『天幕のジャードゥーガル』Abel監督×三角P対談 サイエンスSARUが目指した“新しい表現”

『天幕のジャードゥーガル』監督×P対談

シタラの物語を貫く“自由”というテーマ

――『天幕のジャードゥーガル』は、シタラが仕えていた女性主人・ファーティマをモンゴル帝国の侵攻によって失い、復讐を誓うところから始まる物語です。アニメ化にあたり、どのようなことを視聴者に伝えたいのでしょうか?

Abel:これが答えになっているか分かりませんが、私たちは原作の漫画に敬意を払っていて、できるだけ正確に再現したいと思っています。原作漫画では、モンゴルの歴史の中で実際に起きた出来事や、実際に存在した人物が描かれていますから。けれども同時にシタラの復讐劇ということも大きなテーマになっています。そして、その根底には「自由」があると考えています。第1話の冒頭では、奴隷のシタラが逃げようとするシーンを原作から追加しました。第2話以降になると、戦争によってすべてを失ってしまうというドラマチックな方向に話が進んでいくので、第1話の段階で「自由」というテーマをしっかり示しておきたかったんです。それがシタラという人物の物語の出発点になるからです。

――『天幕のジャードゥーガル』は背景美術が非常に印象的です。レミ・シャイエ監督の『カラミティ』や『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』にも通じる雰囲気を感じましたが、作品から影響を受けた部分はあるのでしょうか?

Abel:レミ・シャイエ監督の作品は好きですし、同じスタジオで働いていたこともありますが、背景美術で『カラミティ』などを参考にしたつもりはありません。美術監督の樺澤侑里さんが方向性を提案してくれて、山田総監督や私がさまざまな資料を参照しながら決めていきました。ペルシャの細密画やモンゴルの古い絵画などから受けた影響も大きかったと思います。あとは、グラフィックとしてより洗練されたビジュアルを目指したことも、今回の絵柄につながっていると思います。

――山田総監督のお名前が挙がりましたが、『天幕のジャードゥーガル』では具体的にどのような役割を担われたのでしょうか? 山田総監督がモンゴルをロケハンした際の映像も公開されていますが、現地で得た経験や発見をAbel監督と共有するようなこともあったのでしょうか?

三角:山田総監督にはシナリオ作成の段階から参加していただきました。絵コンテもチェックしてもらいながら、音楽やキャスティングなど、主にプリプロダクションの工程で協力していただきました。Abel監督には、絵コンテ以降の制作現場における絵作りをメインで担当してもらっています。ロケハンについては、山田総監督だけでなくAbel監督にも参加してもらいました。現地で見たり感じたりしたことを帰国後に共有しながら話し合いを重ね、美術やビジュアルの方向性を固めていきました。

――Abel監督もモンゴルでロケハンをされたそうですね。実際に現地を訪れてみて、印象はいかがでしたか? 事前に抱いていたイメージとの違いなどもあれば教えてください。

Abel:モンゴルは本当に素晴らしかったです。行く前に少し調べていたので、まったくの予想外だったというわけではなかったです。ただ、実際に現地を訪れ、食べ物の香りを感じたり、泊まることで分かるゲルの居心地だったり、山や広大な草原に囲まれた風景をより強く実感することができました。空が本当に広く感じられるんです。やはり、その土地の魅力は実際に足を運んでみないと分からない部分があると思います。付いてくれた現地のガイドのひとりが音楽家でもあり、実際に馬頭琴を演奏してくれたんです。本当に忘れられない経験になりました。

「史実の最後までアニメーションとして描きたい」

(左から)Abel Gongora、三角理恵

――今回のTVアニメで描かれる以降のエピソードも含め、『天幕のジャードゥーガル』の物語はさらに続いていきます。史実を踏まえると、シタラをはじめ登場人物たちには非常に過酷な運命が待ち受けています。その先の物語についても、Abel監督はご自身でアニメ化していきたいと思っていますか?

Abel:もちろんです。ご縁があれば、ぜひ最後までアニメーションとして描きたいと思っています。それが実現できたらとても素晴らしいことです。登場人物たちの運命が悲劇的なものになっていくのだとしても、だからこそ自分自身の手で最後までアニメーションとして表現してみたいと思います。

――ありがとうございます。せっかくなので、お二人が影響を受けたアニメーション作品があれば伺っておきたいです。

三角:影響を受けた作品はたくさんあるのですが、好きな作品のひとつを挙げるなら、『もののけ姫』がすごく好きです。映画館で観た初めてのスタジオジブリ作品ということもありますが、鑑賞後は2、3日ほど頭がぼんやりしてしまうくらい心を奪われました。今回、偶然にも『もののけ姫』に原画で参加していた吉田健一さんが『天幕のジャードゥーガル』のキャラクターデザインを手がけているので、自分としてもとても楽しく制作に取り組めています。いつか自分も、あのときのような気持ちを誰かに与えられる作品を作ってみたいです。

Abel:自分も『もののけ姫』は大好きですが、『母をたずねて三千里』も今でもよく思い出す作品です。本当に大好きな作品です。

――『母をたずねて三千里』も高畑勲監督のていねいな演出の中で主人公のマルコが過酷な運命を自分自身で乗り越えていく冒険ストーリーに感動できる作品でした。Abel監督が『天幕のジャードゥーガル』に惹かれたのも分かりますし、『天幕のジャードゥーガル』で目指していることへの期待も膨らみます。

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■放送情報
TVアニメ『天幕のジャードゥーガル』
テレビ朝日系全国24局ネット“IMAnimation”枠にて、毎週土曜23:30~放送
BS朝日にて、毎週土曜25:00〜
AT-Xにて、毎週日曜22:30~放送
CSテレ朝チャンネル1にて、毎週日曜22:00〜放送
アニマックスにて、毎週土曜21:00~放送
キャスト:関根明良(シタラ役)、小清水亜美(ドレゲネ役)、桑島法子(ファーティマ役)、齋藤潤(ムハンマド役)、下野紘(オゴタイ役)、鈴木崚汰(トルイ役)、入野自由(シラ役)、浪川大輔(チャガタイ役)、野島健児(ジュチ役)、久野美咲(ソルコクタニ役)、朝井彩加(モゲ役)、新谷真弓(キルギスタニ役)、石田彰(ダイル役)、水瀬いのり(クラン役)、千葉翔也(クルトガン役)
原作:トマトスープ『天幕のジャードゥーガル』(秋田書店『Souffle』連載)
総監督:山田尚子
監督:Abel Gongora
キャラクターデザイン・作画チーフ:吉田健一
シリーズ構成:加藤還一
音楽:日野浩志郎
アニメーション制作:サイエンス SARU
OP主題歌:SEKAI NO OWARI「Stella」
ED主題歌:女王蜂「星」
©トマトスープ(秋田書店)/天幕のジャードゥーガル製作委員会
公式サイト:https://anime-jaadugar.com/
公式X(旧Twitter)国内:https://x.com/anime_jaadugar
公式X(旧Twitter)海外:https://x.com/Jaadugar_global

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