『Tシャツが乾くまで』『銀河の一票』『凪のお暇』 名作ドラマにコインランドリーあり?

名作ドラマにコインランドリーあり?

 蒼井優が18年ぶりに地上波の連続ドラマ主演を務めるTBS金曜ドラマ『Tシャツが乾くまで』が、今期最大の話題作になっている。脚本は『silent』(フジテレビ系)、『いちばんすきな花』(フジテレビ系)、『海のはじまり』(フジテレビ系)の生方美久、チーフ演出は『カルテット』(TBS系)や映画『花束みたいな恋をした』の土井裕泰。主題歌はスピッツの書き下ろし「見知らぬ糸」だ。

 この作品には、物語が動くたびに立ち返る場所がある。コインランドリーである。

同じ店で、秘密も再出発も起きる

 自宅の洗濯機の乾燥機能が不調になった咲子(蒼井優)は、夫・充(松山ケンイチ)に教わった近所のコインランドリーへ向かい、そこで園田樹生(中島歩)と知り合う。やがてバス事故で充は行方不明となり、樹生の妻・あずさ(夏帆)は亡くなる。残された二人が支え合うと決めたのも、同じ店だった。そして充とあずさが毎月第3金曜日に会っていた場所も、そこである。

 充とあずさの秘密が育った場所が、そのまま残された二人の出会いの場になっている。しかもそこは、洗濯物を乾かすためだけに立ち寄る何でもない場所だ。

 第1話で咲子は、樹生の前で夫への愛情を隠さず「好きな人フィルターかかっちゃってるんで」と笑う。後日、自宅の乾燥機が以前は自然に直っていたと何気なく話したところ、夫がフィルターを掃除していたのではないかと指摘される。目詰まりする乾燥機のフィルターと、愛する人を美化する「好きな人フィルター」。生方は放送前のコメントで、人間関係と家電にはフィルターが多いと書いていた。宣言通りの作りである。

 考えてみれば、コインランドリーを重要な舞台にしてきたドラマは驚くほど多い。直近でも『銀河の一票』(カンテレ・フジテレビ系)や『冬のなんかさ、春のなんかね』(日本テレビ系)があり、遡れば『みなと商事コインランドリー』(テレ東系)、『おかえりモネ』(NHK総合)、『凪のお暇』(TBS系)がある。洗濯機が並ぶだけの無人の空間が、なぜこれほど人間ドラマを呼び寄せるのか。

機械がシーンの長さを決めてくれる

 ここは「待つ」ことを強いられる、現代では数少ない場所だ。洗濯乾燥が終わるまで、人はそこにいるしかない。手持ち無沙汰の時間が生まれ、隣に座った他人と言葉を交わす必然が生じる。

 同時に、終わりの時刻があらかじめ決まっている。書き手にとっての利点は、おそらくここにある。『おかえりモネ』で菅波(坂口健太郎)が百音(清原果耶)にプロポーズしたのは、下宿先である元銭湯のシェアハウスに併設されたコインランドリーだった。理屈っぽくなる自分の言葉に菅波自身が苛立ち、言い直しを重ねている最中に、間の悪いタイミングで洗濯終了のブザーが鳴る。少し前の抱擁の場面でも、菅波は「あと1分」とつぶやいて百音を抱きしめ続け、ブザーが鳴ってようやく二人は離れた。

 感情の高まりを、人物の意志ではなく機械が中断する。恥ずかしさも余韻も、機械のせいにできる。家の中でも喫茶店でも成立しない演出だ。

必要から来る人と、選んで来る人

 コインランドリーはかつて、家に洗濯機を持てない人が通う場所だった。いまもその性格は残っている。

 『凪のお暇』の大島凪(黒木華)は、会社を辞め恋人と別れ、布団ひとつ抱えて郊外の古いアパートへ越してくる。洗濯機を持たない彼女にとって、近所のコインランドリーは生活のインフラそのものだ。やがて凪は、ハローワークで知り合った坂本龍子(市川実日子)とともに、後継者がいないまま廃業するというその店の事業承継に手を挙げる。しかし実家の事情で出資金が用意できなくなり、計画は流れた。最終回、凪はコインランドリーをチェーン展開する会社への就職を決める。修業して金を貯め、いつか坂本と自分たちの店を持つためだ。

 ここでのランドリーは恋愛の背景ではない。持たざる者の生活を支える設備であり、そのまま職業選択の対象になる。『おかえりモネ』でも、震災で母が行方不明のまま父を抱え込んだりょーちん(永瀬廉)が百音にすがろうとする場面は、同じ店で描かれていた。

 ただ、いまここへ来るのは持たざる人だけではない。咲子の家には洗濯機があり、壊れているのは乾燥機能だけだ。『冬のなんかさ、春のなんかね』の土田文菜(杉咲花)に至っては、なんとなく寂しいその空間が好きだからという理由で通っている。必要から来る人と、選んで来る人が同じ部屋にいる。ドラマが手放さないのは、この混在である。

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