『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』の異常な映画体験 壊れたバランスだからこその完璧な調和

とにかく恐竜が出てくる。いろんな種類が出るし、数は景気のいいインド映画のダンサーくらい出てくる。そして本当にずっと戦っている。これは恐竜映画だが、同時に80~90年代のコマンドアクション映画でもある。序盤はベトナム戦争映画的なジャングル戦で、そこから言い訳できないくらいの『エイリアン2』(1986年)を経て、『ザ・ロック』(1996年)的な潜入と銃撃戦をやって、さらにリアル系かと思わせておいて、最後の最後でガマンできなかったのか、ジョン・ウー的2丁拳銃までブチ込んできた。80~90年代のアクション映画っ子的には「あまりにもアレやんけ」という気持ちになりつつ、「でも、面白いから真似するのは当然だよね」と、不思議な感情を覚えることだろう。私たちは『エイリアン2』を卒業できない。ゲームの『ディノクライシス』も忘れられない。
異常な映画だが、これを作っている人間はもっと異常だ。監督のルーク・スパークは、本作のプロデューサーも務め、さらに脚本・編集・美術も兼任している。つまり資金調達から現場の特殊効果まで、全部をやっているのだ。ようは「俺が金を集めるし、俺が責任をとるから、俺の好きにやらせろ」という制作体制である。いわゆるインディペンデント映画であり、ある意味で自主映画と言ってもいいかもしれない。だからこそ、ここまで好き勝手にできているのだが……なぜ、ここまで好き勝手にできたのかが分からない。スケール感や映像の質、異常な熱量など、すべてにおいて、いわゆる手弁当の範疇は軽く超えている。異常な努力と技術、執念がないと不可能だ。
もちろん、手放しで絶賛できるわけではない。そもそも「恐竜とアメリカ軍が戦う」という設定にピンと来ない人には、まったくオススメはできない。そして、それにしたってひたすら恐竜と米兵が戦っているから、飽きる人もいるかもしれない。
断言できるが、映画としてのバランスは完全に壊れている。しかし、だからこそ完璧に調和している。これは1人の映画人が、人生を懸けて作り上げた覚悟と決意の塊だ。「恐竜と兵隊が『エイリアン2』みたいに戦い続けるだけの映画が観てぇんだよなぁ」と夢見たことがある全ての人に伝えたい。本作はそれをやっている。狂気に近い心意気を真正面から受け止めてあげてほしい。熱狂するもよし、呆れて笑うもよし、感動するもよし。唯一無二の映画体験がここにある。少なくとも私は傑作だと思う。だって米軍と恐竜が全力で戦うんですよ。
■公開情報
『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』
ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋HUMAXシネマズほかにて公開中
出演:ライアン・クワンテン、トリシア・ヘルファー、ニック・ウェクスラー、ジェレミー・ピヴェンほか
監督・脚本・製作・編集・美術:ルーク・スパーク
原作:イーサン・ペッタス
音楽:フレデリック・ウィードマン
撮影:ウェイド・ミュラー
提供:キングレコード+オンリー・ハーツ+YUTAKA IZUMIHARA
配給:オンリー・ハーツ+キングレコード
配給協力:トリプルアップ
2025年/オーストラリア映画/133分/2.00:1/Dolby Digital 5.1ch/PG12/原題:Primitive War
©SPARKE FILMS PTY LTD ALL RIGHTS RESERVED 2025
公式サイト:https://primitivewar-jp.com/
公式X(旧Twitter):https://x.com/primitivewar_jp























