『風、薫る』“文”内田慈と直美の関係は最初から描かれていた? 巧みに張られた伏線を考察

物語は母と娘にフォーカスされていく。NHK連続テレビ小説『風、薫る』第16週「新風吹く」(演出:内田貴史)はりん(見上愛)が新潟へ、東京に残った直美(上坂樹里)は瑞穂屋の店員・柳川文(内田慈)と触れ合っていく。週末(金曜日・第80回)ではまさかすぎる展開に驚いた。このような展開を描く作家のガッツを感じさせる一週間だった。
りんと直美が離れ離れになると、ドラマの序盤のように主人公ふたりのことを15分の間に描写しないとならなくなるため、再び慌ただしい展開になるのではないかと不安が頭をもたげる。だが、そこは、「母と娘」というモチーフを重ねることで、完全に切り離さないように工夫が施される。
娘・環(英茉)と離れたりん。舎監として働いている女学校の生徒・長見久(近藤華)と彼女の母親の長見サワ(磯山さやか)。そして、もしかして文が直美の母? と思わせる流れになっている。

まず、りん。家族と離れ、誰も知り合いのいない新潟で女学校の舎監として働き始める。栃木の田舎で生まれ育ったりんだから、狭い共同体の人間関係はわかっていたものの、噂がすぐ広まったり、地主の家が力を持っていたり、誰もが保守的な場所ではみ出す者はとかく生きづらい、という状況の洗礼にたちまち晒される。そんなりんの癒やしは環からの手紙だ。
あるとき、りんは生徒の久と母・サワの確執を目の当たりにする。サワがよかれと思ってやってきたことに久は反発、母のようになりたくないと、サワを傷つける。年代的にも経験的にもりんはサワに親近感を覚えたようだ。サワも嫁ぎ先で酒好きの夫に苦労していた。夫との信頼関係がない分、娘に愛を注ぐ、いわば依存的な感情がおそらくりんにもあるだろう。久とサワの関係がこのドラマでどんな役割を果たすのか。環はいまのところ実に従順でおとなしいが、いつか久 サワのように爆発することがあるかもしれない。そんな布石でないことを祈りたい。
一方、東京。直美はたまたま瑞穂屋に立ち寄ったとき、文が体調をくずし、なりゆきから看病をはじめる。借金をしていてお金がないので病院にはいきたくないという文を、自宅で看護する献身的な直美。長屋のトヨ(松金よね子)が同じくお金の問題で病院に行けないまま亡くなったので、気になってしまうのだろう。

文と直美はこれまで接点がなかったが、話してみるとなんとなくウマが合う。少し斜に構えた態度がどこか似ているのだ。ある日、直美がいつものように看病に行くと、文の枕元に置かれた布(髪飾りらしい)と直美のお守りの柄が同じで……。
「想像の翼を広げる」というのは『花子とアン』でよく使用された言葉。直美と文が関係あったように描くとは想像の翼を大きく広げたものだ。「事実は小説より奇なり」の反対バージョン。まったく想像とは自由なものである。急に思いつきで書いているわけではないのは、夕凪(村上穂乃佳)のエピソード(第11週、第51回)を見返すとわかる。そこでは文の表情が印象的に映っている。



















