『スピナーベイト』加藤清史郎×平瀬遼太郎対談【後編】 オリジナルの最終回を語り合う

親友の内に誘われるがままに、恐喝まがいの自警団「スピナーベイト」に身を置いた主人公・三井。ドラマ『スピナーベイト』では、三井(加藤清史郎)と内(萩原護)が真正面から対峙する、そんな二人の行く末をドラマ版のオリジナルストーリーとして描いた最終回へとたどり着く。平瀬遼太郎監督はそこにどんな思いを込めたのか。
『スピナーベイト』加藤清史郎×平瀬遼太郎対談【前編】 主人公像を探り続けた日々を回顧
『シナントロープ』で第44回向田邦子賞を受賞した此元和津也は、いま最も注目されているクリエイターのひとりと言っていいだろう。この…リアルサウンド映画部では、最終話に向けて盛り上がりを見せた『スピナーベイト』を3週連続で特集。第2弾となる対談前編では、主演の加藤清史郎と平瀬遼太郎監督に、ふたりを惹きつけた此元和津也作品の魅力や、一言では定義できない三井の人物像について語ってもらった。
最終回放送直後にお届けするインタビュー後編では、三井の転機となった第9話の波止場のシーンから結末まで、物語の終盤をとことん深掘り。「つまんないヤツだと思った」と語っていた加藤清史郎が、全11話を演じきった先で感じた三井へのささやかな“報い”とは――。
「お前が死ねばよかったんだ!」に込めた三井の感情

――全11話のなかで、特に印象的なシーンを教えてください。
平瀬遼太郎(以下、平瀬):全シーン愛おしいですからね、たくさんあります。パッと思いつくのは、第9話の波止場のシーン。実はこの作品はとても雨が多くて。
加藤清史郎(以下、加藤):自称・晴れ男の人たちもほんとうは雨男なんじゃないかと思うくらい、ずっと雨でしたね。特に(駿河)太郎さんが来ると、雨風が強くなるんですよ(笑)。
平瀬:吉見(駿河太郎)と三井が対峙したあと、高橋(吉澤要人)と三井が二人で話すシーンになるんですが、そのときも大雨でした(笑)。ものすごい雨のなかで撮影したんですけど、それが三井の敗北……とまでは言わないけれど、なにかに敗れてしまったような喪失感ややるせなさを映し出してくれた気がして。天候には悩まされましたが、結果的にはそれも含めて、恵まれた作品だったのかなと思います。

――加藤さんから見て、波止場のシーンはどんな場面だったのでしょうか。
加藤:たぶん、三井が初めて感情だけで喋るシーンなんですよね。
平瀬:そうですね。
加藤: 三井は自分の気持ちを素直に出さず、デフォルメしたり、別のものに転嫁したりするんですよ。自分をさらけ出すのがとにかく恥ずかしくて、その寸前までいくと「明日考えよう」と逃げる。その三井がいま感じているすべてを高橋にぶつけるとき、「お前が死ねばよかったんだ!」という言葉が出てくるのが、すごく彼らしいと思いました。ただ、それまでの三井にはあまりになかった要素なので、あのセリフをどうするかは監督とも話しましたね。
平瀬:本当にこの言い回しでいいんだろうか、ということをね。

加藤:「この人ならこうする」がない三井は“前”のことがなければ、絶対に“いま”がない人なんです。第2話がなければ第3話の三井はいないし、いきなり第5話の彼にはならない。それまでの三井は、起きたことの結果から学ぶことでしか変われなかったけど、あの波止場では初めて、置かれた状況や誰かへの思いによって、変わることができた。高橋に対して、というか、誰かにあの言葉をぶつけていなかったら、最後に内と会えていなかったと思います。
平瀬:たしかに、リハーサルではやや抑えめにしましたが、あのラストにつなげるには、もう少しボルテージを上げたほうがいいんじゃないかと相談しましたね。
加藤: 何時間話していたんだろうっていうくらい、日々話してましたよね。決して余裕のあるスケジュールではなかったんですけど、あそこだけは妥協しちゃダメだと思って。皆さんの顔色を伺わずに、たとえ時間が押してもいいから、絶対に納得するまで監督と話すぞと決めていました。もしかしたらこれを一度でやれる人もいるかもしれないけど……わからない。僕はそこまでやらないと、三井はできない子でした(笑)。



















