小池栄子が『さよならノワール』で得た気づき 「もっと優しくなれたんじゃないか」

小池栄子が『さよならノワール』で得た気づき

「1が急に10になるのではなく、1が3になるような作品」

――北香那さん演じる白石絵梨子は、心理学の知識はあるけれど、現場でのコミュニケーションにはまだ不器用さもある人物です。夏海と白石のバディ感は、撮影を重ねる中でどのように作られていったのでしょうか?

小池:香那ちゃんはすごく難しかったと思います。絵梨子は頭が良くて、知識もある。でも、人との実践の場ではうまくいかないこともある。彼女自身にも生きづらさがあって、そういう人たちが支援室に集まっているところが、この作品の面白さでもあると思います。バディとしては、これから少しずつ変わっていきます。お互いにいい作用を与え合うようになっていくんですけど、それも急速にわかりやすく仲良くなるわけではないんです。本当に、人ってちょっとずつしか変われない。監督がそういうことを丁寧に描いていて、1が急に10になるのではなく、1が3になるような作品なんです。そこが面白いと思いました。

――演じる側としては、変化をわかりやすく見せたくなる部分もありますか?

小池:あります。お芝居をしていると、どうしてもわかりやすくしたくなっちゃうんです。1カ月後には肩を組んでいるぐらいのバディになっているのかなと思ったら、監督が描きたいのはそういうことではない。だからすごく難しいです。悩んで監督に相談すると、「わかりやすくするのは簡単だから、今回は小池さんにこの難しいところに苦しんで挑戦してほしい」と言われました。

――犯罪被害者支援について、撮影前に調べたこともあったと思いますが、演じていく中で役へのアプローチが変わった部分はありましたか?

小池:情報として調べることはもちろんしました。ただ、演じていく中でわかったことも多かったです。例えば、初めて会う人を支援するのと、昔少し知り合いだった人を支援するのでは全然違うんですよ。知っている相手だと、いい面も悪い面も知っているからこそ、「この子はこういう子だし、こう思うはずだ」と、いつも以上に感情的に動いてしまう。でも、それが違っている場合もある。関係性が生まれることで、支援に一番大切なフラットさがなくなってしまうんです。

――距離が近いからこそ、見えなくなるものもある。

小池:そうなんです。初めて会う人だと、やっぱり慎重になるじゃないですか。その人のことがまだわからないから、「何を喜び、何を嫌がるのか」というところから探っていく。でも、知っている相手だと、相手への思い入れが強くなる分、どうしても感情が入ってしまう。支援員という立場である以上、そこにフラットでいる難しさがあるんだなと思いました。複数のケースを抱える中で、限られた時間をどう使うのかという判断も必要になる。本当に難しい仕事だと感じました。

――本作では、深く傷ついた人にどう寄り添うのかも大きなテーマになっています。小池さんご自身は、人の痛みや弱さと向き合うとき、どんなことを大切にされていますか?

小池:それは今、すごく努力しているところです。あくまで、その人の世界線の中でつらいということを想像して話すようにしたいなと思っています。傷ついている人に対して、「世の中にはもっと傷ついている人がたくさんいる」と言ってしまうことって、感情的になるとあると思うんです。特に身内には言ってしまいがちですよね。でも、この作品をやってから、そういう発言をしそうになった時に、一度立ち止まれるようになりました。

夫に言われた「自分のペースで人が生きられると思うな」を実感

――寄り添い方に対する考え方が変わったんですね。

小池:自分だったらこうする、という考え方ではなくなりました。「できない」と言っている人に対して、「あなたならできるよ」と寄り添うのではなく、「できなくてもいいんじゃない。じゃあ、できることを一緒に探そうか」という方向に目線が変わったというか。私は性格的に、否定しているような言葉を言いがちだったんです。昔、夫に「自分のペースと同じペースで人が生きられると思うなよ」と怒られたことがあって(笑)。そのときはさっぱり意味がわからなかったんです。でも今なら、そのことがわかる気がします。自分ができるテンポで、どうして人もできないのかと詰めてしまっていたんです。

――この作品に出会ったことで、ご自身の中にも気づきがあった。

小池:自分をその人に置き換えて物事を見るということを、あまりしてこなかったのだと思います。あくまで、周りにいる自分から見たその人の姿で接していた。でも、「私が今この人だったら、これを言われたときにどう感じるだろう」と想像する力が欠けていたんだなと。この作品に取り組む中で、そう感じる瞬間がたくさんありました。自分の言葉で、逆に相手を追い詰めてしまっていたのかもしれない、と考えることもありました。もちろん、何が正しい寄り添いなのかは人によって違うので、わからないです。ただ、もっと優しくなれたんじゃないかなと思うことはあります。

■放送情報
『さよならノワール』
フジテレビ系にて、毎週火曜21:00〜21:54放送中
出演:小池栄子、北香那、岡山天音、荒川良々、味方良介、濱尾ノリタカ、利重剛、眞島秀和、岡部たかし、浅野和之、戸田恵子、渡部篤郎 他
脚本:井上由美子
演出:河毛俊作、清矢明子、柳沢凌介
音楽:菊地成孔
主題歌:chilldspot「ドラマ」(RECA Records)
衣装:伊賀大介
心理監修:石橋昭良(臨床心理士/非行臨床研究所)
警察監修:石坂隆昌(ユヌ・ファクトリー)
プロデュース:狩野雄太(スタジオ戦略本部 第1スタジオ ドラマ・映画制作センター)
制作プロデューサー:清家優輝、岸川正史(ファインエンターテイメント)
制作協力:ファインエンターテイメント
制作著作:フジテレビジョン
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/sayonaranoir-cx/
公式X(旧Twitter):https://x.com/sayonaranoir_cx

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