『風、薫る』佐野晶哉が爆発させたシマケンの恋心 “りん”見上愛との関係が次の段階へ

恋模様が一気に動き出したNHK連続テレビ小説『風、薫る』第99話。小川(甲斐翔真)が直美(上坂樹里)に思いを伝える一方、シマケン(佐野晶哉)は、りん(見上愛)に惹かれながらも、横沢(井上祐貴)に一足先に結婚を申し込まれてしまった。そんな“恋に悩める男たち”が、まさかの田之上屋で鉢合わせする。

小川が店を訪れると、そこにはシマケンの姿があった。片や思い切って結婚を申し込み、片や好きな女性を別の男に奪われかねない状況。それぞれの事情を話し合う2人の姿はどこかおかしくもある。とりわけシマケンは、横沢の背中を押したのが自分なのだから何とも皮肉だ。
先にシマケンが店を出ると、今度はりんが田之上屋へやってくる。小川は土曜日にはいつも直美と会っていること、今回は約束をすっぽかされてしまったことをりんに話す。そんなりんに、小川は「りんさんは自分の恋敵です」と告げる。プロポーズを受けても、直美は小川のもとへ行くのではなく、環(英茉)の母親としてりんの家に残る道を選ぼうとしていたからだ。もちろん、環を思う直美の気持ちは本物だろう。だが、母親であることを理由に、自身の幸せを選ぶことから目を背けているようにも見える。そんな直美にりんは環の母親である責任を必要以上に背負っているのではないかと問いかける。このまま家に残ることは、直美にとって「逃げ」なのではないか、と。直美がりんや環と築いてきた関係は、血のつながりだけでは語れない大切なものだ。それでも、りんが「逃げ」ではないかと踏み込んだのは、直美が自分で望む人生を選んでほしいと思っているからだろう。

「怖いに決まってるでしょ」と素直な気持ちをこぼす直美。幼い頃から自分の居場所を持てずに生きてきた直美にとって、りんや環たちと暮らす家は、ようやく見つけた帰る場所でもある。小川への思いに迷っているわけではなく、むしろ、大切な場所を手に入れたからこそ、それを離れて新しい人生へ踏み出すことが怖いのだ。
もう一つの恋も、大きく動き始める。雨の中、横沢とシマケンが再び顔を合わせる。「また墓参りですか?」と相変わらず遠慮なく切り込む横沢は、自分ならりんを幸せにできると言い切る。シマケンを意識しながらも一歩も引こうとしない。対するシマケンも、「他の誰かといるのも嫌なんです!」と思いを吐露する。これまで自分の恋心には驚くほど鈍感だった男から、ようやく飛び出したまっすぐな言葉である。

この場面で印象的だったのが佐野晶哉の芝居だ。普段はどこか飄々としていて、りんへの気持ちをなかなか言葉にできないシマケン。そんなシマケンをずっと見ていて、もどかしく感じた視聴者も多かっただろう。けれど、この時ばかりは嫉妬も焦りも情けなさも全部さらけ出す。その不器用さがいかにもシマケンらしかったし、佐野もまた、これまで内側にしまい込んできた思いを爆発させる見事な演技だった。
シマケンは、りんの強さだけを見てきたわけではない。初めから何でもできる立派な人ではなかったことも、新潟へ1人で向かったのが環を守るためだったことも知っている。母として、大黒柱として弱さを隠し、“おかめの面”をかぶって笑っていたりん。その面を外してほしいと伝えたのもシマケンだった。きっと横沢とは違う形でりんのことを理解しているという自負もあるのだろう。

そんな2人のやり取りを、りんは聞いていた。シマケンが差し出した花を受け取って、涙を浮かべながらも「待ちます!」と笑顔を見せるりん。今すぐ答えを出すのではなく、それぞれの道を進み、その先でまた向き合えたらいい。遠回りを重ねてきた2人らしい一歩だ。
直美はようやく見つけた居場所から飛び出せるのか。シマケンは小説家としてりんの隣に立てる存在になれるのか。恋をきっかけに、それぞれが人生をどう選ぶのかを問われている。長く足踏みしてきたりんとシマケンの関係も、ようやく次の段階へ進みそうだ。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK





















