『Tシャツが乾くまで』の本当の面白さはここから始まる? 生方美久が描く喪失の先と曖昧さ

生方美久が描く物語は、しばしば“喪失”から始まる。
まず、彼女のデビュー作『踊り場にて』(フジテレビ)の主人公・美園舞子(瀧本美織)は、プロのバレエダンサーを目指して海外で修行を積んでいたものの、夢なかばで挫折。夢を“喪失”した舞子が、教師として新たな一歩を踏み出すまでの過程が描かれた。社会現象となった『silent』(フジテレビ系)も、『いちばんすきな花』(フジテレビ系)も、『海のはじまり』(フジテレビ系)も、物語の入り口には必ず何かしらの“喪失”があった。
恋人との別れ、友情のおわり、大切な人の死。ラブストーリーは、ヒロインとそのお相手が結ばれるまでの過程――言い換えるならば、何かを“得る”までを描くものだという固定観念を持っていたわたしにとって、生方作品はある意味で逆算的にも映った。彼女の作品は、誰と誰が結ばれるとかそんなことではなく、“喪失”を起点に生まれた空白を抱えながら、その先で何を見つけていくのかを描いていくものが多い。
現在放送中のドラマ『Tシャツが乾くまで』(TBS系)も、“喪失”から始まる物語だ。とある事故に巻き込まれて、妻を亡くした園田樹生(中島歩)と、その事故がきっかけとなり夫が行方不明になった瀬尾咲子(蒼井優)。ひとりは“死”という形で、もうひとりは“不在”という形で、愛する人を失った。それだけでもかなりしんどいのに、咲子と樹生のパートナーが同じバスに乗車していた(咲子の夫は発車前に降りていたようだが)ことが発覚したせいで、「二人は不倫関係にあったのではないか?」という疑惑まで浮上しているのがエグい。
時間経過により喪失の重さを入れ替えるマジック
ただ、それでも日常は進んでいく。8月7日放送の第5話では、事故から1年後へと時間軸が移った。すると、死と不在という二つの“喪失”に対する印象が、少しずつ逆転していくのが興味深い。事故当初、より残酷な喪失を背負っているのは、妻の死を突きつけられた樹生のように思えた。
しかし、死という喪失には、否応なしに前に進まなければならない瞬間が訪れる。一方、不在という喪失には、明確な終わりがない。咲子の夫は、どこかで生きているかもしれない。明日、突然帰ってくるかもしれない。そんな“かもしれない”が溢れているせいで、咲子は前に進むことができないのだ。
死よりも不在の方が軽いように思えて、時間が経つほどにその関係が反転していく。二人が抱える“喪失”そのものは、最初から何ひとつ変わっていない。変わったのは、そこに流れた時間と、それを見つめているわたしたちの目だけだ。これまで、さまざまな喪失を描いてきた生方だからこそ、痛みが時間とともに変化していくことを知っているのだろう。死と不在の重荷をくるりと反転させる鮮やかさは、まるでちょっとしたマジックを見ているようだった。






















