っていたのだが、野崎への恋慕がなければリュウが抱く感情はもっと単純だったはずだ。日本生まれの中国人という設定に個人的な感情が重なることで、人物造形に奥行きが生まれた。畳みかける舌鋒の鋭さは乃木とも共通するが、リュウの言動には、はしばしに粘着質なものが感じられる。それはサディスティックな猟奇性をはらむFとも異なる。
堺の一人三役について、今後、乃木とリュウ、Fとリュウの対決はあるだろうか。日曜劇場では、2026年1月期の『リブート』(TBS系)で鈴木亮平による一人二役の格闘シーンが実現しており、乃木とFとリュウが同一の画面に登場すれば、過去になかった密度の濃い映像になると予想される。
『VIVANT』をめぐって視聴者の考察熱も高まっている。リュウの生存を予想する声がある中で、考察班の冴えた予想が的中と言ってよかったのが、第15話での野崎の言葉と東条(濱田岳)の口座に振り込まれた金額の意味を読み解くものだった。「πのような永久に割り切れない世界に身を置いている」と入金額の1億2600万円は、拉致・拘束された黒須(松坂桃李)たち別班員の居場所を示しているという考察があった。
2回目の入金額の1億6千万円とそれぞれ円周率をかけ合わせた数字が緯度と経度の座標を表しており、ちょうどそれがゴルバド中部のシャキ城に当たる。ドラマで示された問いに即応するやり取りは、今作のスリリングな一面だ。
第16話では、高橋光臣演じるチョウのなりきりぶりも印象的だった。日曜劇場の常連である高橋は、前日8月29日には、『24時間テレビ49』(日本テレビ系)中のスペシャルドラマ『幸せはある』につんく♂役で出演しており、翌日に『VIVANT』で日本と中国の二重スパイを演じた。『ノーサイド・ゲーム』(TBS系)ではラグビー経験を生かしてアストロズのキャプテンを演じるなど、虚実の皮膜を全力突破する高橋にアイデンティティ・クライシスの心配はなさそうだ。
■放送情報
日曜劇場『VIVANT』第2シーズン
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、竜星涼、山中崇、Barslkhagva Batbold、Tsaschikher Khatanzorig、富栄ドラム、林原めぐみ(声の出演)、内野謙太、花岡すみれ、本間さえ、二宮和也、井上順、林遣都、内村遥、井上肇、市川猿弥、市川笑三郎、平山祐介、珠城りょう、西山潤、宮下今日子、Tanapak Jongjaiphar、濱田岳、坂東彌十郎、小日向文世、キムラ緑子、松坂桃李
原作・演出・プロデュース:福澤克雄
プロデューサー:飯田和孝
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/VIVANT_tbs/
公式X(旧Twitter):@TBS_VIVANT
公式Instagram:tbs_vivant
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